【完結】異世界で子作りしないで帰る方法〈加筆修正版〉

夜霞

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決意【4】

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「ユズちゃんは、公文書館で働きたいと思っているかい?」 
「はい! もちろんです! 私は本に関係する仕事がしたいんです。……夢だったんです」
柚子が熱望すると、カルセドニーはアズールスに声を掛けた。
「アズールスは、ユズちゃんを公文書館で働かせていいのか?」
アズールスは迷っているようだったが、やがて頷いたのだった。
「俺はユズの夢を叶えさせたいです。夢を叶える姿を見たいです。その点、公文書館ならユズの夢も叶えられて、俺も安心してユズを働かせられます」
「過保護だねぇ……」
カルセドニーは呆れたように、息をついたのだった。

「という事だ。ユズちゃんは俺から申告しておく、アズールスは明日の休暇中にユズちゃんとの関係をはっきりさせてくれ」
カルセドニーは羊皮紙を片付け始めた。
話は終わったと柚子達が立ち上がろうとすると、カルセドニーは引き止めたのだった。
「ユズちゃん、また明後日からよろしく頼む」
柚子はパッと笑みを浮かべると、カルセドニーに向かって頭を下げたのだった。
「はい! こちらこそよろしくお願いします! 館長!」
「よせよ、館長なんて……。恥ずかしい……」
照れるカルセドニーに、柚子とアズールスは声を上げて笑ったのだった。

二人が公文書館を出て屋敷に戻ると、外はまだ明るかった。
柚子が最後の日なのと、アズールスが明日は休暇という事もあって、今日は早めに帰れたのだった。
「あの、アズールスさん」
屋敷の前でアズールスに手伝ってもらって、馬車から降りた柚子は声を掛けた。
「どうした?」
「まだ早いので、少しお庭を散歩しませんか?」
柚子が屋敷の庭を指すと、アズールスは頷いたのだった。
「先に着替えて、荷物を置かせてくれないか。マルゲリタ達にも伝えてこよう」
二人は一度屋敷に戻り、出迎えてくれたマルゲリタ達に、夕食まで庭を散策すると声を掛けた。
マルゲリタは承諾すると、夕食が完成したら呼びに行くと言うと、ファミリア達を連れて厨房に戻ったのだった。
二人は自室に荷物を置いて、部屋着に着替えると、庭に出たのだった。

庭は先日、ファミリアやフェーンが手入れをしてくれた事もあって、よく手入れされた綺麗な花が咲いていた。
「この間、庭を手入れしていたら、フェーン君が屋敷で育てている植物まで抜いてしまったみたいで」
「そうなのか?」
先日、柚子達が市場に買い物に行っている間、フェーンがファミリアが育てていた植物ーーどうやら、食べられたらしい。まで、雑草と思って抜いてしまったらしい。
ファミリアが泣いて喧嘩になりかけたのを、マルゲリタが止めたとの事だった。

「それでも、二人は仲良くやっているようなので安心です」
最近は、柚子が公文書館に行っているからか、あまりファミリアが柚子の元にやって来なくなった。
これまでだったら、勉強以外でも遊び相手や話し相手てしてよく声を掛けられていたが、最近はフェーンに声を掛けているようだった。
柚子はそれが少し寂しく感じているのだった。
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