転生したら乙女ゲームの攻略対象者!?攻略されるのが嫌なので女装をしたら、ヒロインそっちのけで口説かれてるんですけど…

リンゴリラ

文字の大きさ
上 下
4 / 6
第一章

悪役令嬢と二人きりだって…?!

しおりを挟む
『ジュン目線』

 (何この空間、とんでもなく怖いんですけど)

 気持ち悪い男は帰っていき、その場にはテイジャー家の3人と俺含め4人が残った。

 皆、俺を取って食いそうな目でこちらを見てくる。

 (何を訴えているのかは言葉で言ってくれないとわからないけど…!?)

 といっても自分もさほど喋れるわけがないので人のことはいえないかもしれない。

「ジュン」

 (……!?)

 急にしゃべりかけられるとそれはそれでびっくりするものだ。大変身勝手ではある。

「……、」

 喉から声を出そうとしても、でてくるのは音もない息だけ。理由はわからないが、挨拶をしているときに気付いた。

「…無理はしなくていい。君も初めての家で緊張しているだろう、どうだ、ビビアン。案内してあげなさい。」

「……任せてください。」

 さっきの言動を全て無表情でやってのける現当主とそれに無表情で応える悪役令嬢。
 双方、俺から見たらとんでもなく怖い。

「行くわよ。」

 座っていた席から立ち、俺の手をそっと引いてビビアンは呼びかける。
 俺はそれに素直に応じ、つられて行くがままに歩いていく。

 その間、一切の会話はない。
 ただし、喋りかけられても答えられる声は持ち合わせていないのだが。

 (しかしながらこの状況、かなりまずいのでは…?)

 ジュンの設定通りにことが進むのならば、悪役令嬢ビビアンに虐められなければいけない。
 そして、現在この二人きりの展開。虐められない以外の選択肢はあるものだろうか。

 答えは否。おそらくない。

 (ひじょーにまずい)

 眉をゆっくりとひそめた。

 ***

「ここで最後。」

 ビビアンに引きつられたどれぐらいが経っただろう。公爵家の案内は聞いてる側も説明してる側もどちらもうんざりしてくる広さだ。
 先ほどのビビアンの発言も、俺に言うためと自分を元気づけるために言っているように感じられる。

 辿り着いたのは庭の真ん中に立っているガゼボ。
 周りには多種多様な植物が植えてあり、景色は色とりどりとなっていた。

「見ての通り庭よ。」

 一見冷たいような言い方だが、それが彼女の性格である。凛としていて、断罪されるまでは高嶺の花のような存在なのだ。 

 (まぁ疲れもありそうだけど…)

「貴方、ジュンって言うのよね?」

「……」

 相変わらず声は出ないので首を上下に動かす。
 それをビビアンは訝しげに見据え、ため息をつく。

「ずっと思ってたけど、どうして喋らないのかは聞いてはいけなのかしら…?表情だって動いてないし」

 独り言ように呟いたそれにどう反応したら良いかがとても難しい。更にこちらを見つめている目がとんでもなく怖い。

 (目つきが悪いだけだよね…?) 

 そうだと信じてる。というか、表情が動かないとは?

 ジュンは気づいていなかった。自分の表情が全くもって変わっていないことを。その点についても人のことはいえないことも。

 (どういうことだ…?こんなにも動かしているというのに…)

「…まぁ良いわ。」

 呆れたようにこちらを見ながらビビアンはいつの間にか置かれている紅茶を飲む。

 俺はそれを横目に見ながら未だにさっきの発言を頭の中に巡らさせていた。

 (喋れないのがそもそもマイナスなのに…てか『ごめんなさい』と言った記憶はあるんだけど。あれはなんで言えたんだろうか……はぁどうしよう)

 心のなかで一つため息をつきながら、辺りを見渡す。
 見たことのない花が多く、新鮮な気持ちで自然と高揚感が高まった。

 (ん…あれは)

 目にとまったのは一輪の黄色い花。
 それは前世でも、たまに外を歩いたときに見ていた花だ。

「どっか行くの?」

 俺は席を立ち、その花を優しく摘む。

 (やっぱり『たんぽぽ』だ。)

 俺は今日案内してくれた礼とよろしくの意味を込めて、その花をビビアンに渡した。

「え…?」

「ありがとう」

 そう紡いだ俺の声は酷く掠れて耳を澄ませても聞こえない声だったに違いない。

「…大切にするわ」

 ビビアンは満面の笑みで言葉を
































    
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...