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本編
44.帰郷
しおりを挟む帰る日が決まった。決めてからはあっという間だった。辞典が完成してからもローズさんが俺と瑛士君を個々で王城に呼び出したりしていたので、一週間前位からは何げに慌ただしかったのだ。
瑛士君とローズさんが何を話していたかは聞いていないが、たぶん俺と似たような物だろう。瑛士君が「あいつ、すげーな」って零していたから。それ俺も思った。されたのは主に性教育なのだが知識がちょっとヤバい。何度か鼻血を出しかけたが、受け入れる側のリスクとか真面目に為になった。
帰る前日は兄ちゃん達がパーティしてくれて、兄ちゃんが珍しくお酒飲んだりするから途中で寝落ちしていた。リアさんが今度実家に帰る時は絶対兄ちゃんと一緒に来るって約束してくれたのが嬉しい。俺もまた王都に来るねって話した。絶対来る。ローズさんや皆に会いたいし。
帰りの乗り合い馬車には色んな人が来て、見送ってくれた。
兄ちゃん夫婦に、ローズさん。マインツ様とせっかちな神官。こっちのご近所さん達も皆で来て、やっぱり色々押し付けられた。皆、兄ちゃんから隠れるように渡して来るから何かと覗けば、ライキ油やライキの実。ちょっと気が遠くなる。
「仲良くするのよ」
「いつでも送ってあげるから言ってね」
昼間っからニコニコと人妻達が中々すごい事を言う。行きよりずっと多くなった荷物を抱えて、馬車に乗り込む。見えなくなるまで手を振って、王都に別れを告げた。楽しかったなぁって零したら、優しく頭を撫でられる。
「また来るんだろ? 泣くなよ」
寂しくて泣くんじゃなくて、色々あった事が頭を巡って、瑛士君と一緒に帰れる事が嬉しくて、でも結局いっぱい泣いた。しかも泣きつかれて寝た。行きと違って、気兼ねなく瑛士君の肩に寄りかかって。
「――たっだいま!」
やっぱり五日かかって町に着いた。王都に比べると華やかさに欠けるけど景色も馴染んだ匂いもすごく落ち着く。自分の店に荷物を投げて、まずは出る時に見送ってくれた人達にお土産を配って回った。
「良かったわ。もう帰って来ないかと思った」
と皆して言われた。最終的には三月は向こうで暮らしていたのだ。自分の店があるのに、さすがに放置し過ぎだろう。心配されるのも無理はない。
謝って謝って、お土産渡して、また謝って……を繰り返して、家に帰って来た時は疲れ果てて屍状態だった。一度へたり込んでしまうともう立てる気がしない。しん、と静まった部屋は少しひんやりしていて、出入りがなかったからか空気も違っていて、何だか自分の家じゃない気がする。
「フィー」
入り口で呼ばれ、瑛士君を見る。使って貰ってる部屋に荷物を置いて戻って来たらしい。すごい。動けるんだ。
「どうしたの、もう寝る?」
「いや……旅の間に出来なかった事、やらせて貰おうと思ったんだけど……疲れてそうだからフィーこそもう寝るか?」
その言葉に心臓が跳ねて、閉じかかっていた瞼が勝手に開いた。それはその、あれって事ですよね? 帰りの旅、宿屋はもちろん同室だったけれど軽いキスくらいで、一緒に寝るとかはなかった。だから……と鼻息荒く思ったのだが。
「眠たかったら寝ていいぞ。勝手にしとくから」
二人してベッドに上がり、瑛士君が壁を背にして座った脚の間に座る俺。眠気を誘うように揺りかごみたいにゆらゆら揺らされているが、生憎と脳だけはバチバチに覚醒している。
ーー完全いやらしい事すると思ってました。
眠いのではなく、一人で勝手に盛り上がって勘違いをしたのが痛くて俯いているだけだ。
「あったか……フィー体温高けーよな」
「あーうん。今ちょっと暑いから」
「……何だ、結構元気じゃん。じゃあもっと凭れ掛かって来いって。やっと二人きりなんだし」
おお? 振り返ったら、すかさず額にキスされた。胸回りにグルっと腕を回されて、ギュッと抱かれる。
「……いいの? チューして」
「え、いっぱいして欲しい」
願望そのままに口にすると、かぷっと音がしそうな勢いで口づけられた。閉じる暇さえなかった半開きの唇を割って、舌が滑り込んで来る。上顎を撫でられてゾクッと背が震えた。
「……ん、っん、」
舌同士がぬるぬる絡みながら、忙しなく中を弄られる。熱い息を吹き込まれて、身体が熱くなった。全然呼吸が上手く出来なくて、変な声が出ながらじわっと涙が溜まる。これ溶ける。
閉じてなきゃいけない瞼が勝手に緩んで、薄目に瑛士君の近すぎる顔が見えたらもうヤバかった。睫毛の先まで綺麗で、角度を変える度に鼻が顔を擽って、隙間なくくっついて。薄め同士で目が合っちゃったら謎に疚しくて心臓止まりそうだった。咎めるように舌を吸われながら口が離れてく。
ギュッと頭を抱え込まれて、こめかみに頰擦りされた。
「はー。かわいい、」
ぐたーとなった弛緩した身体を全面的に瑛士君に支えられ、ぬいぐるみになった気分を味わう。唇が痺れたままで舌がじんじんする。水音がまだ耳にこびり付いてる気さえした。
「……重い。ごめん」
「重くない。このままが良い」
瑛士君の立てた片膝と腕に支えられてなきゃ既にベッドに潰れている。崩れた体勢を少しは何とかしようと手をつこうとしたのだが、瑛士君とくっつき過ぎててどこにも置き場がない。どこ触っても瑛士君に当たって、手が彷徨った。え、何もない所がない。
仕方なく自分が座ってる真下、尻の下に手を突っ込んで体勢整えようとして、俺は最も良くない所を選んでしまったらしい。瑛士君の脚の間に嵌まり込んでいるのだから、大胆にも股間に手を突っ込んでいるようなものだ。入れてから気づいた。
「ふぁっ!」
自爆としか言いようがない。密着してるゆえに熱が籠もってる場所ってだけなのだが、めちゃくちゃ熱くてびっくりした。
「いや、こっちもびっくりなんだけど」
「ご、ごめん……!」
突然妙な所を弄られた瑛士君が笑っている。本当ごめん。恥ずかしくて死にそうだ。空気ぶち壊した気がして怖かったけれど、瑛士君はご機嫌に俺の頭に頬をすりすりしてるから大丈夫……なのかな。
「あー……どうしよ、可愛くて何も出来ね……」
「えっ」
「するけど。したいし」
支えてない方の手がお腹を撫でる。捲れ上がってる服の端っこに指が入っててビクッと肩が揺れた。するする撫でられると、身体を縮めたくなる。
「フィー、顔貸して」
向けると唇も頬もぴったりくっついた。あぁ、手が……手が……腰のラインまで滑りながら、微妙な所を掠めていくのがもどかしい。キスしながら、いつ触れられるのか緊張高まり過ぎて腰が引けそうになるのを耐える。
「――んっ、」
指先が触れた。そこに神経集中し過ぎてて過剰に反応してしまう。触れて一瞬止まった指が、形を辿るように下りて掌がしっかりと当たる。服越しにも半勃ちのそこが瑛士君の手の中に収まっていると思うと、余計に血が集まっていく気がした。
撫でられてるのか揉まれてるのか微妙な手つきに耐えられなくて、キスから逃がれて顎を引いてしまう。息が上がって頭がくらくらした。瑛士君の胸も俺と同じくらい小刻みに動いててちょっと安心する。ものすごく気になるけれど下を見てしまうのは心臓に悪いんだろうな。
「あ、」
指が服の内側に入ってきそうで、思わず声が出た。
「いや?」
「嫌じゃない。ごめん」
「なに謝ってんの」
「や、俺いっぱいいっぱいで」
「それは俺も」
絶対嘘だ。つい疑いの眼差しを向けると瑛士君が苦笑する。
「がっつきすぎだし。フィーこの体勢きついかなとか、どうやったら自然な流れで体勢変えれんのかとか、気持ち良いかとか、くそ可愛いなとか。頭ん中グチャってるけど、余裕そう?」
うんうん頷くと、良かったって笑う。いや、なんかもう無理。今ぶわーって脳からホルモンが一気に分泌された気がする。はー無理、好き。少し照れ臭そうな所も含めて好き過ぎる。ぽわんぽわんとしてる間に、ベッドに寝かしつけられてて、ズボンの中にはっきり手の感触がして我に返った。なんだこれ魔法か。
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