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儚く弱い者の過度な貰い物
しおりを挟むぼくは平和な森で細々と暮らすノラという悪魔だ。獣に混じって草花や木の実を主食にしてひっそりこっそり穏やかに生きている。その辺の獣たちにすら侮られている気配はあるけれど、それでも正真正銘、悪魔なのである。
「見て、ディア。羽! ぼく、すごく悪魔だよ!」
「お前さぁ、それ本気で恥ずかしいから隠しとけって。ものすごく良く言ってもトカゲの足だぞ」
「あっダメダメ。まっさらな心で見なきゃ。羽は本来こういうものだとか考えちゃうからダメなんだよ」
最近生えたばかりの羽を存分にアピールするため、半裸で仁王立ちするぼくを真っ黒な悪魔が胡乱げに見てくる。色んな種族が中途半端に混ざった雑種のぼくに、今まで欠片も持ち得なかった羽なんてものが新しく生えてきたのはぼくよりずっとずっと高位の悪魔、ディアが魔力を分け与えてくれたからに他ならない。一度としてぼくから頼んだ覚えはないとしてもだ。
とはいえ、ちょっと調子に乗りすぎたかも、とディアの気まぐれ次第でいつでも簡単に消し飛びそうな自分の命を案じてみたものの、目の前の悪魔はその美しさに似つかわしくない渋い顔を浮かべ、出来るだけぼくから目を逸らそうと試みている様子だった。どうやら怒りより憐れみが勝ったらしい……いやいや、待って。さすがにそんな見ていられないみたいな反応は失礼じゃないかな。
「お前は自分じゃ見えないから平気なんだよ。ノラが想像してる姿とはだいぶ差があると思うぞ」
逸らされた視界の先に映り込むようにさり気なく移動を繰り返していたらディアにしては珍しく言い辛そうに言われた。確かにこの森に鏡なんて物はないし自分の目では確かめようもないが、背中のむずむずや触れた手の感触で、まだまだ未熟な生えかけの羽だって事くらいは分かっている。
「まだ赤ちゃんみたいなもんでしょ? そりゃ今はちょっと不格好かもしんないけど大丈夫だよ」
「お前のその前向きさってマジどっから来てんの? んじゃ一回ハッキリ言わせて貰うけど、ノラの背中にあんの誰がどう見てもチンコだから」
「……うん? なんて?」
「チンコだよ、チンコ。詳しく言うなら子どもチンコだな。何で薄ピンクなんだよ、淫魔の羽って大概黒いだろ、使い込んだら赤黒くなんのか? アホらし、なる訳ねーよな。お前のはずっとそんままだろ――」
「待って! これ以上はやめてあげて」
酷い。一回だけって言ったのに一回どころか何回も言った。よほど溜め込んでいたのか、怒涛の勢いで一気に捲し立てるディアにぼくは泣きながら抱きついた。ぼくの羽があまりに可哀想で。
めそめそ泣いているぼくの肩をしばらく宥めるように叩いていたディアはふと手を止めて、自分が着ていた豪華なマントをそっとぼくに被せてくれた。ディアみたいな冷酷非情な悪魔さえ優しくさせてしまうぼくの羽って……と考えるとまた涙が浮かんできたけれど、肌に触れるマントの質感があまりに心地よくてディアを見上げる。
「……ディアこんなの着てたっけ? あれ? よく見たら何かいつもと違うかも」
あんまり使ってないようならしばらく借りようかと思ったけれど、よくよくディアを見てみたら違和感があった。普段から質の良さげな服を着ているディアだが、今日はいつにも増して小綺麗な格好をしている事にようやく気づいて首を傾げる。
「しばらく家帰ってたからな。つかお前、服どこで脱いできたんだ。俺が来た時もう脱いでたろ」
「寝床かな。背中がむずむずして起きたら脱いじゃってた。ちょっと取ってくる」
「いや丁度良い。あっちに新しいやつ持ってきたんだ、このまま着てみろよ」
ディアに促され素直について行く。従順な態度は新しい服に興味があるという訳では全然なく、いつから半裸だったかを追求されると非常に困るからだ。羽に興奮してしまい少なくとも三日は上着を着た覚えがない。やたらとぼくに服を着せたがるこの悪魔にバレるととても厄介なのだ。このまま有耶無耶になってくれると良いな……。
しかし隠し事なんてぼくには向いてなかったようだ。そっちにばかり気を取られていたせいで、今現在大変な事になっている。恐ろしい虫悪魔の背の上でディアに抱えられ、遠ざかっていく地面に向かってぼくは叫ぶ。
「ディアぁぁ降ろしてー」
「まぁまぁ……ノラも自分の背中がどうなってるか気になるだろ?」
とろとろの、これまたとても肌触り良いシャツを着せられ、あれよあれよという間に気づけばこんな事態に陥っていた。我ながら阿呆だと思う。しかし阿呆なりに、ディアが上手いこと言いくるめてしまおうと企んでいる事くらいは気づいている。
そう、気づいた上で。ぼくはディアの話に乗った。だってちょっと見てみたい。誰にも認めて貰えないかもしれないぼくの羽を、ぼく位は認めてあげたいじゃないか。
そうして人生で二度目の空の旅が始まった。
「それで、どこ行くの?」
「俺の家」
ディアの家。そういえば、ぼくはこの大層ご立派な悪魔がどこからやって来たのか聞いた事がない。ぼくのような力の弱い悪魔を端の方に追いやって、強い悪魔達は競ってより魔界の中心部に居を構えたがる傾向にある。とすると、今まで見てきた中で一番強そうなディアが住む場所といえば確実に好戦的な悪魔の多い危険地帯に違いない。
「家だけだよね。寄り道したらダメだよ。ぼくが居る所で喧嘩もしないでね。あと……あとは……」
「はいはい。心配しなくても真っ直ぐ家に行って帰るだけだって。あ、ついでに面白いもん見せてやるよ」
「……それって、動く系じゃないよね?」
「あーお前まだ根に持ってんの? 違う違う」
じゃあ何って聞けば軽く笑って受け流される。途轍もなく怪しい。ついこの間もディアが「面白いもん」だと笑顔で差し出して来た袋の中を恐る恐る覗いた瞬間、食肉植物に頭を丸ごとパクリとやられたばかりだった。ディアも予想外だったのか慌てて助けてはくれたものの、口から鼻から生臭い粘液を滴らせる可哀想なぼくを千切れた触手でぐるぐる巻きにして運び、ぽいっと水場に投げ込みやがってくれたのは全くもっていただけない。完全に汚物扱いである。しかも「獲物を弱らせてから捕食する植物なのに……」と心底不思議そうに呟くからまた腹が立つ。食肉植物にすら弱らせるまでもないと判断されたぼくは、洗っても洗っても取れない生臭さに獣達にも遠巻きにされ孤独な一週間を過ごしたのだ。そりゃ根に持ちたくもなるだろう。
「もう謝っただろ? 触手とじゃれ合わせる予定だったのに、本気で食われる悪魔が居ると思わなかったんだよ」
「ううーとにかく! ディア基準で考えた面白いものなんてもう金輪際信用しないから!」
「まぁまぁ。お前が好きそうな樹の蜜もあるぞ。天族からもぎ取った羽で作ったペンとか。ノラが見た事なさそうなもん色々集めといたから」
背中越しのディアの声は弾んでいるけれど、もぎ取ったという物騒な単語が聞き逃せず、かといって詳細を尋ねるのも恐ろしくてぼくは賢く沈黙する。ご機嫌なディアが勝手に抱き込んだヒトの頭を嗅いで「うわ、まだ生臭せーな」なんて言っていたけれど、ぼくは後頭部をディアにグリグリ押し付ける事で無言のまま鬱憤を晴らしたのだった。
そして今、ぼくは恐らく生死の境に居る。
右も左も……というかもうどこ見たって凶悪な悪魔しか居ないという危険極まりない廊下をディアの腰にしがみつきながら必死に足を動かしている。ディアの足が無駄に長いせいで半ば宙に浮いてしまってはいるものの、ぼくの姿は上手くマントに隠れられているんじゃないだろうか。隙間からチラ見する限り、おっかない悪魔達は今のところ皆ぼくに無関心だ。
「おい、ノラ。本気で鬱陶しい。そんな怖えーなら抱えて運んでやるって言ってんだろ」
「うぁぁもう! 黙って! 目立つから!」
こっちはひたすら空気に徹しているというのに非協力的なディアのせいで通りすがりの骸骨と目が合ってしまった……ような気がする。目がないので憶測だが一瞬ぞわっとしたから絶対絶対見られたと思う。
やばい。歩く骸骨に初めて会ってしまった。骨というと弱っちく聞こえるが体格が良いうえに、突き出た口には鋭利な牙がズラリと並ぶ殺傷能力の高そうな頭部をしていらっしゃるのだ。恐ろしさは食肉植物の比ではない。他にもぬるっとした体表に人間っぽい苦悶の表情がボコボコと浮かんでいたり、手足どころか頭や半身の数が多かったりと実に多種多様だ。
「……ねぇ。ここがディアの家なら、その辺に居る悪魔達ってディアの身内とか親族か何かなのかな?」
「んな訳ねーだろ。堂々と歩いてんだから、ここで働いてる奴らなんじゃねーの。知らんけど」
「え、あぁそっか……うん、そうだよね。ちっとも似てないし」
もごもごと呟く。魔界はとても自由だから誰とも知らない奴が闊歩する家があってもおかしくないのかもしれない。正直、違和感はある。ここへ降り立つ前から。ディアが家だと指差したのは山のようにそびえ立つ、おどろおどろしい建物だった。これって所謂あれじゃない? 魔界一有名な観光名所のあれでは? それを言葉にして確かめてしまうと諸々面倒そうなのでぼくは現在深く考える事を放棄している。
元々魔素の濃い土地だからか、中を闊歩する上級悪魔たちから漏れ出ているのか、魔力をふんだんに含んだ空気は重くて濃い。緊張と息苦しさでフラフラになりながら歩き、ディアの自室に着くまでは生きた心地がしなかった。到着した時の解放感といったら……。
「ぬああぁぁ」
初めて訪れた他人の部屋だろうがこの際どうでも良くて、ぼくは迷わずベッドへと勢いよくダイブした。思わず自分の声とは思えない音が出てしまったせいか、沼の主の鳴き声に激似だとディアは笑い転げている。
「ノラ、喉渇いただろ? 何か持ってきてやるよ」
「いいの? 欲しい欲しい!」
珍しくも普通に気の利いた事を言うと思えば、何やらディアは所用があるとかでニヤニヤしながら部屋を出て行ってしまった。またしてもぼくは置き去りにされた訳だが、今回ディアは出て行く前に置き土産を残していってくれた。可愛い子鬼のジン君だ。ディアの小間使いをやっているらしい。
ぼくよりずっと年下の子鬼君はまだ身体もぼくより小さく、安心感を誘うぽやぽやとした笑みを浮かべる可愛い子だった。額にある柔らかそうな生えたての角がお揃いっぽくて親近感が沸くけれど、これが大人になれば硬く鋭い凶器に変貌を遂げてしまうのだから時というのは実に残酷だ。
「ここで働きだしてから初めてのお客様でドキドキですが、何でも言ってくださいね」
まだ子鬼とはいえ強い血統だろう。本来なら雑種のぼくなんて馬鹿にされても仕方ない存在なのだが懇切丁寧にお客様扱いしてくれる。あのディアのすぐ傍で働いているのが心配になるレベルの良い子だった。
「ね、子鬼君はディアに酷い事されたりしてない?」
つい気になって本人が居ないうちにと声を顰めて聞いてみた。もし何かされていても、ぼくに出来る事なんて数少ないが地味めな嫌がらせ位はしてあげられると思う。
「いえ……特には何も」
「あっ嘘だ。今、間があったもん」
「いや本当ですよ? ただ、ディア様はほとんどこちらにはお出でにならないので」
自分の家だというのにディアが不在がちなので、ここで関わる事も少ないのだと子鬼君は至極残念そうに言った。いやいやそれはとても良い事だよ! と全力で訴えたい所なのだが、空気が読めるぼくは何となくそれは言ってはいけない気がして口を閉ざす。
「ディア様はすごい人なんです。不在なのは外の荒事を自ら率先して片付けに行かれているからで、先日もそうだったんです! 突然フラッと居なくなられたかと思えばボロボロの血塗れで帰って来られて、だけどその時に持ち帰った物がまさかあんな――」
というか、口を挟む隙さえなかった。どうやらぼくは子鬼君の押してはいけないスイッチを押してしまったようで、控えめだった語り口は徐々に熱が入り、聞き取るのも難しい位の早口になっていく。圧倒されて既に瞼を瞬かせる事しか出来ないけれど、不意打ちで「ね?」と相槌を求めてくる子鬼君の目が怖くて必死に頷き続けた。
「ジン、これ奥まで運んで」
その地獄のような時間は重低音を響かせてディアが戻って来るまで続いた。声が聞こえた途端、憑き物が落ちたようにパッと笑顔になった子鬼君はディアに駆け寄り、部屋まで持ち込んだ大きな鏡を小さな身体でよいせよいせと懸命に運んでいる。あれはきっとぼくに用意してくれたものだろう。
「それ絶対重いよね、ぼくも手伝う」
「放っとけ。どうせノラじゃビクともしねーよ。それよりほら、飲み物持って来てやったぞ」
「ありがと……えっ何これ! シュワシュワしてる!」
渡された透明のグラスには薄橙色のプツプツと気泡が湧く不思議な液体が入っていた。手の中でグラスを揺らすと気泡も激しく揺れ動き、爽やかな果実の匂いが鼻を擽ってくる。恐る恐る口をつければ、舌の上で気泡が弾けるプチプチした刺激の後に果実の香りと甘みがふわっと広がった。
「うわぁぁ信じられないくらい美味しいんだけど!」
「だろ? 絶対好きだと思った」
どこかに気泡の湧き出る泉があるらしく、その水に果実と蜂蜜を混ぜたのだとディアが得意気に説明してくれた。魔界にはまだぼくの知らない美味しい物がたくさんあるようだ。精神的にかなり疲弊したが、この飲み物だけでディアについて来た価値はあったと思う。
「後でもっと美味いもん食わせてやるよ」
行く途中で言っていた樹の蜜を柔らかなパンに掛けて食べるととても美味しいらしい。ディアが言ったら持って来るようにと子鬼君に指示を出していた。至れり尽くせりなのは嬉しいものの、何か裏があるように思えてしまうのは相手がディアだからだろうか。訝しむぼくの視線に気づいたディアはとぼけた顔で何かを否定するように緩く首を横に振った。
「それよりノラ、羽が見たかったんだろ。動かせる中で一番でかい鏡持って来てやったんだ、使えよ」
「ありがたいけどこんなに大きい必要ある? 重いのにごめんね、子鬼君」
ぼくの身長の二倍はありそうな大きな鏡だ。金や宝石を散りばめた凝った細工で更に重さを増しているように見えるが、体躯を超える大きさには苦労しつつも子鬼君は引き摺る事なく抱えて運んできた。意外と重くないのかなーなんて、その様子を飲み物に感動しながら横目に見ていたのだが目の前で鏡を見ればやはりとんでもなく重そうだ。
「いえいえ、お役に立てるのが嬉しいので」
さっきまでの姿が嘘みたいにぽやぽやと笑い、子鬼君は行儀よく頭を下げて部屋の隅っこに移動して行く。小さくて可愛くったって鬼は鬼。怒らせないように気をつけよう。それより今は自分の羽だ。いそいそと上着を脱ぐぼくの横でディアは既に口許を手で覆ってこちらから目を逸らしているが、気にするだけ時間の無駄だ。
「――っえ? え、なにこれ。えっ待って、え?」
「っぶ!」
「ぷよぷよ? ぷるぷる? 大丈夫? これ羽になる?」
「っやめろ、ノラ揺らすな。腹痛ぇ、死ぬ」
鏡に映った自分の背中を角度を変えては何度も確かめるけれど、そこにあるのは薄桃色のナニカだった。大きさとしては多分ぼくの足の親指くらいだろうか。水分を蓄えてぷくりと膨らんでいる姿はよく言えば果実が実っているようにも見える。悪く言えば性器……に見えてしまうのは先にディアがそう言ったからだと思いたい。
昨日まで羽をパタパタするにはこうするのかなーなんて、ワクワクしながら背中の真ん中に力を入れたりしてみたりしていたのだけれど、鏡の中では小ぶりな性器がぶらぶらと揺れている。全然違う。そうじゃない。現実を受け入れられず涙目になるぼくの隣で、一周回って面白くなってきたと容赦なく笑うディアは本当に悪魔だ。
「……やだ、これ。要らない、ねぇ取って。取ってよ」
「大事な羽だろ。つか無理。面白過ぎる」
「お願いだよーディアぁぁ」
両腕を掴んで必死に揺さぶるぼくを半笑いのディアが雑に宥めてくる。ぼくは本当の本当にどんな羽だって愛そうと思っていたのだ。そもそも空を羽ばたけるような立派な羽なんてぼくに生えてくる訳がないし、さぞかし不格好で歪な物だろうと……それでもどことなーく羽っぽさはあるって信じていたのに。
「なぁ、まだこれから育つんだろ? それに見慣れたら……まぁ……そんなに悪くない気がしてきたぞ」
ディアが腕の中に居るぼくを覗き込むようにして言う。さっきから立ったまま相手するのが面倒になったのか、寝台に転がされている。抱きしめられているのも単にうざったいぼくの動きを効率的に封じる為なのだが、めそめそしつつも一縷の望みをかけてディアをそっと見上げた。
「ほんとに? 羽に見える?」
「いや、全然見えないけど」
「…………」
「背中なんて自分じゃ見えねーんだし、俺が気になんなかったらそれで良くね?」
確かに、普段森で生活する分には何も困らないだろう。どんなに見栄えが悪かったとて見るのは獣たちしか居ない。それならまぁ良いのか?
「取るにしてもこれ神経の塊みてーなもんだろ」
「い、いたた! 引っ張らないで」
耐性が出来てきたのか羽もどきに触れる事にまるで躊躇がない。物珍しそうに揉んだりつついたりと完全に玩具にされている。その度にまだ皮膚が薄いせいで剥き出しの神経に触れられるようなビリビリとした嫌な感触が襲ってきていたのだが、ディアが段々と妙な触り方をし始めてからおかしくなってきた。
ふよふよと弱い力で乳搾りのような動きをされると、何故か関係ないはずの乳首が内側から糸で引っ張られているみたいに感じてしまう。
「う、うぅぅん……むぅ」
これは何ともむず痒い。もぞもぞと肩や足先を動かして堪えてみるが、それでも足りずに腰まで揺れる。気づかず止めてしまっていた息を吐き出すと何だかとても熱かった。
「お、勃ってんの? 気持ち良いのか、これ」
「分かんない……けど、何かすごい熱い」
「ほんと訳分かんねーもん生やすよな、お前」
ディアが楽しそうに言いながら半勃ちしたぼくの陰茎を脚で撫でる。別に望んで生やした訳じゃないし! と抗議しているはずの言葉は自分の鼻息に邪魔されて我ながら何言ってるかよく分からなかった。
「ノラ、膝立てろよ」
「んんー」
徐ろにぼくをうつ伏せにしてディアが背後に乗り上がって来たので、仕方なく腰を浮かせて膝を立てる。そうしないと自重で陰茎が圧迫されて痛いのだ。それにやっぱり触れられるのが気持ち良いのだろう。このぬるま湯みたいな快楽にもう少し浸かっていたかった。
どうするつもりなのかと思っていたら、履いていたズボンをつるっと剥かれ、腰を抱くようにディアの片手が陰茎を握る。そしてもう片方は乳首へ。直接的な刺激に反射的に背を撓らせれば、未熟な羽に火傷するような熱さが襲ってきた。
「っあ、なに、あ、やだっ」
「暴れんなって。直に魔力取り込めばもっと育つだろうし、気持ち良いなら嫌がる理由ないだろ」
「ひあっ、熱っ」
口内に丸ごと咥えられて飴玉みたく転がされて。この暴力的な熱が魔力なのかディアの体温なのかすらもう何が何だか分からない。ぬるま湯どころか熱湯だ。死にかけの虫並みに暴れ狂うぼくをディアがぎゅうぎゅうと尚更締めつけるから、元々あってないようなぼくの体力は直ぐに底をついた。ディアの指がいつの間にかぼくの後孔に埋められている事すら気づけなかったくらいに。
そう、ディアが羽からようやく顔を離してくれた時に、あれ? 何か尻がおかしいぞってかなり遅れて気づいたのだ。我ながら随分と情けない話だけれど。
「よしよし、良い感じ。ノラ、そのままじっとしてろよ? 良いもんやるから」
そのままも何も、そもそも全く動ける気がしない。ぼくはぐでっとディアに身を預けていた。しかしこのディアが「良いもん」とか「面白いもん」とか言うものが大抵ぼくにとって全く良くも面白くもないものなんだと、何故に一瞬でも忘れていたのだろう。
「――っ、ディア様?! それはっ……」
悲鳴のような切羽詰まった子鬼君の声がして、ちょっとびっくりした。いつの間に居たのだろう? いやずっと居たのか。気配を上手く消してくれていたのだろうに何故今ここで耐えきれなくなったみたいに声を上げたのか……。
そこまで考えてぶわわっと鳥肌が立つ。そんなの背後でゴソゴソやっているディアがまた何か碌でもない事をしているからに決まっているじゃないか。
「ディアなに、っえ? ちょっ、待っ」
狼狽えた声に被せてぼくの尻をがっちり固定したディアが後孔に狙いを定めて何かをぐいぐい押し付けてくる。それはこれまで経験した事のないようなグニュリとした気色悪い感触で、狭い通り道でも柔軟に形を変えながら難なく内側に潜り込んできた。頭の中には触手という文字が浮かんだけれど、つるっと丸ごと入ってしまったから違うのだろう。え、本当に入っちゃった? うわ……入ってる。
「ううー気持ち悪いぃぃ」
「大丈夫大丈夫。すぐ慣れるって」
「意味わかんないよ! 今すぐ出して、返す!」
「遠慮なく貰っとけよ。つか仕上げがまだだし」
ぼくの必死の訴えはいつものごとく華麗にスルーされ、ただでさえ気色悪い物を指で更に奥へ奥へと押し込めようと動く。これは絶対に放置しては駄目なやつだと思う。その証拠にチラリと見えた子鬼君の顔は青褪め、絶句している様子だった。それなのに、ぼくの身体は誤魔化すように気持ち良いポイントを擦られると快感ばかり拾ってしまうチョロい仕様なのだ。この身に流れる淫魔の血が憎い。
「ノラ、気持ち良いな?」
「気持ち、いっ、いい、いくない」
どっちだよってディアが笑う。得体のしれない物がぽこぽこと腹を刺激しながらぼくの内部に深く潜っていくのだ。気色悪さに粟立つ肌にディアが舌を這わせ、強張る背中でピクピクと勝手に羽が動くのをまた笑われた。
「とりあえずたっぷり魔力注いでやらねーと。ちゃんと残さず食えたらこれの正体教えてやるよ」
これ、と気持ち膨れた腹を擦られれば、何げにずっと勃ちっぱだった陰茎が期待するように涎を零す。火照る身体が分かりやすい快楽を、すぐ目の前にぶら下げられたディアの魔力を欲している。
「ディアー。ちゅーしてよぉ」
「はい、ちゅー。次こっち」
「ん、あっ入ってくる、ううっ」
ディアが唾液をくれればもう少しは落ち着くのに、ぼくの求めるでろんでろんのキスは貰えない。底意地の悪いディアは頬に一瞬だけ唇をつけて、さっさと勝手に挿入を始めてしまった。陰茎に追い立てられるように腹に居座る物体まで移動するから圧迫感はもれなく二倍だった。
「やっだ、破れるっ、しぬっ」
異物がもう指では取り出せないほど上に押し上がってくるのがはっきり分かる。進める所まで進んで行き止まったのか、動かなくなった異物を更にディアが押し潰すみたいに動くからぼくはパニックになった。恐怖だ。こうなってしまったら異物かぼくの腹かどちらかが破裂する未来しか見えない。
「ノラ、もうちょっとだから頑張れ。な?」
「ふ、無理ぃ……んあ、あっん」
気持ち良い方に集中しろとばかりにディアの指先は乳首や陰茎の先を絶えず刺激してくる。カリカリ引っ掻かれる度に頭の中でパチンと小さな白い光が飛び、ディアに抱えられたまま腰から下がガクンガクンと激しく揺れる。イキそ……いや今もうイった? 違う、まだイってる? 区切りがなくて判別なんて出来ないまま、途切れる事なく小さな光がパチパチ瞬く。その度にぼくの陰茎からは精子だか何だか分からない水っぽいものがピュッピュッと連続で噴き出していた。
「んんぅ、あ、ひぃあ、あっ」
「ああー痙攣すご。くっそ、あんま持たねーわ」
「いっ、んんん――っああ」
「あーもう、こいつマジで……こっちは我慢してんのにクソほど絞めやがって。このバカ、バーカ」
意味ある言葉を発せなくなったぼくに向かって、腰を打ち付けながら好き放題やっている癖に悪態をつくディア。悪魔とはいえ本気で性根が腐りきってしまっている。ぼくはというと、恐怖のせいか頭の一部だけが妙に冷静で、これ本当にこのまま死んじゃうんじゃないかなと思った。
……まぁそれはそれで良いかな。
自ら進んで死にたくはないけれど、いつかアホみたいな理由で死ぬんだろうなとは常々思っていたのだ。落ちてきた木の実が頭にぶつかったり、自然に出来た落とし穴に落ちちゃったり。平和な森の中にだって危険はそこかしこに潜んでいる。
ディアが絡めば尚更だ。先日の食肉植物だってそう。悪魔にとっての当たり前が通用しないほどぼくが弱い事をディアは全然分かっていない。分かろうとしないのではなく本当に分からないのだ。食肉植物からぼくを救出した時、ディアは純粋に困惑していた。今だって別にぼくを死なせる気は微塵もないのだろう。
そんなディアはちょっと後悔すれば良いのだ。そうしたら、親も分からず仲間とも逸れたぼくを、ディアだけはちょっとだけ記憶に残してくれるはずだ。それって何だか普通に居なくなるよりずっとずっと気分が良くないかな。あふあふ言いつつも、そんな他愛ない事を考えていた。
だから腹の中に凄まじい衝撃が走った時、本当の本当に死んだって思った。
「――――!」
内側を食い千切られた感覚が襲い、悲鳴が音にならないまま身体が落雷を受けたように大きく跳ねる。
「っしゃ! 通った! やったな、ノラ」
「ひぃあ、あ、や、めっ」
「待て待て。後は出しちまえば終わるから」
後悔するどころかめちゃくちゃ喜ばれている上に、追い打ちをかけるみたいに容赦なくドチュドチュと楽しげに奥を突かれる。比喩ではなくこっちは本気で昇天しかかっているというのに、身体が受ける刺激が強すぎてあと一歩が届かない。意識がふわっと浮きかける度にズブッと深く抉られて強制的に身体に戻される、そんな感覚だった。出して終わるなら一刻も早く出して欲しい。しかし食い込むほどに腰を掴まれて最奥に注がれる衝撃は朦朧とした意識のまま、やり過ごせる物ではなかった。
「い、んぃぃ、」
ボロカスになっている身体にディアの濃すぎる魔力は尋常でなく染みた。擦られて腫れた粘膜が餌に飛びつく勢いで魔力を取り込もうとするから、腹から手足の指先にまで急速に広がっていくディアの熱を体感させられている。
「――っ! あははっ……はは……やった」
ビクビクと痙攣の続くぼくの身体をディアがぎゅっと抱き込んだ。達成感を滲ませながらも覇気のない笑い声はどこか寂しく、何となく食肉植物からぼくを救い出した時のディアの顔を思い起こさせた。今もまたあんな顔を浮かべているのかもしれない。悪魔にあるまじき、強さとか誇りとかを全部削ぎ落とした子どもみたいな情けない姿だった。
「ノラ。ソーダも甘いパンも、いっぱい食っていいぞ。他にも色々あるんだ。楽しみにしとけ」
小さな声で次々に繰り出される、ぼくを誘惑する言葉を聞きながら抗いようのない眠りに落ちていく。落ちてもちゃんと目覚める事があるのかは分からないけれど、そんなご馳走が待っているのなら何としても起きたいものだ。そんでディアを力いっぱい殴ると心に決めて、ぼくはついに意識を手放した。
「――おかわり!」
口の中いっぱいに詰まった甘いパンを飲み物で流し込みながら、大きな声で言った。子鬼君がすぐに用意してくれるのでぼくの前にはまたキラキラと金色に輝く樹液を纏った美味しそうなパンが現れる。偉そうに子鬼君を顎で使っているようで申し訳ない気持ちはあるが、ぼくは子鬼君ではなく部屋の主に当然の要求をしているだけなのだ。
「もっと味わって食えよ。中々採れないって言ってたぞ、それ」
「味わってるし! 美味しいから食べられる時にあるだけ全部食べたいんだよ。ゆっくり食べるとお腹いっぱいになっちゃうでしょ」
ぼくが大好物の花は残念ながら一時期にしか咲かないので、その間に食べ尽くさないといけない。一つ一つ味わって食べていたら、お腹が膨れるより早く満腹を感じてしまう事をぼくは経験から知っている。それでは困るのだ。美味しい物は詰め込めるだけ詰め込みたいじゃないか。
「あーあ、腹裂けても知らねーからな」
「裂けても死なないんでしょ? じゃあ良いじゃん」
「死ななくても痛いのは痛いぞ」
「なにそれ、聞いてないんだけど!」
話しながら行儀悪く食べていたぼくの手が止まる。ディアを見れば、何を驚かれているのか分からないといった様子で当たり前のように答えられた。
「そりゃ痛いだろ、普通に。魂は繋ぎ止めてるし損傷も修復してくれるけど、それだけだ」
ぼくは絶句した。無意識にお腹を擦ると、自分とは別の鼓動を感じる気がするのはたぶん気のせいではない。
ディアはぼくに古竜の心臓なんて物を勝手に埋めてしまったらしい。尻に詰められたプニュプニュしたやつだ。たっぷり魔力を注がれてしっかり定着してしまっているので、もう簡単には取り出せないようだ。
心臓の一部、核という部分らしいが、悪魔がこれを取り込めば不死になるんだとディアは言う。宿主が例え肉片になっても時間をかければ元通りになると聞いた時は恐ろしくて涙目になったが、何があっても大丈夫っていうのは弱いぼくからすると心強いなぁと単純に思った。強い悪魔に怯えなくて済むのなら有り難いと。
「痛いなら話は別だよ! 治るまでずっと痛いじゃん」
「なら怪我しなきゃ良いだろ」
「あんまり怪我しなくなる効果ある?」
「ん? 身体の強度ならそのままだな」
つまり今までの弱いぼくと何ら変わりないじゃないか。死ぬほど痛くても死ねないというのはむしろ拷問かもしれない。
ディアの部屋に用意された小さな机から立ち上がる。貰う物を貰うまではと我慢していたが、どうにも気が収まらなくなってきたのだ。対面に座ってニヤつきながら食事風景を眺めていたディアに近づき、衝動のまま力いっぱい殴った。当然だ。ぼくの許可をとるべきだし、せめて先に説明くらいして欲しかった。無言でポカスカ殴るがディアはただただ笑っている。
「もう! 痛い! 装飾が刺さる!」
「はいはい。ここ出たら脱ぐから先に食っちまえよ」
ディアをどんなに殴ってもぼくが一方的に痛いだけなのだが、とりあえず席に戻って食べる事にした。その後、自分で動けないほど腹いっぱい食べたぼくはディアに抱えられて帰路につく事になってしまったのは誤算だったが、あれこれとお土産も貰って気分は良い。
「また来てくださいね!」と邪気のない笑顔を見せる子鬼君に、出来れば遠慮したいかな! と本音で返すにはお世話になり過ぎたので、機会があればなんて答えてしまった。次は泊まって行けるように準備しなきゃと俄然やる気を見せる子鬼君に頬が引き攣る。ぼくはまた……こんな恐ろしい魔窟に訪れる機会があってしまうのだろうか。敢えてディアの顔は見ないようにした。
そして問題は、ぼくの羽なのだけれど――
「見て、ディア! 成長したでしょ!」
「完全に俺のおかげだろ……ってか出すな出すな」
「進化だよねーふひひ」
気持ち悪い笑い方するなって頭を叩かれるが、本気で嬉しい時は誰だってこういう笑い方になるものだ。ご機嫌なぼくは気にしない。ぴこぴこ羽を振ってアピールする姿にディアは冷めきった視線を向けてくる。
「……なぁ、俺にはチンコが二本になったとしか思えないんだけど? ノラ、こないだ泣き叫んで嫌がってたのに増えて何がそんな嬉しいの」
非情な悪魔は酷い事を平気で言うから困ったものだ。寛容なぼくはゆっくり首を横に振って、理解のないディアにも親切に教えてあげた。
「二本の次は三本……四本って増えて、羽が完成するんだよ。その間に膜が張るの、ディア知らないの?」
ぼくのだから完全な形にはならないかもしれないけれど、これから成長するって希望が見えただけで十分幸せだった。命を落とす心配がなくなったのなら、未来に期待しても良いと思う。
「俺が魔力やらなきゃノラはずっとそのままじゃね? 背中に恥ずかしい物二本ぶら下げて強く生きて行け」
「えっ……くれないの? 嫌がってた時はくれてたのに?」
「あーどうしよっかなぁ」
意地悪く笑いながらどこかに行こうとするディアを反射的に掴まえて、身も世もなく縋った。こんな身体にしておいて今さら逃げるなんて酷い。必死に訴えるぼくにディアは盛大に噴き出して、平和な森に大きく笑い声が響いた。
気まぐれな強い悪魔に振り回される日々はまだ続きそうである。
.
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懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
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人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
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