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第一章

悪役令嬢と二人きりだって…?!

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『ジュン目線』

 (何この空間、とんでもなく怖いんですけど)

 気持ち悪い男は帰っていき、その場にはテイジャー家の3人と俺含め4人が残った。

 皆、俺を取って食いそうな目でこちらを見てくる。

 (何を訴えているのかは言葉で言ってくれないとわからないけど…!?)

 といっても自分もさほど喋れるわけがないので人のことはいえないかもしれない。

「ジュン」

 (……!?)

 急にしゃべりかけられるとそれはそれでびっくりするものだ。大変身勝手ではある。

「……、」

 喉から声を出そうとしても、でてくるのは音もない息だけ。理由はわからないが、挨拶をしているときに気付いた。

「…無理はしなくていい。君も初めての家でどこ緊張しているだろう、どうだ、ビビアン。案内してあげなさい。」

「……任せてください。」

 さっきの言動を全て無表情でやってのける現当主とそれに無表情で応える悪役令嬢。
 双方、俺から見たらとんでもなく怖い。

「行くわよ。」

 座っていた席から立ち、俺の手をそっと引いてビビアンは呼びかける。
 俺はそれに素直に応じ、つられて行くがままに歩いていく。

 その間、一切の会話はない。
 ただし、喋りかけられても答えられる声は持ち合わせていないのだが。

 (しかしながらこの状況、かなりまずいのでは…?)

 ジュンの設定通りにことが進むのならば、悪役令嬢ビビアンに虐められなければいけない。
 そして、現在この二人きりの展開。虐められない以外の選択肢はあるものだろうか。

 答えは否。おそらくない。

 (ひじょーにまずい)

 眉をゆっくりとひそめた。

 ***

「ここで最後。」

 ビビアンに引きつられたどれぐらいが経っただろう。公爵家の案内は聞いてる側も説明してる側もどちらもうんざりしてくる広さだ。
 先ほどのビビアンの発言も、俺に言うためと自分を元気づけるために言っているように感じられる。

 辿り着いたのは庭の真ん中に立っているガゼボ。
 周りには多種多様な植物が植えてあり、景色は色とりどりとなっていた。

「見ての通り庭よ。」

 一見冷たいような言い方だが、それが彼女の性格である。凛としていて、断罪されるまでは高嶺の花のような存在なのだ。 

 (まぁ疲れもありそうだけど…)

「貴方、ジュンって言うのよね?」

「……」

 相変わらず声は出ないので首を上下に動かす。
 それをビビアンは訝しげに見据え、ため息をつく。

「ずっと思ってたけど、どうして喋らないのかは聞いてはいけなのかしら…?表情だって動いてないし」

 独り言ように呟いたそれにどう反応したら良いかがとても難しい。更にこちらを見つめている目がとんでもなく怖い。

 (目つきが悪いだけだよね…?) 

 そうだと信じてる。というか、表情が動かないとは?

 ジュンは気づいていなかった。自分の表情が全くもって変わっていないことを。その点についても人のことはいえないことも。

 (どういうことだ…?こんなにも動かしているというのに…)

「…まぁ良いわ。」

 呆れたようにこちらを見ながらビビアンはいつの間にか置かれている紅茶を飲む。

 俺はそれを横目に見ながら未だにさっきの発言を頭の中に巡らさせていた。

 (喋れないのがそもそもマイナスなのに…てか『ごめんなさい』と言った記憶はあるんだけど。あれはなんで言えたんだろうか……はぁどうしよう)

 心のなかで一つため息をつきながら、辺りを見渡す。
 見たことのない花が多く、新鮮な気持ちで自然と高揚感が高まった。

 (ん…あれは)

 目にとまったのは一輪の黄色い花。
 それは前世でも、たまに外を歩いたときに見ていた花だ。

「どっか行くの?」

 俺は席を立ち、その花を優しく摘む。

 (やっぱり『たんぽぽ』だ。)

 俺は今日案内してくれた礼とよろしくの意味を込めて、その花をビビアンに渡した。

「え…?」

「ありがとう」

 そう紡いだ俺の声は酷く掠れて耳を澄ませても聞こえない声だったに違いない。

「…大切にするわ」

 ビビアンは満面の笑みで言葉を
































    
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