4 / 9
回想【1】
しおりを挟む
あの日、仕事を終えた私は、いつもの様に一人暮らしをしているアパートに戻って来ると、通勤用の鞄から鍵を取り出した。
大学卒業の際、就職先を巡って両親と喧嘩したのを機に、私は実家を出て、職場近くのアパートで一人暮らしをしていた。
この日も自宅に戻って、いつもの様にテレビを見ながら夕飯を食べて、お風呂に入って、撮り溜めしていたドラマを観る予定だった。
鍵を開けて中に入ると、部屋の中は真っ暗であった。
(カーテン、開け忘れたっけ……?)
そんな事を考えながらパンプスを脱いで部屋に入るが、どれだけ歩いても一間しかない部屋に辿り着けなかった。
(おかしい。絶対、おかしい)
後ろを振り向いても、そこに玄関の扉は無く、真っ暗な空間に取り残されてしまったのだった。
(どうしよう……)
急に不安になって、私は駆け出す。
すると、ストッキングしか履いていない足裏の感触が、いつの間にかゴツゴツとした石の様な感触に変わっていたのだった。
「えっ……」
立ち止まると、いつの間にか真っ暗な石造りの通路の様な場所にいた。
「こ、ここはどこ……?」
後ろを振り返るが、先程歩いていた暗い空間はなく、ただただ石の壁が続くだけであった。
人を求めて通路を歩くと、木製の大きな扉を見つけた。
「すみません! どなたか居ませんか!?」
ノックするが中から返答はなく、ドアノブも鍵がかかっていたのだった。
その扉を諦めて通路を歩くと、また別の扉を見つける。
しかし、扉にはまた鍵がかかっていた。
それを何度か繰り返すうちに、通路に明かりが漏れている部屋を見つけた。
(良かった。ようやく、人がいた……)
私は安心すると扉に近付いていく。
ストッキングの足はすっかり汚れて、爪が引っかかったのか爪先は破れていた。
扉に近づくと、中から話し声が聞こえてきたのだった。
「……なら、今年の異常な積雪は、この力が原因ではないのか……」
「その力は、もうほとんど残っていませんよ」
話し声から、どうやら中に居るのは男らしい。
低い声とやや明るい二種類の男の声が、中から聞こえてきたのだった。
大学卒業の際、就職先を巡って両親と喧嘩したのを機に、私は実家を出て、職場近くのアパートで一人暮らしをしていた。
この日も自宅に戻って、いつもの様にテレビを見ながら夕飯を食べて、お風呂に入って、撮り溜めしていたドラマを観る予定だった。
鍵を開けて中に入ると、部屋の中は真っ暗であった。
(カーテン、開け忘れたっけ……?)
そんな事を考えながらパンプスを脱いで部屋に入るが、どれだけ歩いても一間しかない部屋に辿り着けなかった。
(おかしい。絶対、おかしい)
後ろを振り向いても、そこに玄関の扉は無く、真っ暗な空間に取り残されてしまったのだった。
(どうしよう……)
急に不安になって、私は駆け出す。
すると、ストッキングしか履いていない足裏の感触が、いつの間にかゴツゴツとした石の様な感触に変わっていたのだった。
「えっ……」
立ち止まると、いつの間にか真っ暗な石造りの通路の様な場所にいた。
「こ、ここはどこ……?」
後ろを振り返るが、先程歩いていた暗い空間はなく、ただただ石の壁が続くだけであった。
人を求めて通路を歩くと、木製の大きな扉を見つけた。
「すみません! どなたか居ませんか!?」
ノックするが中から返答はなく、ドアノブも鍵がかかっていたのだった。
その扉を諦めて通路を歩くと、また別の扉を見つける。
しかし、扉にはまた鍵がかかっていた。
それを何度か繰り返すうちに、通路に明かりが漏れている部屋を見つけた。
(良かった。ようやく、人がいた……)
私は安心すると扉に近付いていく。
ストッキングの足はすっかり汚れて、爪が引っかかったのか爪先は破れていた。
扉に近づくと、中から話し声が聞こえてきたのだった。
「……なら、今年の異常な積雪は、この力が原因ではないのか……」
「その力は、もうほとんど残っていませんよ」
話し声から、どうやら中に居るのは男らしい。
低い声とやや明るい二種類の男の声が、中から聞こえてきたのだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!
音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。
愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。
「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。
ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。
「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」
従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる