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第一部
「モニカ」になれない【4】
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「貴女は貴女のままでいて下さい。『モニカ』にならなくていい。貴女だけの『モニカ』でいて欲しいんです」
「マキウス様、私は……」
「……私は『モニカ』を愛していました。けれども、今の貴女も同じくらいに……。いえ、それ以上に貴女を愛しているんです」
モニカら大きく目を見開いた。
マキウスはモニカを抱く手に力を入れたのだった。
「私はこれまで何度も、大切な想いを胸に秘めすぎていた所為で、大切なモノを失ってきました……。もう、後悔はしたくないのです……」
マキウスは自分の大切な想いを何も言わなかった所為で、大切な家族である義姉と引き離された。
最初に愛した妻を、理解出来ないまま失ってしまった。
もし、自分の気持ちをちゃんと伝えていたら、義姉と離ればなれにならなかったかもしれない。
もしかしたら、「モニカ」は死ななかったかもしれない。
もう後悔はしたくなかった。
だから、今度こそ、大切な想いを伝えたいと思った。
失ってからでは遅いと、ようやく気づけたからーー。
「こんなことを『モニカ』が知ったら、私は『モニカ』に怒られますね。
『モニカ』より貴女を愛しているなどと……」
「マキウス様、私は……」
モニカを抱くマキウスの力が緩むことは無かった。
「遠回しに『モニカ』が死んで良かったと、言っているのも同じですからね。『モニカ』が階段から落ちなければ、貴女と出会わなかった訳ですから」
マキウスは苦笑した。
愛する女性に対して、何てことを言っているのだろう。
「わ、私も……」
モニカはマキウスに抱きつきながら、恥ずかしそうに続けた。
「私も、マキウス様と出会えて良かったです。……それなら、階段から落ちて死んでも良かったと思っています。
生前の私は結婚も出来ず、子供も居ないまま死ぬのが悲しかったんです。私だって夢を見ていたんです。素敵な結婚をして、幸せな家庭を持つことを」
「そんな貴女の相手が、私とニコラで良かったんですか?」
「マキウス様とニコラ『で』良かったんじゃないんです。マキウス様とニコラ『だから』良かったんです」
はにかむ様に泣き笑いの表情を浮かべる妻に、マキウスは虚をつかれた。
けれども、すぐに安心させるようにそっと口元を緩めたのだった。
「ですから、貴女は『貴女だけのモニカ』として、皆を見守って下さい。『モニカ』になろうとは思わないで下さい」
「『私だけのモニカ』に……」
そう呟いた後、モニカは「わ、私……」と続けた。
「私は皆が知っている『モニカ」になろうとしていていました。それが、私がこの世界に来て、『モニカ』になった理由だと思っていたので……」
モニカの言葉を、マキウスが継いで代弁する。
「けれども、なれる訳がなかった。例え、『モニカ』の記憶を引き継ごうとも、貴女自身がいなくなる訳では無いからです。
もし、それが目的なら、貴女がモニカになった時に、貴女自身の意識は無くなっていたことでしょう」
今のモニカとしての意識が残っているということは、そこに意味がある。
異なる世界から、マキウスの元にやって来たモニカ。
モニカが別世界から来たという話は、モニカの夢に入ったことで証明されている。
あんなに生々しく、マキウスたちには想像もしない物に溢れた世界は、この世界に住む人たちはまず考えつかないだろう。
モニカの話を信用するのに値する夢だった。
「マキウス様、私は……」
「……私は『モニカ』を愛していました。けれども、今の貴女も同じくらいに……。いえ、それ以上に貴女を愛しているんです」
モニカら大きく目を見開いた。
マキウスはモニカを抱く手に力を入れたのだった。
「私はこれまで何度も、大切な想いを胸に秘めすぎていた所為で、大切なモノを失ってきました……。もう、後悔はしたくないのです……」
マキウスは自分の大切な想いを何も言わなかった所為で、大切な家族である義姉と引き離された。
最初に愛した妻を、理解出来ないまま失ってしまった。
もし、自分の気持ちをちゃんと伝えていたら、義姉と離ればなれにならなかったかもしれない。
もしかしたら、「モニカ」は死ななかったかもしれない。
もう後悔はしたくなかった。
だから、今度こそ、大切な想いを伝えたいと思った。
失ってからでは遅いと、ようやく気づけたからーー。
「こんなことを『モニカ』が知ったら、私は『モニカ』に怒られますね。
『モニカ』より貴女を愛しているなどと……」
「マキウス様、私は……」
モニカを抱くマキウスの力が緩むことは無かった。
「遠回しに『モニカ』が死んで良かったと、言っているのも同じですからね。『モニカ』が階段から落ちなければ、貴女と出会わなかった訳ですから」
マキウスは苦笑した。
愛する女性に対して、何てことを言っているのだろう。
「わ、私も……」
モニカはマキウスに抱きつきながら、恥ずかしそうに続けた。
「私も、マキウス様と出会えて良かったです。……それなら、階段から落ちて死んでも良かったと思っています。
生前の私は結婚も出来ず、子供も居ないまま死ぬのが悲しかったんです。私だって夢を見ていたんです。素敵な結婚をして、幸せな家庭を持つことを」
「そんな貴女の相手が、私とニコラで良かったんですか?」
「マキウス様とニコラ『で』良かったんじゃないんです。マキウス様とニコラ『だから』良かったんです」
はにかむ様に泣き笑いの表情を浮かべる妻に、マキウスは虚をつかれた。
けれども、すぐに安心させるようにそっと口元を緩めたのだった。
「ですから、貴女は『貴女だけのモニカ』として、皆を見守って下さい。『モニカ』になろうとは思わないで下さい」
「『私だけのモニカ』に……」
そう呟いた後、モニカは「わ、私……」と続けた。
「私は皆が知っている『モニカ」になろうとしていていました。それが、私がこの世界に来て、『モニカ』になった理由だと思っていたので……」
モニカの言葉を、マキウスが継いで代弁する。
「けれども、なれる訳がなかった。例え、『モニカ』の記憶を引き継ごうとも、貴女自身がいなくなる訳では無いからです。
もし、それが目的なら、貴女がモニカになった時に、貴女自身の意識は無くなっていたことでしょう」
今のモニカとしての意識が残っているということは、そこに意味がある。
異なる世界から、マキウスの元にやって来たモニカ。
モニカが別世界から来たという話は、モニカの夢に入ったことで証明されている。
あんなに生々しく、マキウスたちには想像もしない物に溢れた世界は、この世界に住む人たちはまず考えつかないだろう。
モニカの話を信用するのに値する夢だった。
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