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おまけ
ブーゲンビリア侯爵と姉弟ー過去ー【1】
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「マキウス! もう、マキウスってば!」
その日、九歳のヴィオーラは、いつもの様に弟の部屋に遊びに来ていた。
「お、お姉ちゃん……」
一方、ヴィオーラと腹違いの弟であるマキウスは、今年七歳になったというのに、いつもオドオドして泣き虫であった。
いつも「お姉ちゃん!」と言ってはヴィオーラの後ろに隠れてばかりで、どこに行くにも一緒だった。
「もう、こんなに良いお天気なのに、お部屋で読書なの!?」
今日は暖かく過ごしやすい気温であった。
それなのに、部屋にこもって本を読んでいるマキウスをヴィオーラは理解出来なかった。
「だって、お母さまの具合が悪いのに、ぼくだけ遊ぶのも……」
マキウスの母親は、元から身体が弱かった上に、マキウスを出産する際に酷く体調崩したことで、ますます身体が弱くなってしまったらしい。
その上、ヴィオーラの母親が自分の取り巻きを利用して嫌がらせを繰り返しているので、なかなか体調は回復しなかった。
「だったら、マキウスが外で元気に遊んでいる姿を見せた方が、お母様を安心させられるでしょう」
「そうかな……?」
「そうよ。マキウスがここでじっとしていたら、マキウスが元気じゃないと思って、ますますお母様が元気にならないでしょう?」
本当は暇を持て余したヴィオーラが一緒に遊びに行きたいだけだが、そう言ってもマキウスは母親の側から動かないだろう。
マキウスはじっと考え込んでいたが、やがて頷くと本を片付けたのだった。
「わかった。ぼくも外で遊ぶよ」
ヴィオーラは満面の笑みを浮かべた。
「良かった。今日はディアもアガタもいなくて退屈だったの。一緒に遊びましょう」
その日はアマンテーーこの頃はディアと呼んでいた。と、アガタは二人の父親で屋敷の執事であるセルボーンに連れられて留守にしていた。
二人の乳母であるペルラは忙しそうにしており、相手をしてくれそうになかった。
遊び相手がいなくて退屈していたヴィオーラだったが、反対にペルラが口出ししてこない今なら、どんな遊びをしても怒られないだろうと気づいた。
最近では、ヴィオーラが庭を駆け回ったり、木に登ったりする度に、「もう少し淑女らしい振る舞いをして下さい!」とペルラに怒られるようになり辟易していた。
貴族の女性として、淑女らしい振る舞いをするのは当然だが、せめて屋敷にいる時ぐらいは自由に遊ばせて欲しい。
そう思っていたヴィオーラだったが、ペルラの目が届かない今なら好きに遊ぶことが出来る。
今のうちにと、マキウスを誘いに来たのだった。
「お庭で遊びましょう。この時期はお花がきれいよ」
花という単語に、マキウスは顔をしかめた。
「……ぼく、虫がきらいだから、花はイヤだなぁ……」
数日前、ディアとアガタを入れた四人で屋敷の庭で遊んでいると、たまたま庭の木に虫の巣を見つけた。
そこにヴィオーラとアガタがふざけて石をぶつけたところ、怒って巣から出てきた虫の大群は、何故か石を投げた二人ではなく、マキウスを執拗に狙い出した。ただでさえ虫が苦手なマキウスは、泣きながら庭を逃げ回る羽目になったのだった。
その後、マキウスの声を聞きつけた庭師が虫を払い、ディアから話を聞いたペルラが駆け付けたが、事情を聞くなり目が三角になった。
ヴィオーラとアガタは怒られ、ディアに手伝ってもらいながらマキウスが着替えている間に、庭師が虫の巣を駆除することになったのだった。
「大丈夫よ。今回はわたしがいるわ」
「え~」
「え~、じゃなくて、行くわよ」
ヴィオーラは嫌がるマキウスの腕を引っ張ると、庭に向かったのだった。
その日、九歳のヴィオーラは、いつもの様に弟の部屋に遊びに来ていた。
「お、お姉ちゃん……」
一方、ヴィオーラと腹違いの弟であるマキウスは、今年七歳になったというのに、いつもオドオドして泣き虫であった。
いつも「お姉ちゃん!」と言ってはヴィオーラの後ろに隠れてばかりで、どこに行くにも一緒だった。
「もう、こんなに良いお天気なのに、お部屋で読書なの!?」
今日は暖かく過ごしやすい気温であった。
それなのに、部屋にこもって本を読んでいるマキウスをヴィオーラは理解出来なかった。
「だって、お母さまの具合が悪いのに、ぼくだけ遊ぶのも……」
マキウスの母親は、元から身体が弱かった上に、マキウスを出産する際に酷く体調崩したことで、ますます身体が弱くなってしまったらしい。
その上、ヴィオーラの母親が自分の取り巻きを利用して嫌がらせを繰り返しているので、なかなか体調は回復しなかった。
「だったら、マキウスが外で元気に遊んでいる姿を見せた方が、お母様を安心させられるでしょう」
「そうかな……?」
「そうよ。マキウスがここでじっとしていたら、マキウスが元気じゃないと思って、ますますお母様が元気にならないでしょう?」
本当は暇を持て余したヴィオーラが一緒に遊びに行きたいだけだが、そう言ってもマキウスは母親の側から動かないだろう。
マキウスはじっと考え込んでいたが、やがて頷くと本を片付けたのだった。
「わかった。ぼくも外で遊ぶよ」
ヴィオーラは満面の笑みを浮かべた。
「良かった。今日はディアもアガタもいなくて退屈だったの。一緒に遊びましょう」
その日はアマンテーーこの頃はディアと呼んでいた。と、アガタは二人の父親で屋敷の執事であるセルボーンに連れられて留守にしていた。
二人の乳母であるペルラは忙しそうにしており、相手をしてくれそうになかった。
遊び相手がいなくて退屈していたヴィオーラだったが、反対にペルラが口出ししてこない今なら、どんな遊びをしても怒られないだろうと気づいた。
最近では、ヴィオーラが庭を駆け回ったり、木に登ったりする度に、「もう少し淑女らしい振る舞いをして下さい!」とペルラに怒られるようになり辟易していた。
貴族の女性として、淑女らしい振る舞いをするのは当然だが、せめて屋敷にいる時ぐらいは自由に遊ばせて欲しい。
そう思っていたヴィオーラだったが、ペルラの目が届かない今なら好きに遊ぶことが出来る。
今のうちにと、マキウスを誘いに来たのだった。
「お庭で遊びましょう。この時期はお花がきれいよ」
花という単語に、マキウスは顔をしかめた。
「……ぼく、虫がきらいだから、花はイヤだなぁ……」
数日前、ディアとアガタを入れた四人で屋敷の庭で遊んでいると、たまたま庭の木に虫の巣を見つけた。
そこにヴィオーラとアガタがふざけて石をぶつけたところ、怒って巣から出てきた虫の大群は、何故か石を投げた二人ではなく、マキウスを執拗に狙い出した。ただでさえ虫が苦手なマキウスは、泣きながら庭を逃げ回る羽目になったのだった。
その後、マキウスの声を聞きつけた庭師が虫を払い、ディアから話を聞いたペルラが駆け付けたが、事情を聞くなり目が三角になった。
ヴィオーラとアガタは怒られ、ディアに手伝ってもらいながらマキウスが着替えている間に、庭師が虫の巣を駆除することになったのだった。
「大丈夫よ。今回はわたしがいるわ」
「え~」
「え~、じゃなくて、行くわよ」
ヴィオーラは嫌がるマキウスの腕を引っ張ると、庭に向かったのだった。
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