62 / 256
62話 一年半ぶり
しおりを挟む
俺の風邪も治り学校にも復帰。
一週間が経過すると、鞠也ちゃんと希咲さんは福岡に戻っていった。
そして二ヶ月後には、東京に引っ越ししてきた。
家はうちから一駅離れた場所になった。
そうなったので、月に一回もしくは二ヶ月に一回はうちに遊びに来たり、たまに姉と一緒に遊びにも行くようになった。
俺はいつも通り、何も変わりなく学校に通い、時間が過ぎていった。
ーーそして、約一年半が過ぎた。
ルーシーからは連絡は……ない。俺からも連絡はしていない。
俺は待つだけ。今の俺にできることをするだけだった。
現在、小学六年生の夏休みに入っていた。
俺は再び、綺麗めのスーツを着て外に出かけていた。髪もあの時と同じオールバックだ。
「よお、この服で集まるのも久しぶりだな」
スーツ姿の冬矢がジャケットを脱いで、あちーと言いながら白シャツ姿で挨拶した。
「一年とちょっと振りだね」
「こうしてみると、あの時よりみんな身長伸びたよな」
一年も経過すれば、身長も伸びる。と言っても所詮は小学生。そこまで大きくはない。
でも前着ていたスーツも小さくなってしまい、少し苦しくなっている。筋トレをしてきたせいもあるかもしれないけど。
そう、この日はしずはのコンクールの日だった。
コンクールは年に何度もあるそうだが、以前、俺達を招待したコンクールは二年に一度しかないらしい。そして今年は夏に行われるとのことで、前回より半年ほど時期が早まったらしい。
太陽がこれでもかというほど地面を照らしていて、この夏の暑さで歩るくだけでじわっと汗が滲み出てくる。俺も上着を脱いで、シャツの裾を肘までまくる。
この格好で中に入ってもいいのだろうか……。
とりあえず中はクーラー効いてるだろうし、会場に到着してから着ればいいか。
「じゃあ、行こっか!」
同じくそこにいた千彩都が声をかける。
今日の彼女の服装はダークブルーのノースリーブのワンピースドレス。夏らしい可愛い服装だ。
女子というのは少し着飾るだけで可愛く見えてしまう。小学校にドレスぽい服を着てくる人なんていないからね。千彩都は一年半前よりも大人っぽくなった気がした。
「ふぅ~暑かったぁ。ちさ、ありがと」
開渡の額を千彩都がハンカチで拭いていた。
もう夫婦漫才を見ているとしか思えない。二人は前よりももっと仲良くなっている気がする。
汗くらい自分で拭けよと冬矢も思っているはずだ。
俺達は会場に到着した。
千彩都がしずはにメッセージを送っていたようで、会場に入ってすぐの所で合流した。
「今日のしーちゃん、前の時よりすっっごい綺麗!」
しずはは黒いクラシックなドレスを着ていた。以前の時と一緒の色。
ただ、しずははあれから髪を伸ばし、肩までしかなかった髪も今は胸の辺りまで伸びていた。その髪は会場の外から差し込む太陽の光が当たると天使の輪っかができるほど艶めいてた。
髪を耳にかける仕草。男子なら誰しもがグッときてしまう仕草。今のしずはは、それが様になっていた。
しずははこの一年半で何があったのかわからないが、千彩都以上に大人っぽくなった。
なんというか、小学生なのに色気のようなものを感じるようになっていた。あと今日はメイクもしている。
前は引っ込み思案で、ピアノを演奏する時以外は恥ずかしがり屋っぽい感じだった。
でも今はピアノを弾く前なのに、何かそういう自信溢れるオーラを纏っている感じがした。
あの芸能人のような母親に似てきたのかもしれない。
「ちーちゃんありがとう」
しずはが微笑んだ。ちらりと俺に視線を送る。
「楽しみにしてる」
「うん……ちゃんと見ていてね」
しずはが優勝したのに泣いた去年のコンクール。
『次があるなら、その時に完璧なのを見せて』と俺が言った。そして今日がその機会だった。
「じゃあ、もう一回アレ、やる?」
千彩都が言うアレ。前回冬矢がパワーを送ろうということでそれぞれがしずはと握手したもの。
そうして、みんなが"んん~"と唸りながらしずはと握手をしてパワーを送った。
最後に俺の番。
右手を差し出して、しずはと握手をした。俺は唸らなかった。
「ーー!?」
あの時のと同じだった。しずはが握り返す手は力強かった。
「ーー!?」
しずはが驚きの顔を見せた。
今回は俺も強めに握り返したからだ。
「ふふ」
なぜかしずはが笑った。その意味は俺には読み取れない。
でも、いい笑顔だった。
「じゃあみんな。後でね」
しずはが控室に向かった。
◇ ◇ ◇
あれから色々努力をした。
でも光流に対して、何か行動を起こしたわけじゃない。自分が変わる努力をしただけ。
ピアノも勉強も頑張って、見た目も綺麗になれるよう努力した。
まずは髪を伸ばして、綺麗になれるようにヘアケアをお母さんとお姉ちゃんから教えてもらった。
ヘアスタイルもファッションも勉強して、前よりも多分良くなったと思う。
光流は私のことをどうとも思っていないはず。どうともは言い過ぎだけど恋愛対象ではない。
努力したところで私が勝てるとも思っていない。でも開渡が言った通り、努力しないで後悔するより努力しきって後悔したい。
これは私の勝手なエゴ。光流への怒りから始まった恋。今は光流の顔を見る度に気持ちが高ぶってしまう。あぁ、私、好きなんだなって。ちゃんとこの気持ちを理解してしまった。
私も努力しているが光流も努力している。勉強の成績も上がってきて、どことなく体つきも変わってきた。筋トレを頑張っているらしい。このまま続けたら高校生になる頃にはムキムキかもしれない。
光流が努力している理由なんて一つしかないと思う。それは、わかりきってる。
ーーそれでも私は今日を迎えた。
私は一年半前にした光流との約束を果たしに来た。
ノーミスで一位を取る。
私ならやれる。後悔しても良いくらいの努力はしてきた。
やりきれ、私。
一年半前より努力してきた今の私は、最強でしょ。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、あんた達」
しずはを見送った後、後ろから誰かに声をかけられた。
俺達四人はそれぞれ振り返った。
長い髪をポニーテールにしている少女だった。
両腕を胸の前で組みながら少し偉そうな態度だ。
「あ、この子……」
千彩都が気づいたようだ。俺も気づいた。
「藤間しずはの友達?」
その少女は、しずはの友達かどうか聞いてきた。聞いて何の意味があるのだろう。
「そうだ。それがどうした?」
冬矢が答える。
少女は小学生にしてはかなり整った顔で、美人に成長するのではないかと思われる雰囲気。
彼女も一年半前よりも見た目が成長していた。ただ、俺達を睨みつけるその表情が全てを台無しにしていた。
「どいつのせいかわからないけどね。前もその前も、その前も!!! この一年半、全部一位!! 藤間しずはは毎回毎回うまくなってたの!!」
なんだ、どういうことだ。しずはがうまくなってたなら良いことだ。
しずはを褒めにきたのか?
「良いことじゃないか。なぁ?」
冬矢が皆に同意を求める。俺達は首を縦に振る。
「少し前に聞いたわ。藤間しずはは理由を教えてくれなかったけど、前より頑張ってるって!」
「なんだよ。しずはを褒めにきたのか?」
冬矢の返しにさらに怒りの表情を見せる少女。
「ふん! あいつの実力はこの天才の私が一番理解してるわ。でも誰かが藤間しずはを成長させたの。それは先生とか親じゃないって言ってた」
「そこで成長させたやつが友達じゃないかと思ったわけか」
それを知って、この子はどうしたいのだろう。まだわからない。
「そうよ。去年もここに来てたわよね。だからあんた達の誰かに決まってる」
少女は俺達の顔を一人一人見つめていく。
「……全くわからないわ!!」
「ってなんだよ!!」
俺達は全員その場でズッコケそうになった。天然か?
「とにかくね! 今日は藤間しずはの敗北をお友達のあんたらに見せてあげるわ!」
とても自信家だ。でもこういう自信があるのは良いことだ。この自信の根底にあるのは、努力してきたという事実。努力している人は嫌いではない。
「おうおう、いいぜ。しずはを負かしてみてくれ」
「あんたね、一番ムカつくわね!!」
冬矢が煽ることで、少女はターゲットを絞ったようだ。
「君、若林深月だろ? 去年の演奏凄く良かったぜ。せっかく可愛い顔なんだから、今度会う時は笑顔見せてくれよな」
「は、はぁぁぁ!? か、かわいくなんてないし!! い、いきなり何言ってるのよ!!」
冬矢がいきなり口説き始めた。
「この子、チョロいわね……」
「チョロいね」
「チョロい……」
俺達はそれぞれに呟いた。
「と、とにかくね!! 今日は藤間しずはの泣き顔を見せてやるんだから! 期待してなさい!!」
「おう、楽しみにしてるぜ。深月ちゃんの演奏もちゃんと聴いておくよ」
「み、みづきちゃん!? ……やりづらいわね! このバカ!!」
冬矢の攻撃に、若林はうまく対応できなかったようだ。今日の演奏に影響がなければいいけど。
捨て台詞を吐きながら、若林は足早に控室に向かっていった。
「あ~、あの子面白いわぁ~」
「ちょっとあんたね、ほどほどにしなさいよね」
「だって見ただろ? しずはの友達だからって顔まで見に来るなんて可愛いじゃんか。しずはの事大好きなんだろうな~。あ、変な意味じゃなくてな?」
冬矢は完全に若林を茶化したようだ。
少しやりとりをしたら、あのチョロい若林はすぐに冬矢に落とされそうだ。
「じゃあ、俺達も中入ろうぜ」
冬矢が率先して、会場のホールの中へと足を進めた。
ー☆ー☆ー☆ー
この度は本小説をお読みいただきありがとうございます!
もしよろしければ小説トップの★レビューやブックマーク登録などの応援をしていただけると嬉しいです。
一週間が経過すると、鞠也ちゃんと希咲さんは福岡に戻っていった。
そして二ヶ月後には、東京に引っ越ししてきた。
家はうちから一駅離れた場所になった。
そうなったので、月に一回もしくは二ヶ月に一回はうちに遊びに来たり、たまに姉と一緒に遊びにも行くようになった。
俺はいつも通り、何も変わりなく学校に通い、時間が過ぎていった。
ーーそして、約一年半が過ぎた。
ルーシーからは連絡は……ない。俺からも連絡はしていない。
俺は待つだけ。今の俺にできることをするだけだった。
現在、小学六年生の夏休みに入っていた。
俺は再び、綺麗めのスーツを着て外に出かけていた。髪もあの時と同じオールバックだ。
「よお、この服で集まるのも久しぶりだな」
スーツ姿の冬矢がジャケットを脱いで、あちーと言いながら白シャツ姿で挨拶した。
「一年とちょっと振りだね」
「こうしてみると、あの時よりみんな身長伸びたよな」
一年も経過すれば、身長も伸びる。と言っても所詮は小学生。そこまで大きくはない。
でも前着ていたスーツも小さくなってしまい、少し苦しくなっている。筋トレをしてきたせいもあるかもしれないけど。
そう、この日はしずはのコンクールの日だった。
コンクールは年に何度もあるそうだが、以前、俺達を招待したコンクールは二年に一度しかないらしい。そして今年は夏に行われるとのことで、前回より半年ほど時期が早まったらしい。
太陽がこれでもかというほど地面を照らしていて、この夏の暑さで歩るくだけでじわっと汗が滲み出てくる。俺も上着を脱いで、シャツの裾を肘までまくる。
この格好で中に入ってもいいのだろうか……。
とりあえず中はクーラー効いてるだろうし、会場に到着してから着ればいいか。
「じゃあ、行こっか!」
同じくそこにいた千彩都が声をかける。
今日の彼女の服装はダークブルーのノースリーブのワンピースドレス。夏らしい可愛い服装だ。
女子というのは少し着飾るだけで可愛く見えてしまう。小学校にドレスぽい服を着てくる人なんていないからね。千彩都は一年半前よりも大人っぽくなった気がした。
「ふぅ~暑かったぁ。ちさ、ありがと」
開渡の額を千彩都がハンカチで拭いていた。
もう夫婦漫才を見ているとしか思えない。二人は前よりももっと仲良くなっている気がする。
汗くらい自分で拭けよと冬矢も思っているはずだ。
俺達は会場に到着した。
千彩都がしずはにメッセージを送っていたようで、会場に入ってすぐの所で合流した。
「今日のしーちゃん、前の時よりすっっごい綺麗!」
しずはは黒いクラシックなドレスを着ていた。以前の時と一緒の色。
ただ、しずははあれから髪を伸ばし、肩までしかなかった髪も今は胸の辺りまで伸びていた。その髪は会場の外から差し込む太陽の光が当たると天使の輪っかができるほど艶めいてた。
髪を耳にかける仕草。男子なら誰しもがグッときてしまう仕草。今のしずはは、それが様になっていた。
しずははこの一年半で何があったのかわからないが、千彩都以上に大人っぽくなった。
なんというか、小学生なのに色気のようなものを感じるようになっていた。あと今日はメイクもしている。
前は引っ込み思案で、ピアノを演奏する時以外は恥ずかしがり屋っぽい感じだった。
でも今はピアノを弾く前なのに、何かそういう自信溢れるオーラを纏っている感じがした。
あの芸能人のような母親に似てきたのかもしれない。
「ちーちゃんありがとう」
しずはが微笑んだ。ちらりと俺に視線を送る。
「楽しみにしてる」
「うん……ちゃんと見ていてね」
しずはが優勝したのに泣いた去年のコンクール。
『次があるなら、その時に完璧なのを見せて』と俺が言った。そして今日がその機会だった。
「じゃあ、もう一回アレ、やる?」
千彩都が言うアレ。前回冬矢がパワーを送ろうということでそれぞれがしずはと握手したもの。
そうして、みんなが"んん~"と唸りながらしずはと握手をしてパワーを送った。
最後に俺の番。
右手を差し出して、しずはと握手をした。俺は唸らなかった。
「ーー!?」
あの時のと同じだった。しずはが握り返す手は力強かった。
「ーー!?」
しずはが驚きの顔を見せた。
今回は俺も強めに握り返したからだ。
「ふふ」
なぜかしずはが笑った。その意味は俺には読み取れない。
でも、いい笑顔だった。
「じゃあみんな。後でね」
しずはが控室に向かった。
◇ ◇ ◇
あれから色々努力をした。
でも光流に対して、何か行動を起こしたわけじゃない。自分が変わる努力をしただけ。
ピアノも勉強も頑張って、見た目も綺麗になれるよう努力した。
まずは髪を伸ばして、綺麗になれるようにヘアケアをお母さんとお姉ちゃんから教えてもらった。
ヘアスタイルもファッションも勉強して、前よりも多分良くなったと思う。
光流は私のことをどうとも思っていないはず。どうともは言い過ぎだけど恋愛対象ではない。
努力したところで私が勝てるとも思っていない。でも開渡が言った通り、努力しないで後悔するより努力しきって後悔したい。
これは私の勝手なエゴ。光流への怒りから始まった恋。今は光流の顔を見る度に気持ちが高ぶってしまう。あぁ、私、好きなんだなって。ちゃんとこの気持ちを理解してしまった。
私も努力しているが光流も努力している。勉強の成績も上がってきて、どことなく体つきも変わってきた。筋トレを頑張っているらしい。このまま続けたら高校生になる頃にはムキムキかもしれない。
光流が努力している理由なんて一つしかないと思う。それは、わかりきってる。
ーーそれでも私は今日を迎えた。
私は一年半前にした光流との約束を果たしに来た。
ノーミスで一位を取る。
私ならやれる。後悔しても良いくらいの努力はしてきた。
やりきれ、私。
一年半前より努力してきた今の私は、最強でしょ。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、あんた達」
しずはを見送った後、後ろから誰かに声をかけられた。
俺達四人はそれぞれ振り返った。
長い髪をポニーテールにしている少女だった。
両腕を胸の前で組みながら少し偉そうな態度だ。
「あ、この子……」
千彩都が気づいたようだ。俺も気づいた。
「藤間しずはの友達?」
その少女は、しずはの友達かどうか聞いてきた。聞いて何の意味があるのだろう。
「そうだ。それがどうした?」
冬矢が答える。
少女は小学生にしてはかなり整った顔で、美人に成長するのではないかと思われる雰囲気。
彼女も一年半前よりも見た目が成長していた。ただ、俺達を睨みつけるその表情が全てを台無しにしていた。
「どいつのせいかわからないけどね。前もその前も、その前も!!! この一年半、全部一位!! 藤間しずはは毎回毎回うまくなってたの!!」
なんだ、どういうことだ。しずはがうまくなってたなら良いことだ。
しずはを褒めにきたのか?
「良いことじゃないか。なぁ?」
冬矢が皆に同意を求める。俺達は首を縦に振る。
「少し前に聞いたわ。藤間しずはは理由を教えてくれなかったけど、前より頑張ってるって!」
「なんだよ。しずはを褒めにきたのか?」
冬矢の返しにさらに怒りの表情を見せる少女。
「ふん! あいつの実力はこの天才の私が一番理解してるわ。でも誰かが藤間しずはを成長させたの。それは先生とか親じゃないって言ってた」
「そこで成長させたやつが友達じゃないかと思ったわけか」
それを知って、この子はどうしたいのだろう。まだわからない。
「そうよ。去年もここに来てたわよね。だからあんた達の誰かに決まってる」
少女は俺達の顔を一人一人見つめていく。
「……全くわからないわ!!」
「ってなんだよ!!」
俺達は全員その場でズッコケそうになった。天然か?
「とにかくね! 今日は藤間しずはの敗北をお友達のあんたらに見せてあげるわ!」
とても自信家だ。でもこういう自信があるのは良いことだ。この自信の根底にあるのは、努力してきたという事実。努力している人は嫌いではない。
「おうおう、いいぜ。しずはを負かしてみてくれ」
「あんたね、一番ムカつくわね!!」
冬矢が煽ることで、少女はターゲットを絞ったようだ。
「君、若林深月だろ? 去年の演奏凄く良かったぜ。せっかく可愛い顔なんだから、今度会う時は笑顔見せてくれよな」
「は、はぁぁぁ!? か、かわいくなんてないし!! い、いきなり何言ってるのよ!!」
冬矢がいきなり口説き始めた。
「この子、チョロいわね……」
「チョロいね」
「チョロい……」
俺達はそれぞれに呟いた。
「と、とにかくね!! 今日は藤間しずはの泣き顔を見せてやるんだから! 期待してなさい!!」
「おう、楽しみにしてるぜ。深月ちゃんの演奏もちゃんと聴いておくよ」
「み、みづきちゃん!? ……やりづらいわね! このバカ!!」
冬矢の攻撃に、若林はうまく対応できなかったようだ。今日の演奏に影響がなければいいけど。
捨て台詞を吐きながら、若林は足早に控室に向かっていった。
「あ~、あの子面白いわぁ~」
「ちょっとあんたね、ほどほどにしなさいよね」
「だって見ただろ? しずはの友達だからって顔まで見に来るなんて可愛いじゃんか。しずはの事大好きなんだろうな~。あ、変な意味じゃなくてな?」
冬矢は完全に若林を茶化したようだ。
少しやりとりをしたら、あのチョロい若林はすぐに冬矢に落とされそうだ。
「じゃあ、俺達も中入ろうぜ」
冬矢が率先して、会場のホールの中へと足を進めた。
ー☆ー☆ー☆ー
この度は本小説をお読みいただきありがとうございます!
もしよろしければ小説トップの★レビューやブックマーク登録などの応援をしていただけると嬉しいです。
10
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。
のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。
俺は先輩に恋人を寝取られた。
ラブラブな二人。
小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。
そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。
前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。
前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。
その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。
春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。
俺は彼女のことが好きになる。
しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。
つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。
今世ではこのようなことは繰り返したくない。
今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。
既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。
しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。
俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。
一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。
その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。
俺の新しい人生が始まろうとしている。
この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。
「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる