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8話 兄妹の絆
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目を覚ますとまず目に入ったのは心配そうにこちらを見ている美香姉さんだった。
「正真、起きた?」
「僕は一体・・・。」
「魔法を使ってすぐに倒れたのよ・・・本当に心配したんだから・・・。」
「そうなんだ・・・。」
そう答えながら僕は起き上がる。
「どれくらい眠っていたのかな?」
「1~2時間ほどよ・・・。」
「そっか・・・。そういえば彼の奴隷紋はどうなったの?」
「綺麗に消えたわ。さっき美沙が回復魔法を施したからもう命の危険はないわ。」
「そっか・・・。」
「ねぇ、正真。」
声を掛けられて美香姉さんの方を向くと満面の笑顔だった。その顔を見た瞬間僕は血の気が引く。
美香姉さんが満面の笑みの時はものすごく怒っている時だからだ。
「私が言いたいことは分かるかしら?」
「でも、何もしなかったら彼を助けることが・・・。」
「確かに彼を助けることは出来たわ。でも、それによって貴方の秘密がバレてしまう危険も出てきてしまった。貴方は一時の感情に流されてこの国をそして私たち兄妹を危険に晒した。」
「・・・。」
「貴方の行いは確かに善行よ。誰もがあなたを称賛するでしょう。でも、善行に善行が返されるとは限らないわ。相手を見極めてそれを行わないと貴方はいつか痛い目に遭う。」
「・・・。」
「今回のことは正悟兄さんに報告します。しばらくあなたはこの部屋から出ることを禁じます。」
そう言って美香姉さんは部屋を出て行った。
翌日、僕は自分の部屋に籠っていた。部屋の外に出ることが出来ずベッドに寝転がる。
あの後、僕は一睡もできなかった。
「善行に善行が返されるとは限らない・・・か。」
美香姉さんの言葉を口にする。確かにその通りだ。
彼の人となりを知らない間に自分の秘密を暴露してしまったのだ。
「いや、違うな・・・。」
この秘密は僕だけの秘密ではなくこの王国の秘密でもあるんだ。この事がバレてしまえばこの国は戦火に巻き込まれてしまう。
「間違っていたのかな・・・。」
僕は自分の手の平を見た。
あの時、この手に破魔魔法を纏わせたとき少し・・・ほんの少しだがワクワクしていなかったか?
彼を助けるというのは建前で僕は自分の力を試したかっただけだったのでは?
「・・・最低だな。」
自分がこんなに身勝手な性格だったなんて・・・。
「正真兄さん、朝食だよ?」
そう言って入ってきたのは美玖だった。その手に引いているのは朝食が乗ったカートだった。
「美玖か・・・。」
「どうしたの、兄さん?顔色悪いけど・・・。」
「ああ・・・何でもないよ。」
「そう・・・。」
そう言って美玖はカートをテーブルまで持ってくる。
「昨日のことは聞いたよ。」
「そうか・・・。美香姉さんとても怒っていたよね?」
「う~ん・・・。どちらかというと落ち込んでいたかな?美香姉さんは正真兄さんが好きだから・・・。」
「・・・。」
「今回、兄さんがやったことは確かに軽率な行動だったね。」
「・・・そうだな。」
「でも、その軽率な行動のお陰で助かった命もあるのは事実。それを責めるのは家族としてはどうなのか?って美沙姉さんが言っていたわ。」
「美沙姉さんが・・・。」
「まあ、私も同意見よ。もし、兄さんの魔法のことがバレてこの国が侵略されそうになったら兄妹全員で逃げればいいんだし。」
「は?」
美玖がとんでもないことを言った。
「まあ、この国にはお世話になったけどその所為で兄さんが辛い思いをするならこんな国捨ててどこか安全な場所で兄妹みんなで暮らせばいいのよ。」
「でも、皆には使命が・・・。」
「そんなものより家族の方が大事よ。家族を犠牲にするくらいなら世界なんてどうなってもいい。」
「駄目だ・・・。この世界の人は見捨てることは出来ない。」
「なら、兄さんが頑張ってよ。」
美玖は僕を見つめる。その目は真剣だった。
「兄さんが私たちの手綱を握ってよ。私は兄さんに従う。」
「美玖・・・。」
「覚えておいて・・・。兄さんには力がある。勇者との絆という力が・・・。」
そう言って美玖は身を翻して扉の方に歩いて行く。
「ご飯食べたら少し寝なよ?もし、また倒れたりしたら美香姉さんが心配するから。」
「ああ・・・。」
そして、扉が閉まる。
すると、僕のお腹が鳴る。
「とりあえず、ご飯を食べるか・・・。」
朝食後、僕は眠った。今度はよく眠れた。
「正真、起きた?」
「僕は一体・・・。」
「魔法を使ってすぐに倒れたのよ・・・本当に心配したんだから・・・。」
「そうなんだ・・・。」
そう答えながら僕は起き上がる。
「どれくらい眠っていたのかな?」
「1~2時間ほどよ・・・。」
「そっか・・・。そういえば彼の奴隷紋はどうなったの?」
「綺麗に消えたわ。さっき美沙が回復魔法を施したからもう命の危険はないわ。」
「そっか・・・。」
「ねぇ、正真。」
声を掛けられて美香姉さんの方を向くと満面の笑顔だった。その顔を見た瞬間僕は血の気が引く。
美香姉さんが満面の笑みの時はものすごく怒っている時だからだ。
「私が言いたいことは分かるかしら?」
「でも、何もしなかったら彼を助けることが・・・。」
「確かに彼を助けることは出来たわ。でも、それによって貴方の秘密がバレてしまう危険も出てきてしまった。貴方は一時の感情に流されてこの国をそして私たち兄妹を危険に晒した。」
「・・・。」
「貴方の行いは確かに善行よ。誰もがあなたを称賛するでしょう。でも、善行に善行が返されるとは限らないわ。相手を見極めてそれを行わないと貴方はいつか痛い目に遭う。」
「・・・。」
「今回のことは正悟兄さんに報告します。しばらくあなたはこの部屋から出ることを禁じます。」
そう言って美香姉さんは部屋を出て行った。
翌日、僕は自分の部屋に籠っていた。部屋の外に出ることが出来ずベッドに寝転がる。
あの後、僕は一睡もできなかった。
「善行に善行が返されるとは限らない・・・か。」
美香姉さんの言葉を口にする。確かにその通りだ。
彼の人となりを知らない間に自分の秘密を暴露してしまったのだ。
「いや、違うな・・・。」
この秘密は僕だけの秘密ではなくこの王国の秘密でもあるんだ。この事がバレてしまえばこの国は戦火に巻き込まれてしまう。
「間違っていたのかな・・・。」
僕は自分の手の平を見た。
あの時、この手に破魔魔法を纏わせたとき少し・・・ほんの少しだがワクワクしていなかったか?
彼を助けるというのは建前で僕は自分の力を試したかっただけだったのでは?
「・・・最低だな。」
自分がこんなに身勝手な性格だったなんて・・・。
「正真兄さん、朝食だよ?」
そう言って入ってきたのは美玖だった。その手に引いているのは朝食が乗ったカートだった。
「美玖か・・・。」
「どうしたの、兄さん?顔色悪いけど・・・。」
「ああ・・・何でもないよ。」
「そう・・・。」
そう言って美玖はカートをテーブルまで持ってくる。
「昨日のことは聞いたよ。」
「そうか・・・。美香姉さんとても怒っていたよね?」
「う~ん・・・。どちらかというと落ち込んでいたかな?美香姉さんは正真兄さんが好きだから・・・。」
「・・・。」
「今回、兄さんがやったことは確かに軽率な行動だったね。」
「・・・そうだな。」
「でも、その軽率な行動のお陰で助かった命もあるのは事実。それを責めるのは家族としてはどうなのか?って美沙姉さんが言っていたわ。」
「美沙姉さんが・・・。」
「まあ、私も同意見よ。もし、兄さんの魔法のことがバレてこの国が侵略されそうになったら兄妹全員で逃げればいいんだし。」
「は?」
美玖がとんでもないことを言った。
「まあ、この国にはお世話になったけどその所為で兄さんが辛い思いをするならこんな国捨ててどこか安全な場所で兄妹みんなで暮らせばいいのよ。」
「でも、皆には使命が・・・。」
「そんなものより家族の方が大事よ。家族を犠牲にするくらいなら世界なんてどうなってもいい。」
「駄目だ・・・。この世界の人は見捨てることは出来ない。」
「なら、兄さんが頑張ってよ。」
美玖は僕を見つめる。その目は真剣だった。
「兄さんが私たちの手綱を握ってよ。私は兄さんに従う。」
「美玖・・・。」
「覚えておいて・・・。兄さんには力がある。勇者との絆という力が・・・。」
そう言って美玖は身を翻して扉の方に歩いて行く。
「ご飯食べたら少し寝なよ?もし、また倒れたりしたら美香姉さんが心配するから。」
「ああ・・・。」
そして、扉が閉まる。
すると、僕のお腹が鳴る。
「とりあえず、ご飯を食べるか・・・。」
朝食後、僕は眠った。今度はよく眠れた。
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