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第一部
天使・下【1】
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「ヴィオーラ殿、『天使』とは……?」
リュドヴィックが訊ねると、ヴィオーラは「マキウスとモニカさんはご存知かと思いますが」と、言い置いた。
「この国は、大天使様によって出来ました。ユマン族人の大天使様が持っていた技術と知識によって」
「はい。確か、騎士団の壁画に描かれていましたよね?」
モニカがマキウスと婚姻届を騎士団に提出しに行った際に、モニカは騎士団の詰め所である城の壁に描かれたこの国の創世について、ヴィオーラに教えてもらった。
この国、レコウユスは、天から現れた一人のユマン族人である大天使によって作られた。
大天使が持ってきた不思議な技術と知識によって。
「その大天使様は、モニカさんと同じように、異なる世界からやってきたユマン族だと言われています」
「えっ……!? そうなんですか!?」
モニカは口を開けた。
マキウスも知らなかったようで、アメシストの様な目を見開いたまま固まっていたのだった。
「ええ。大天使様も、元の世界で死んだ後に、とあるユマン族人の身体に宿ったと言われています」
大天使が居た世界では、国同士の争いが勃発していた。
絶え間なく戦火の炎は上がり、大天使もその被害を受けた。
そうして、空から「カガクヘイキ」なるものを落とされた後、大天使が目を覚ますと、この世界に居たと言われている。
「大天使様は放浪の末に、この国の原型であるカーネ国に辿り着きました。そうして、空に国を作ろうとしている我らが祖先に力を貸して下さったのです」
大天使はカーネ族から話を聞くと、自らも協力を名乗り出た。
国の設計図に手を加え、道具や人材などの建国に必要な材料を集めた。
けれども、国を浮かべるには、燃料が足りない。
そこで目をつけたのが、カーネ族が持つ魔力であった。
「当時のカーネ族は、誰もが高い魔力を持っていました。それを集めれば、不足している国の浮遊力になると考えたのです」
大天使はカーネ族を説得した。
全てのカーネ族が納得した訳ではなかった。当然、納得しなかった者たちも当然いたが、そういう者たちは国を去って行ったらしい。
そして、大天使は賛同した者たちの魔力を一つに集めた。
それは一つの大きな炎となって、浮遊力となり、国を浮かばせたのだった。
「私たちの魔力が生まれつき少ないのは、この時にご先祖様たちが、ほとんど使い切ってしまったからだと言われています。中には魔力を使い過ぎて、死んだ者もいるそうです……。
とにかく、この国が完成した私たちのご先祖様は移住を開始しました。けれども、その中に大天使様の姿は無かったそうです」
全てを終えた大天使の行方は、誰も分からなかったらしい。
カーネ国に残ったとも、カーネ国から出国して旅に出たとも、力を使い果たして天に還ったとも、魔力に強く当たり過ぎて死した後にカーネ族に生まれ変わったとも、言われている。
「それでも、私たちは大天使様を忘れてはいけない。この国は大天使様の助力があって完成したのだからと……。
そんな意味も込めて、ご先祖様たちは大天使様の像を建てました。国の原動力でもある、魔力の炎を守る核としての役割も含めて」
国の浮遊力の元でもある魔力の炎を剥き出しのままにしておくのも、今後悪用され、悪戯される可能性があるということで、何かで守る必要があった。そこで当時のカーネ族たちが考えたのが、耐熱性のある素材で作った像を作り、その中で魔力の炎を守り、管理することだった。
国の中心となる炎を守護する像を作るなら、国の象徴となるような形にしたいと考えた結果、いつまでも国の礎となった存在を忘れないようにという意味を込めて、像の形は大天使に決まった。
そうして大天使を模した像を作り、その中で魔力の炎を管理することにしたのだった。
リュドヴィックが訊ねると、ヴィオーラは「マキウスとモニカさんはご存知かと思いますが」と、言い置いた。
「この国は、大天使様によって出来ました。ユマン族人の大天使様が持っていた技術と知識によって」
「はい。確か、騎士団の壁画に描かれていましたよね?」
モニカがマキウスと婚姻届を騎士団に提出しに行った際に、モニカは騎士団の詰め所である城の壁に描かれたこの国の創世について、ヴィオーラに教えてもらった。
この国、レコウユスは、天から現れた一人のユマン族人である大天使によって作られた。
大天使が持ってきた不思議な技術と知識によって。
「その大天使様は、モニカさんと同じように、異なる世界からやってきたユマン族だと言われています」
「えっ……!? そうなんですか!?」
モニカは口を開けた。
マキウスも知らなかったようで、アメシストの様な目を見開いたまま固まっていたのだった。
「ええ。大天使様も、元の世界で死んだ後に、とあるユマン族人の身体に宿ったと言われています」
大天使が居た世界では、国同士の争いが勃発していた。
絶え間なく戦火の炎は上がり、大天使もその被害を受けた。
そうして、空から「カガクヘイキ」なるものを落とされた後、大天使が目を覚ますと、この世界に居たと言われている。
「大天使様は放浪の末に、この国の原型であるカーネ国に辿り着きました。そうして、空に国を作ろうとしている我らが祖先に力を貸して下さったのです」
大天使はカーネ族から話を聞くと、自らも協力を名乗り出た。
国の設計図に手を加え、道具や人材などの建国に必要な材料を集めた。
けれども、国を浮かべるには、燃料が足りない。
そこで目をつけたのが、カーネ族が持つ魔力であった。
「当時のカーネ族は、誰もが高い魔力を持っていました。それを集めれば、不足している国の浮遊力になると考えたのです」
大天使はカーネ族を説得した。
全てのカーネ族が納得した訳ではなかった。当然、納得しなかった者たちも当然いたが、そういう者たちは国を去って行ったらしい。
そして、大天使は賛同した者たちの魔力を一つに集めた。
それは一つの大きな炎となって、浮遊力となり、国を浮かばせたのだった。
「私たちの魔力が生まれつき少ないのは、この時にご先祖様たちが、ほとんど使い切ってしまったからだと言われています。中には魔力を使い過ぎて、死んだ者もいるそうです……。
とにかく、この国が完成した私たちのご先祖様は移住を開始しました。けれども、その中に大天使様の姿は無かったそうです」
全てを終えた大天使の行方は、誰も分からなかったらしい。
カーネ国に残ったとも、カーネ国から出国して旅に出たとも、力を使い果たして天に還ったとも、魔力に強く当たり過ぎて死した後にカーネ族に生まれ変わったとも、言われている。
「それでも、私たちは大天使様を忘れてはいけない。この国は大天使様の助力があって完成したのだからと……。
そんな意味も込めて、ご先祖様たちは大天使様の像を建てました。国の原動力でもある、魔力の炎を守る核としての役割も含めて」
国の浮遊力の元でもある魔力の炎を剥き出しのままにしておくのも、今後悪用され、悪戯される可能性があるということで、何かで守る必要があった。そこで当時のカーネ族たちが考えたのが、耐熱性のある素材で作った像を作り、その中で魔力の炎を守り、管理することだった。
国の中心となる炎を守護する像を作るなら、国の象徴となるような形にしたいと考えた結果、いつまでも国の礎となった存在を忘れないようにという意味を込めて、像の形は大天使に決まった。
そうして大天使を模した像を作り、その中で魔力の炎を管理することにしたのだった。
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