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おまけ
ブーゲンビリア侯爵と姉弟・上【3】
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「どうしましたか。マキウス?」
「モニカから、こちらを借りてきました」
マキウスがヴィオーラの執務机に置いたのは、小さな青色の魔法石がはまった銀色の指輪だった。
その指輪はヴィオーラにも見覚えがあった。
これはマキウスの妻であり、ヴィオーラもお気に入りの大切な義理の妹であるモニカに渡した指輪だった。
その指輪がどうしてモニカではなく、マキウスが持っているのか。
ヴィオーラには心当たりがあった。
「これがここにあるということは、デザインは決まったのですね」
「はい。お待たせしました」
マキウスからモニカに渡した魔法石の指輪のデザインを変えたいと相談されたのは、マキウスと和解してすぐのことだった。
やはり指輪型の魔法石だと、二人の娘であるニコラの育児の際には、邪魔になってしまうらしい。
そこで、ヴィオーラは魔法石の加工を行う加工職人をマキウスに紹介した。
魔法石の加工が出来る職人は、国内でも限られている。その中から、腕に覚えがある加工職人となると、更に限られていた。
加工職人を名乗る者の中には、職人と偽り、客が預けた魔法石を盗む者もいた。
ヴィオーラを始めとする騎士団に所属する騎士たちが検挙しているが、何人捕らえても、どこからかまた出てくるので、キリがなかった。
魔法石の職人を騙る盗人の検挙は、今や騎士団でも上位に数えられる問題であった。
ヴィオーラはマキウスに職人を紹介する代わりに、マキウスにはモニカに渡す魔法石のデザインを考えるように頼んだ。
ヴィオーラが考えるよりも、実際にモニカの身近にいて、モニカの育児を見ているマキウスなら、どういった形ならモニカが身につけやすいか知っているだろうと考えてのことだった。
ただ、それもあくまで建前の理由であり、実際は魔法石の加工に必要な代金が支払えないマキウスに対する、小さな「引き換え」といったところもあった。
最初、モニカ用の新しい魔法石の指輪を譲った時は代金を貰ったが、今回はヴィオーラからのモニカの快気祝いということで、対価は要求しなかった。
けれども、真面目な弟は腑に落ちない顔をしていたので、妥協案と言うことで、代金の代わりとなるデザイン画をお願いしたのだった。
「そう。では、今日中にも工房に依頼しますね」
「ありがとうございます。これがデザイン画になります」
マキウスが渡してきた羊皮紙を一目見たヴィオーラは感嘆した。
文字による説明と、鉛筆描きながら、細部まで事細かく絵が描かれたデザイン画は、素人が描いたとは思えない出来栄えであった。
ブーゲンビリア侯爵家御用達の画家にも負けない腕前だろう。
子供の頃からマキウスには絵心があったが、まさか数年離れている間に、更に上達しているとは思わなかった。
これなら騎士を辞めても、画家として生活出来るのではなかろうか。
「引き換え」としてさほど期待していなかったヴィオーラも、知られざる弟の才能に脱帽したのだった。
「相変わらず、素晴らしい画才を持っているのね」
「ありがとうございます。子供の頃の姉上の指導の賜物です」
姉弟が子供の頃、ヴィオーラはマキウスをキャンバスに見立てて絵を描いたことがあったーーマキウスを泣かせた上に、絵の具塗れにさせたことで、ペルラにかなり怒られたが。
「それは、私に対する嫌味かしら?」
「いいえ。とんでもありません」
マキウスはサラリと流したのだった。
「モニカから、こちらを借りてきました」
マキウスがヴィオーラの執務机に置いたのは、小さな青色の魔法石がはまった銀色の指輪だった。
その指輪はヴィオーラにも見覚えがあった。
これはマキウスの妻であり、ヴィオーラもお気に入りの大切な義理の妹であるモニカに渡した指輪だった。
その指輪がどうしてモニカではなく、マキウスが持っているのか。
ヴィオーラには心当たりがあった。
「これがここにあるということは、デザインは決まったのですね」
「はい。お待たせしました」
マキウスからモニカに渡した魔法石の指輪のデザインを変えたいと相談されたのは、マキウスと和解してすぐのことだった。
やはり指輪型の魔法石だと、二人の娘であるニコラの育児の際には、邪魔になってしまうらしい。
そこで、ヴィオーラは魔法石の加工を行う加工職人をマキウスに紹介した。
魔法石の加工が出来る職人は、国内でも限られている。その中から、腕に覚えがある加工職人となると、更に限られていた。
加工職人を名乗る者の中には、職人と偽り、客が預けた魔法石を盗む者もいた。
ヴィオーラを始めとする騎士団に所属する騎士たちが検挙しているが、何人捕らえても、どこからかまた出てくるので、キリがなかった。
魔法石の職人を騙る盗人の検挙は、今や騎士団でも上位に数えられる問題であった。
ヴィオーラはマキウスに職人を紹介する代わりに、マキウスにはモニカに渡す魔法石のデザインを考えるように頼んだ。
ヴィオーラが考えるよりも、実際にモニカの身近にいて、モニカの育児を見ているマキウスなら、どういった形ならモニカが身につけやすいか知っているだろうと考えてのことだった。
ただ、それもあくまで建前の理由であり、実際は魔法石の加工に必要な代金が支払えないマキウスに対する、小さな「引き換え」といったところもあった。
最初、モニカ用の新しい魔法石の指輪を譲った時は代金を貰ったが、今回はヴィオーラからのモニカの快気祝いということで、対価は要求しなかった。
けれども、真面目な弟は腑に落ちない顔をしていたので、妥協案と言うことで、代金の代わりとなるデザイン画をお願いしたのだった。
「そう。では、今日中にも工房に依頼しますね」
「ありがとうございます。これがデザイン画になります」
マキウスが渡してきた羊皮紙を一目見たヴィオーラは感嘆した。
文字による説明と、鉛筆描きながら、細部まで事細かく絵が描かれたデザイン画は、素人が描いたとは思えない出来栄えであった。
ブーゲンビリア侯爵家御用達の画家にも負けない腕前だろう。
子供の頃からマキウスには絵心があったが、まさか数年離れている間に、更に上達しているとは思わなかった。
これなら騎士を辞めても、画家として生活出来るのではなかろうか。
「引き換え」としてさほど期待していなかったヴィオーラも、知られざる弟の才能に脱帽したのだった。
「相変わらず、素晴らしい画才を持っているのね」
「ありがとうございます。子供の頃の姉上の指導の賜物です」
姉弟が子供の頃、ヴィオーラはマキウスをキャンバスに見立てて絵を描いたことがあったーーマキウスを泣かせた上に、絵の具塗れにさせたことで、ペルラにかなり怒られたが。
「それは、私に対する嫌味かしら?」
「いいえ。とんでもありません」
マキウスはサラリと流したのだった。
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