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プロローグ
2人の秘密
しおりを挟む突然ですがみなさん、こんにちは。モルーです。今回は私モルーにお付き合い下さい。
ルイス様とバーバリーさんにお引き取り願った後に私達もお店を上がらせて貰った。
今は酒場の上にある2階の居住区スペースにある一番奥の部屋…私達2人の部屋に戻ってきた。
狭い部屋に少し大きめのベットと窓際に二つ並べられた小さな机。ここが私達2人の拠点だ。
先にベットのふちに腰をかけたルルーに寄り添うように私も腰を下ろした。私達はずっと2人寄り添って生きてきた。私達は2人で1人なのだ。…いや、大昔私達は確かに1人の人間だった。
「ごめん、ルルー。迂闊だった」
黙り込むルルーに私は素直に謝った。
「仕方ないよ。まさか精霊魔法の気配を感じ取れる程の高度な魔術使いが居ると思わなかったし」
ルルーの言葉に私は何も反応出来なかった。仕方ない。で済まされる結果じゃない。私達は前世の散々神子として酷使され人とは見て貰えない“生贄”になりたくなかった。普通の町娘として普通に幸せに暮らしたくて神子の力を隠してきたのに。
それなのに
「よりによって、貴族…領主様にバレるなんて」
思わず口から出た自分の声は情けなくも震えていた。双子の姉であるルルーは、領主に自分こそが神子であると、神子の力の一つである結界魔法を掛けたのは自分だと言ったのだ。
「でも、遅かれ早かれきっとバレてた。前世の神子は私…私達1人。私1人が神子だと名乗りを上げれば万事解決でしょ」
「馬鹿じゃないの?」
馬鹿だ。ルルーは。それで私を守れると守ったと思ってるんだから。大馬鹿者だ。
前世で神子である私が使えた魔術は私が得意とする結界魔法とルルーが得意とする攻撃魔法。そして今世で私が2人に別れた事で私は攻撃魔法が全く使えない。それはルルーも同じ事でルルーは攻撃魔法以外一切使えないのだ。
いや、正確に言えば同じでは無いだろう。私は確かに結界魔法が得意。だけど攻撃魔法が使えないだけで、治癒魔法や、他のサポート魔法もそこいらの魔術師なんかよりも強い。
「だけど、私に攻撃魔法以外が使えない限り、モルーには何処までも私について来てもらうからね」
自分でも気付かないうちに大泣きしていた私の肩をルルーがそっと抱きしめてくれる。その力は力強く、そしてルルーの心情が伝わってくる気がする。
だからこそ、私はルルーが最前線で戦うのをあくまでもサポートする事しか出来ない。それがどれほど自分が非力だと悔やんだか、きっとルルーは知らないし、知られたくも無い。
「寧ろルルーが、本気で怒った時に止められるのは私だけでしょ」
私は涙をゴシゴシと拭った。きっとこの事件に一区切りついたらルルーは神子として王都に連れて行かれるだろう。その時に私は双子の妹としてルルーの隣を歩こう。私はいつも守ってくれるルルーのサポートしか出来ないんだから。
「さぁ、モルー。そろそろ仕事にとりかかりましょうか。もちろん行けるよね?」
私が涙を拭くとルルーがニヤッと口角を上げた。
「余裕」
私もルルーと同じ様に笑ってやった。
私もルルーも元々1人の神子の魂が分裂して2人にそれぞれの神子の力が宿った。
前世の時のように光の攻撃魔法は使えないけれど、その代わりに…それ以上に結界魔法の威力は爆発的に上がった。
それも一重に幼い頃からの猛特訓の成果でもあるが、2つの力を使えていた頃はどんなに訓練してもある一定で成長しなくなった。
私はベットから立ち上がり深く深呼吸して集中する。
自分が立っているこの部屋を中心に意識を徐々に広げていけば、意識が広げただけそこに居る人々の息遣いを感じる事が出来る。
領地の半分まで結界を広げた所で体にふわっと不快感が襲ってきた。フラッと足元が揺らぐも、そこは気合で持ち堪える。
強く出来ると言ったものの、いや今の自分の力だと出来るのだけど流石に実践するのは初めてなので中々にキツいものがあった。
どんどん冷え切っていく自分の手先に温もりが包み込む。
「しくじるんじゃないよ」
ルルーの声が鮮明に聴こえた。
全く。この心配性な姉は。
私は再度精霊たちに呼びかける。
エピリール地方に居る全ての精霊達よ。私に応えよ。そして力を
結界の膨張スピードが一気に上がり瞬く間に領地全体に行き渡たる。
「この領地に住む人々を護り、潜む闇をあばきだせっ!!」
結果の膨張、強化が完了した所で私は眼を見開いて結界に込める力を口頭で示した。
こうする事で結界は保定され、力強く声を出す事で威力も込めやすく結界はさらに強固なモノが出来上がる。
気を許した途端に私の身体に激しい不快感が襲い掛かって私は自力では立って居られなくなった。
「お疲れ様」
その場に崩れ込む私をすんでの所でルルーが支えてくれた。
「へへっ、ちょっと、ヤバい…」
「上出来だよ。取り敢えず休んで」
ルルーの言葉に私は素直に意識を手放した。
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