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第一部
甘く輝く・上【1】
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「先程はすみませんでした。マキウス様……」
「私の方こそ、声を上げてしまいました。驚かせてしまい、申し訳ありません」
向かい合った二人は、お互いに肩を落としたのだった。
あれから、モニカの涙が止まると、二人は近くのカフェに入った。
甘い匂いの漂う店内は、最後にモニカが入った時の内装を再現したのか、ハワイアンをイメージした黄色で統一されていた。
席も疎らに空いており、モニカたちはすぐに案内されたのだった。
店員からメニューを渡されたが、文字が読めないというマキウスに代わり、モニカが同じものを二人分注文すると、ようやく一息つけたのだった。
「あの二人は、モニカの知り合いですか?」
「いいえ。知らない人たちです。ただ、以前も同じ様にぶつかりました」
「その時は、どうしたのですか?」
お冷を飲んでいたモニカは、心配そうなマキウスを安心させるように、コップを置くと小さく微笑んだのだった。
「さっきと同じです。悪口を言われて、それで終わりです。いつもなら悪口を言われても、聞こえないようにしているんですが、あの時はそれをしていなかったので……」
「どうやって、聞こえないようにしていたんですか?」
「これです」
モニカは傍らに置いていた鞄から、これまでには入ってなかった「アレ」を取り出す。
「それは?」
「音楽再生プレーヤーです。このイヤフォンというものを使って、音楽を聴きます」
御國だった頃、知らない人に話しかけることや、知らない人に話しかけられること、自分を含めた誰かの悪口が耳に入ってくることが苦手だった。
それで、アーケードの様に人通りが多いところでは、いつもイヤフォンで音楽を聴きながら歩くようにしていた。
それなのに、カップルとぶつかった時は、たまたま近くのお店に入って、買い物をした直後だった。
お店に入る際にイヤフォンを外して、そのままイヤフォンを外した状態で出てきてしまった。
あの時は、もうひと店舗、近くにある別のお店で買い物をする予定だった。
近くのお店に入るなら、イヤフォンはつけなくていいかと考えている時に、あのカップルとぶつかったのだった。
あの時程、イヤフォンをつけていなくて後悔したことはなかった。
「貴女の世界では、いつでも音楽を聴くことが出来るんですね。ただ、歩きながら聴くのは危険では……」
「そうなんですけどね……でもその方が何も聞こえなくて安心出来るので……。それに音楽を聴いていなくても危険なことに変わりはありません。私の最期は音楽を聴いてなかったですし……」
階段から転落した際は、イヤフォンと音楽再生プレーヤー自体を家に忘れていたから、身に付けていなかった。
あの時に限って忘れたのは、やはり死ぬことの前兆だったのだろうか。
「悪口を言われて、しばらくは落ち込んでいました。けれども、時間が経ったら、だんだん平気になってきました」
モニカは笑ったが、マキウスは困ったようにモニカを見つめたのだった。
「本当に……?」
「本当ですよ! それに、マキウス様に『私の妻』と言われた時、すっごく嬉しかったです!」
両腕を振って興奮気味に話すモニカに、マキウスは面食らった様子であった。
「私の方こそ、声を上げてしまいました。驚かせてしまい、申し訳ありません」
向かい合った二人は、お互いに肩を落としたのだった。
あれから、モニカの涙が止まると、二人は近くのカフェに入った。
甘い匂いの漂う店内は、最後にモニカが入った時の内装を再現したのか、ハワイアンをイメージした黄色で統一されていた。
席も疎らに空いており、モニカたちはすぐに案内されたのだった。
店員からメニューを渡されたが、文字が読めないというマキウスに代わり、モニカが同じものを二人分注文すると、ようやく一息つけたのだった。
「あの二人は、モニカの知り合いですか?」
「いいえ。知らない人たちです。ただ、以前も同じ様にぶつかりました」
「その時は、どうしたのですか?」
お冷を飲んでいたモニカは、心配そうなマキウスを安心させるように、コップを置くと小さく微笑んだのだった。
「さっきと同じです。悪口を言われて、それで終わりです。いつもなら悪口を言われても、聞こえないようにしているんですが、あの時はそれをしていなかったので……」
「どうやって、聞こえないようにしていたんですか?」
「これです」
モニカは傍らに置いていた鞄から、これまでには入ってなかった「アレ」を取り出す。
「それは?」
「音楽再生プレーヤーです。このイヤフォンというものを使って、音楽を聴きます」
御國だった頃、知らない人に話しかけることや、知らない人に話しかけられること、自分を含めた誰かの悪口が耳に入ってくることが苦手だった。
それで、アーケードの様に人通りが多いところでは、いつもイヤフォンで音楽を聴きながら歩くようにしていた。
それなのに、カップルとぶつかった時は、たまたま近くのお店に入って、買い物をした直後だった。
お店に入る際にイヤフォンを外して、そのままイヤフォンを外した状態で出てきてしまった。
あの時は、もうひと店舗、近くにある別のお店で買い物をする予定だった。
近くのお店に入るなら、イヤフォンはつけなくていいかと考えている時に、あのカップルとぶつかったのだった。
あの時程、イヤフォンをつけていなくて後悔したことはなかった。
「貴女の世界では、いつでも音楽を聴くことが出来るんですね。ただ、歩きながら聴くのは危険では……」
「そうなんですけどね……でもその方が何も聞こえなくて安心出来るので……。それに音楽を聴いていなくても危険なことに変わりはありません。私の最期は音楽を聴いてなかったですし……」
階段から転落した際は、イヤフォンと音楽再生プレーヤー自体を家に忘れていたから、身に付けていなかった。
あの時に限って忘れたのは、やはり死ぬことの前兆だったのだろうか。
「悪口を言われて、しばらくは落ち込んでいました。けれども、時間が経ったら、だんだん平気になってきました」
モニカは笑ったが、マキウスは困ったようにモニカを見つめたのだった。
「本当に……?」
「本当ですよ! それに、マキウス様に『私の妻』と言われた時、すっごく嬉しかったです!」
両腕を振って興奮気味に話すモニカに、マキウスは面食らった様子であった。
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