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26話 限定公開
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光流の誕生日まで一ヶ月を切っていた。
誕生日プレゼントとして、ヘッドホンを用意。
三曲目が完成したらそれも一緒に届けようと思っていた。既に歌詞は完成し、アレックスに提出していた。
「あとは手紙だけ……」
歌は収録すればいいだけなので、自分でしなければいけないのは手紙だ。
先に手紙だけ出せばいいかとも最初は思ったけど、やっぱり誕生日に一緒に渡したかった。
今私は、部屋の机に向かって、ジュードがくれた便箋を広げていた。
次男のジュードには、意図を汲み取ってからスマホで感謝のメッセージを送った。
ジュードは『ちゃんと使えよ』とだけ返事がきた。
「ん~何から書き始めよう」
『光流、誕生日プレゼントありがとう』『光流、お手紙本当に嬉しかった』『光流、ルーシーです。ずっと連絡しなくてごめん』『すぐにお手紙の返事しなくてごめん』
「……全部言いたいな」
気軽に送れるメッセージと違って、手紙となると、一番最初に何からかけば良いか迷ってしまう。
もしかして光流も私への手紙を書く時に色々悩んで書いたのだろうか。
悩んで書いてくれていたとしたら、とても嬉しい。それだけ、私の事を想ってくれているということなのだから。
◇ ◇ ◇
十一月の半ばに入った。
空気がより冷たくなり、木々は枯れ葉す落ちていない寂しい季節となっていた。
あれから約三週間が経過し、三曲目の収録も終了。
光流の誕生日まで残り二週間弱。
私はジュードがくれた便箋をありがたく使わせてもらい、なんとか光流への手紙を書ききった。
ただ、最後にまだ書いていないものがあった。私からのサプライズ。
それは私の動画チャンネルの限定公開動画。
これは動画のURLを知っている人しか見られないもの。
アレックスなど、チャンネルにログインできる人には見られてしまう可能性もあるけど、気にしない。
一応アレックスにも許可をとった。アーティスト契約してないから、チャンネルは私だけのものだから自由にして良いと言ってくれた。
私はスマホをスマホスタンドに固定し、机の上に左腕を出す。手首には銀色のバングル。
それも一緒に映るようにして録画ボタンを押した。
ーーそして顔の包帯をとって、その包帯をカメラに映るように置いた。
「……光流。本当は会ってから言うつもりだったんだけど……実は、私ーー」
「ーーーー」
動画に言葉を吹き込んだ。
そして、机の上に置いた包帯はーー少し濡れていた。
「ちゃんと良い感じに撮れてるといいけど……」
私はその動画を限定公開でアップロードした。そしてURLを取得。
そのURLを手紙に記載した。
スマホにURLを打ち込む行為が光流にとって面倒かもしれないが、私の声を直接届けるにはこれが一番良いと思った。
「よし、これで全部、揃ったよね……」
アメリカから日本への配送には日数がかかる。なので、今から出さないと光流の誕生日に間に合わない。光流も日本から私の誕生日に間に合うようにプレゼントを送ってくれたはずだ。
そうして、私の光流へのプレゼントは空へと飛び立っていった。
◇ ◇ ◇
「ついに送ったか~」
「うん……」
私は楽器の練習の合間、光流へ誕生日プレゼントを送ったことを真空に話した。
「光流、喜ぶといいなあ……」
「まぁ、百パー喜ぶだろうね」
「ひゃ、百パー!?」
ドラムの椅子に座り、ジト目をしながらスティックを向けてくる真空。
「あのねえ……光流くんがあの手紙を送ってきてくれた時点でわかるでしょ?」
「そ、そうなのかもしれないけど……」
呆れた口調で真空が続ける。
「会ってすらないのに、好感度マックスなのよ! この羨ましい女めっ!!」
その謎の怒りをぶつけるようにドラムをドドドと叩き出す真空。
練習が二ヶ月目に突入し、結構うまくなってきている。
「あはは……」
「ルーシーがくれたものなら、何でも喜ぶでしょ。あの手紙の感じなら」
「でも手紙の返事を遅くしたから、呆れられちゃうかも」
「話を聞く限り、光流くんは目移りしないでずっと待ってくれてると思うけどね……」
「そうだと、嬉しい……」
連絡しなかったり、手紙の返事が遅かったり、私は自分ばっかりで、光流の気持ちを蔑ろにしている気がする。
「私って多分、傲慢なんだろうな……」
全てにおいて卑屈になっていたあの頃。あの名残がまだ自分に残っているのかもしれない。
光流に心配かけちゃうよね。
光流はこんな私のこと、どう思うのかな。……怒るのかな。怒ってくれるのかな。
「あ~、傲慢ルーシーからの来年の誕プレ楽しみだなーーー」
棒読みで真空が虚空を見つめていた。
真空は会話も面白いし、行動も面白い。同じ人間とは思えないほど、表情が変化する。
真空となら、何をしていても楽しい。たまに言ってくるいじわるな言葉も心地良い。
「私、ヤバイことしてたら言ってほしい」
「連絡遅い! 返事しない! 顔見せない! ルーシー都合! 光流くんかわいそう!」
直球で言ってくる。本当のことなのにちょっとズサっと胸に突き刺さってしまう。
「あはは……」
「ルーシー。人間はね、完璧じゃないの。私だって男っぽいところあるし、部屋汚いし、ガサツだし。でも直したいって思うなら、今から直していけばいいよ。tね…本当に光流くんのためになることはどんなことなのかって考えて」
「真空は凄いなあ……」
「でしょ? 私がいて良かったでしょ?」
「本当にそう思えるところがムカつくけど……」
自分の傲慢さを捨てて、本当に光流のためになることか……。
「とりあえず、真空の来年の誕生日プレゼントは楽しみにしておいて。凄いプレゼントするんだから」
「光流くんと同じで、私もルーシーがくれたものなら、何でも嬉しいけどね」
私も真空がくれたものなら、何でも嬉しい。
プレゼントは別に、特別な記念日でなくともいいはず。今度、真空に何かプレゼントしよう。
光流も同じだ。
「そういやさ、光流くんの受験校決まったのかな?」
「一応決まってるみたい。光流、結構成績良いって聞いてる」
私達の計画では、光流と一緒の学校に通うつもりだった。
ストーカーのようになってしまっているけど、これは私の親経由で光流の親に聞いた情報だ。
「しかもジュードと同じ学校みたい」
「ってことは私達が入学したらジュードさんは同じ学校の三年生ってこと!?」
「このままならそうなるね」
光流、私、真空、ジュードがいる高校。どうなっちゃうんだろう。もしジュードがいる学校に入れたら、私的にもとても助かる。知り合いが一人いるだけで安心感がある。
そもそも私達が受験で受けるとは限らない。
一応、私も真空も成績上位だし、アメリカの学校の評価が日本でどう評価されるかわからないが、推薦を受ける予定だ。遠い場合、面接もリモートで受けることができるとか。時代の最先端だ。
逆に光流が落ちる可能性だってある。その場合はしょうがないと思うしかないけど。
「一緒の学校に通いたいなぁ……」
「こればっかりはね。神様にお願いするしかないね」
(光流と一緒に高校生活が送れますように……)
ー☆ー☆ー☆ー
この度は本小説をお読みいただきありがとうございます!
もしよろしければ★評価やブックマーク登録などの応援をしていただけると嬉しいです。
ちなみにアメリカの学校の卒業式はかなり早くて6月とからしいのですが、このお話では3月にしています。
そういうものだと思ってください。
誕生日プレゼントとして、ヘッドホンを用意。
三曲目が完成したらそれも一緒に届けようと思っていた。既に歌詞は完成し、アレックスに提出していた。
「あとは手紙だけ……」
歌は収録すればいいだけなので、自分でしなければいけないのは手紙だ。
先に手紙だけ出せばいいかとも最初は思ったけど、やっぱり誕生日に一緒に渡したかった。
今私は、部屋の机に向かって、ジュードがくれた便箋を広げていた。
次男のジュードには、意図を汲み取ってからスマホで感謝のメッセージを送った。
ジュードは『ちゃんと使えよ』とだけ返事がきた。
「ん~何から書き始めよう」
『光流、誕生日プレゼントありがとう』『光流、お手紙本当に嬉しかった』『光流、ルーシーです。ずっと連絡しなくてごめん』『すぐにお手紙の返事しなくてごめん』
「……全部言いたいな」
気軽に送れるメッセージと違って、手紙となると、一番最初に何からかけば良いか迷ってしまう。
もしかして光流も私への手紙を書く時に色々悩んで書いたのだろうか。
悩んで書いてくれていたとしたら、とても嬉しい。それだけ、私の事を想ってくれているということなのだから。
◇ ◇ ◇
十一月の半ばに入った。
空気がより冷たくなり、木々は枯れ葉す落ちていない寂しい季節となっていた。
あれから約三週間が経過し、三曲目の収録も終了。
光流の誕生日まで残り二週間弱。
私はジュードがくれた便箋をありがたく使わせてもらい、なんとか光流への手紙を書ききった。
ただ、最後にまだ書いていないものがあった。私からのサプライズ。
それは私の動画チャンネルの限定公開動画。
これは動画のURLを知っている人しか見られないもの。
アレックスなど、チャンネルにログインできる人には見られてしまう可能性もあるけど、気にしない。
一応アレックスにも許可をとった。アーティスト契約してないから、チャンネルは私だけのものだから自由にして良いと言ってくれた。
私はスマホをスマホスタンドに固定し、机の上に左腕を出す。手首には銀色のバングル。
それも一緒に映るようにして録画ボタンを押した。
ーーそして顔の包帯をとって、その包帯をカメラに映るように置いた。
「……光流。本当は会ってから言うつもりだったんだけど……実は、私ーー」
「ーーーー」
動画に言葉を吹き込んだ。
そして、机の上に置いた包帯はーー少し濡れていた。
「ちゃんと良い感じに撮れてるといいけど……」
私はその動画を限定公開でアップロードした。そしてURLを取得。
そのURLを手紙に記載した。
スマホにURLを打ち込む行為が光流にとって面倒かもしれないが、私の声を直接届けるにはこれが一番良いと思った。
「よし、これで全部、揃ったよね……」
アメリカから日本への配送には日数がかかる。なので、今から出さないと光流の誕生日に間に合わない。光流も日本から私の誕生日に間に合うようにプレゼントを送ってくれたはずだ。
そうして、私の光流へのプレゼントは空へと飛び立っていった。
◇ ◇ ◇
「ついに送ったか~」
「うん……」
私は楽器の練習の合間、光流へ誕生日プレゼントを送ったことを真空に話した。
「光流、喜ぶといいなあ……」
「まぁ、百パー喜ぶだろうね」
「ひゃ、百パー!?」
ドラムの椅子に座り、ジト目をしながらスティックを向けてくる真空。
「あのねえ……光流くんがあの手紙を送ってきてくれた時点でわかるでしょ?」
「そ、そうなのかもしれないけど……」
呆れた口調で真空が続ける。
「会ってすらないのに、好感度マックスなのよ! この羨ましい女めっ!!」
その謎の怒りをぶつけるようにドラムをドドドと叩き出す真空。
練習が二ヶ月目に突入し、結構うまくなってきている。
「あはは……」
「ルーシーがくれたものなら、何でも喜ぶでしょ。あの手紙の感じなら」
「でも手紙の返事を遅くしたから、呆れられちゃうかも」
「話を聞く限り、光流くんは目移りしないでずっと待ってくれてると思うけどね……」
「そうだと、嬉しい……」
連絡しなかったり、手紙の返事が遅かったり、私は自分ばっかりで、光流の気持ちを蔑ろにしている気がする。
「私って多分、傲慢なんだろうな……」
全てにおいて卑屈になっていたあの頃。あの名残がまだ自分に残っているのかもしれない。
光流に心配かけちゃうよね。
光流はこんな私のこと、どう思うのかな。……怒るのかな。怒ってくれるのかな。
「あ~、傲慢ルーシーからの来年の誕プレ楽しみだなーーー」
棒読みで真空が虚空を見つめていた。
真空は会話も面白いし、行動も面白い。同じ人間とは思えないほど、表情が変化する。
真空となら、何をしていても楽しい。たまに言ってくるいじわるな言葉も心地良い。
「私、ヤバイことしてたら言ってほしい」
「連絡遅い! 返事しない! 顔見せない! ルーシー都合! 光流くんかわいそう!」
直球で言ってくる。本当のことなのにちょっとズサっと胸に突き刺さってしまう。
「あはは……」
「ルーシー。人間はね、完璧じゃないの。私だって男っぽいところあるし、部屋汚いし、ガサツだし。でも直したいって思うなら、今から直していけばいいよ。tね…本当に光流くんのためになることはどんなことなのかって考えて」
「真空は凄いなあ……」
「でしょ? 私がいて良かったでしょ?」
「本当にそう思えるところがムカつくけど……」
自分の傲慢さを捨てて、本当に光流のためになることか……。
「とりあえず、真空の来年の誕生日プレゼントは楽しみにしておいて。凄いプレゼントするんだから」
「光流くんと同じで、私もルーシーがくれたものなら、何でも嬉しいけどね」
私も真空がくれたものなら、何でも嬉しい。
プレゼントは別に、特別な記念日でなくともいいはず。今度、真空に何かプレゼントしよう。
光流も同じだ。
「そういやさ、光流くんの受験校決まったのかな?」
「一応決まってるみたい。光流、結構成績良いって聞いてる」
私達の計画では、光流と一緒の学校に通うつもりだった。
ストーカーのようになってしまっているけど、これは私の親経由で光流の親に聞いた情報だ。
「しかもジュードと同じ学校みたい」
「ってことは私達が入学したらジュードさんは同じ学校の三年生ってこと!?」
「このままならそうなるね」
光流、私、真空、ジュードがいる高校。どうなっちゃうんだろう。もしジュードがいる学校に入れたら、私的にもとても助かる。知り合いが一人いるだけで安心感がある。
そもそも私達が受験で受けるとは限らない。
一応、私も真空も成績上位だし、アメリカの学校の評価が日本でどう評価されるかわからないが、推薦を受ける予定だ。遠い場合、面接もリモートで受けることができるとか。時代の最先端だ。
逆に光流が落ちる可能性だってある。その場合はしょうがないと思うしかないけど。
「一緒の学校に通いたいなぁ……」
「こればっかりはね。神様にお願いするしかないね」
(光流と一緒に高校生活が送れますように……)
ー☆ー☆ー☆ー
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