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プロローグ
2人の作戦③
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こんにちは、皆さん。本日は私ルルーが語りたいと思います。
私達双子の望み。それは前世の神子として生きた人ならざるモノの人生よりも町娘として普通に働いて、ゆくゆくは夫や、子供達に囲まれた普通の人生を送る事。
ウェッジウッド国民の安らかな幸せよりも、私達が手の届く人達の幸せを護る事。
「ようこそ、お越し下さいました」
「ええ、こちらこそ、本日はよろしくお願いします」
私は、前世で身につけた淑女の礼をルイス様に向ける。それに少し驚いたような素振りを見せたルイス様だったが直ぐに柔らかく微笑んでペコリと頭を下げる。
今世では、ここまでの振る舞いをした事ないから少しマナーが古めかしかったり、ぎこちないのは許して欲しい。
そもそも私達はその昔、突然現れた神子、となっている。けれどそれは大きな間違い。私達はこの世界に突然連れて来られたのだ。
「バーバリーさん!こんにちは!ちゃんと眠れてないの?」
「あ、ああ…妻とサリーを見ていると怖くて…」
モルーはルイス様ガン無視で昨日よりやつれた様に見えるバーバリーさんな駆け寄って行く。本当に、我が妹は昔身につけたマナーをどこで落としてきたのか。
「それでは、早速今日の事について説明したいと思います。…皆さん宜しいですか?」
私がそう言えばルイス様の表情は一瞬で真剣になりコクリと頷く。
「よろしくお願いします」
バーバリーさんは、待ってましたと言わんばかりにモルーに縋りついた。
「サリーをゆりーを助けてくれ!!」
「大丈夫。バーバリーさん!サリーとおばさんは必ず私達が元に戻すから。もう少し待ってて」
可哀想で見ていられないほどの姿に心が痛む。何としても意識を回復させる方法を見つけないと。
モルーと目が合えばお互いに気持ちを確認し合う。
「それでルルーさん、本当に結界を領土全体に広げたんですね。体調は大丈夫なのですか?」
ルイス様は、心配そうに私の顔を覗き込んだ。やっぱり思った通りでルイス様には妖精魔法の気配を感じる事は出来ても、残像は見えはいらしい。突然といえば当然だけど。
それもその筈で妖精の魔力は虹色に輝いていて神子が使う魔力は目で視るモノではなく気配で感じるモノ。
もしかしたらこの先ずっとルイス様の側で魔術を使うならその内にバレてしまうかも知れないが、それでもそれは容易いモノじゃない。
「はい。ご心配には及びません。この通り全く問題無いです」
ニコリと微笑めば、確かに顔色も良いみたいで良かったです、と安堵するルイス様は同時に驚いた表情で私を見る。
「流石に、これだけの結界を張ってなんとも無いのは…少し怖いぐらいですね」
ルイス様の呟きに私はふふふ、とただ笑って答えた。
私よりも明らかに顔色が悪いにも関わらず空元気を続けるモルーには気付かない程に鈍感なルイス様には一生神子の魔力を気取られる事はないのかも知れない。
「結界の、中はほぼ私のテリトリー内です。まず今日はサリー、ユリーさん以外に同じ症状と見られる方を6人確認しました。この人達を一箇所に集めて安全な場所で、保護します」
「6人…ルルーさん、モルーさん、もし保護場所が決まってなければ私の屋敷を使いませんか?私の所ならおいそれと不信人物は近づけません」
ルイス様の提案は私達にとっても有難かった。元よりそのつもりで今から頼む予定だった。
「ありがとうございます。ルイス様、宜しくお願いします」
モルーが礼儀正しく淑女の礼をルイス様にする。どっかに落っことして来たかと思った貴族のマナー、モルーは忘れては居なかった見たい。なんだ、ただルイス様が昨日の件で気に食わなかっただけか。
ホッと一安心する自分にいや、ダメだろ。と、一人で自分に突っ込んでおく。
「バーバリーさんには協力して欲しいことがあるの」
モルーはずっと自分にしがみついたままのバーバリーさんをしっかりと見た。
「サリーと、おばさんを囮にさせて欲しい」
モルーは言いにくそうにでもハッキリとバーバリーさん言う。バーバリーさんは完全に固まってしまった。確かに囮と言えば囮だけどもっと他に良い言い方だって有ったのに。モルーは本当に一直線なんだから。
「バーバリーさん、2人は私達にとっても大切な人なの。絶対守るから…協力して下さい」
固まるバーバリーさんにはモルーはゆっくりと静かに、だけどそこには痛い程の気持ちが伝わって来る。少しの間放心状態のバーバリーさんだったがやがてゆっくりと顔付きが変わっていく。
「モルー、ルルー。ありがとう。俺は、俺たち家族は2人がこんな小さい頃からお前達を見てきた。だからこそ俺は2人に助けを求めたんだ。みっともない所を見せちまったな。…喜んで協力するさ」
優しく微笑んでくれるバーバリーさんは確かに数日間でやつれてしまったけれど、今のバーバリーさんはいつもの頼りになる私達の大好きなバーバリーさんだった。
「ありがとう!バーバリーさん!!必ず2人を助けようね!!」
モルーは、泣きそうな顔をしながらバーバリーさんに抱きついた。バーバリーさんはそれを力強く受け止めてモルーを慰める。
「ははは。参ったな。俺以上に具合悪そうな顔で元気そうに振舞って…。モルー、ルルー。ありがとう」
バーバリーさんの方に顔を埋めて居てモルーの表情は見えないけど、恐らく情けない顔をしているモルーの頭をバーバリーさんは優しく撫でた。
いいえ、バーバリーさん。御礼を言いたいのは私の方です。だからバーバリーさん達は必ず私達が助けます。
私達双子の望み。それは前世の神子として生きた人ならざるモノの人生よりも町娘として普通に働いて、ゆくゆくは夫や、子供達に囲まれた普通の人生を送る事。
ウェッジウッド国民の安らかな幸せよりも、私達が手の届く人達の幸せを護る事。
「ようこそ、お越し下さいました」
「ええ、こちらこそ、本日はよろしくお願いします」
私は、前世で身につけた淑女の礼をルイス様に向ける。それに少し驚いたような素振りを見せたルイス様だったが直ぐに柔らかく微笑んでペコリと頭を下げる。
今世では、ここまでの振る舞いをした事ないから少しマナーが古めかしかったり、ぎこちないのは許して欲しい。
そもそも私達はその昔、突然現れた神子、となっている。けれどそれは大きな間違い。私達はこの世界に突然連れて来られたのだ。
「バーバリーさん!こんにちは!ちゃんと眠れてないの?」
「あ、ああ…妻とサリーを見ていると怖くて…」
モルーはルイス様ガン無視で昨日よりやつれた様に見えるバーバリーさんな駆け寄って行く。本当に、我が妹は昔身につけたマナーをどこで落としてきたのか。
「それでは、早速今日の事について説明したいと思います。…皆さん宜しいですか?」
私がそう言えばルイス様の表情は一瞬で真剣になりコクリと頷く。
「よろしくお願いします」
バーバリーさんは、待ってましたと言わんばかりにモルーに縋りついた。
「サリーをゆりーを助けてくれ!!」
「大丈夫。バーバリーさん!サリーとおばさんは必ず私達が元に戻すから。もう少し待ってて」
可哀想で見ていられないほどの姿に心が痛む。何としても意識を回復させる方法を見つけないと。
モルーと目が合えばお互いに気持ちを確認し合う。
「それでルルーさん、本当に結界を領土全体に広げたんですね。体調は大丈夫なのですか?」
ルイス様は、心配そうに私の顔を覗き込んだ。やっぱり思った通りでルイス様には妖精魔法の気配を感じる事は出来ても、残像は見えはいらしい。突然といえば当然だけど。
それもその筈で妖精の魔力は虹色に輝いていて神子が使う魔力は目で視るモノではなく気配で感じるモノ。
もしかしたらこの先ずっとルイス様の側で魔術を使うならその内にバレてしまうかも知れないが、それでもそれは容易いモノじゃない。
「はい。ご心配には及びません。この通り全く問題無いです」
ニコリと微笑めば、確かに顔色も良いみたいで良かったです、と安堵するルイス様は同時に驚いた表情で私を見る。
「流石に、これだけの結界を張ってなんとも無いのは…少し怖いぐらいですね」
ルイス様の呟きに私はふふふ、とただ笑って答えた。
私よりも明らかに顔色が悪いにも関わらず空元気を続けるモルーには気付かない程に鈍感なルイス様には一生神子の魔力を気取られる事はないのかも知れない。
「結界の、中はほぼ私のテリトリー内です。まず今日はサリー、ユリーさん以外に同じ症状と見られる方を6人確認しました。この人達を一箇所に集めて安全な場所で、保護します」
「6人…ルルーさん、モルーさん、もし保護場所が決まってなければ私の屋敷を使いませんか?私の所ならおいそれと不信人物は近づけません」
ルイス様の提案は私達にとっても有難かった。元よりそのつもりで今から頼む予定だった。
「ありがとうございます。ルイス様、宜しくお願いします」
モルーが礼儀正しく淑女の礼をルイス様にする。どっかに落っことして来たかと思った貴族のマナー、モルーは忘れては居なかった見たい。なんだ、ただルイス様が昨日の件で気に食わなかっただけか。
ホッと一安心する自分にいや、ダメだろ。と、一人で自分に突っ込んでおく。
「バーバリーさんには協力して欲しいことがあるの」
モルーはずっと自分にしがみついたままのバーバリーさんをしっかりと見た。
「サリーと、おばさんを囮にさせて欲しい」
モルーは言いにくそうにでもハッキリとバーバリーさん言う。バーバリーさんは完全に固まってしまった。確かに囮と言えば囮だけどもっと他に良い言い方だって有ったのに。モルーは本当に一直線なんだから。
「バーバリーさん、2人は私達にとっても大切な人なの。絶対守るから…協力して下さい」
固まるバーバリーさんにはモルーはゆっくりと静かに、だけどそこには痛い程の気持ちが伝わって来る。少しの間放心状態のバーバリーさんだったがやがてゆっくりと顔付きが変わっていく。
「モルー、ルルー。ありがとう。俺は、俺たち家族は2人がこんな小さい頃からお前達を見てきた。だからこそ俺は2人に助けを求めたんだ。みっともない所を見せちまったな。…喜んで協力するさ」
優しく微笑んでくれるバーバリーさんは確かに数日間でやつれてしまったけれど、今のバーバリーさんはいつもの頼りになる私達の大好きなバーバリーさんだった。
「ありがとう!バーバリーさん!!必ず2人を助けようね!!」
モルーは、泣きそうな顔をしながらバーバリーさんに抱きついた。バーバリーさんはそれを力強く受け止めてモルーを慰める。
「ははは。参ったな。俺以上に具合悪そうな顔で元気そうに振舞って…。モルー、ルルー。ありがとう」
バーバリーさんの方に顔を埋めて居てモルーの表情は見えないけど、恐らく情けない顔をしているモルーの頭をバーバリーさんは優しく撫でた。
いいえ、バーバリーさん。御礼を言いたいのは私の方です。だからバーバリーさん達は必ず私達が助けます。
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