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フェーンの正体【4】
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「えっと、おじさん、だれ?」
戸惑い気味なフェーンが訊ねると、身なりのいい男性はフェーンを抱きしめたまま返した。
「私だよ。フェーン。お前の父親だ!」
「お、とうさん。なの?」
「ああ。そうだ。お前は知らないかもしれないが」
そうして、フェーンの父親と名乗った身なりのいい男性は、フェーンを強く抱きしめたのだった。
「この男性は、一体……?」
それまで、二人の再会見守っていたアズールスは、カルセドニー達に声を掛けた。
すると、年老いた男性が代表するように、答えたのだった。
「このお方は、このアルストロメリア地方を治めるアルストロメリア公爵様であらせられます」
「えっ……」
「公爵様……?」
アズールスと柚子が呟くと、カルセドニーとコースタルは頷いたのだった。
「そうして、私はアルストロメリア公爵様の家令《ハウススチュワード》を務めております」
自らを家令と名乗った年老いた男性は、アズールス達に一礼をしたのだった。
「この度は、公爵様の息子であるフェーン様を保護して頂きました事、深く感謝を申し上げます」
「私からも礼を言わせて欲しい」
すると、フェーンと抱き合っていた公爵もアズールス達に向き直ると、優雅に一礼したのだった。
「この度は、息子であるフェーンを保護して頂いた事、深く感謝を申し上げる。謝礼は後程、届けさせよう」
「や、やめて下さい。公爵様」
アズールスは慌てると、公爵を止めた。
「それよりも、フェーン……、さんについて説明をしてもらえませんか? 俺……、私には何がなんだかわかりません。事情をお聞かせ願えますか?」
「それもそうだな。息子を保護してもらった以上、君には知る権利がある。そちらのお嬢さんは?」
公爵は柚子を指すと、柚子が名乗る前にアズールスが柚子の隣に並んだ。
「彼女は私の婚約者です。最初にフェーンを見つけました」
(こ、婚約者って……!?)
柚子が内心で慌てていると、アズールスが促してきたので柚子は頷く事しか出来なかったのだった。
「では、二人には知る権利があるだろう。事情を説明させて欲しい」
公爵は、カルセドニーに案内をされてソファーに座った。その隣にフェーンを座らせると、公爵達の後ろには家令とコースタルが控えたのだった。
柚子はその向かい側のソファーにアズールスと並んで座った。
二人の後ろには、カルセドニーが控えたのだった。
いつの間にか、雨は弱まっていた。
そうして、公爵は話し出したのだった。
戸惑い気味なフェーンが訊ねると、身なりのいい男性はフェーンを抱きしめたまま返した。
「私だよ。フェーン。お前の父親だ!」
「お、とうさん。なの?」
「ああ。そうだ。お前は知らないかもしれないが」
そうして、フェーンの父親と名乗った身なりのいい男性は、フェーンを強く抱きしめたのだった。
「この男性は、一体……?」
それまで、二人の再会見守っていたアズールスは、カルセドニー達に声を掛けた。
すると、年老いた男性が代表するように、答えたのだった。
「このお方は、このアルストロメリア地方を治めるアルストロメリア公爵様であらせられます」
「えっ……」
「公爵様……?」
アズールスと柚子が呟くと、カルセドニーとコースタルは頷いたのだった。
「そうして、私はアルストロメリア公爵様の家令《ハウススチュワード》を務めております」
自らを家令と名乗った年老いた男性は、アズールス達に一礼をしたのだった。
「この度は、公爵様の息子であるフェーン様を保護して頂きました事、深く感謝を申し上げます」
「私からも礼を言わせて欲しい」
すると、フェーンと抱き合っていた公爵もアズールス達に向き直ると、優雅に一礼したのだった。
「この度は、息子であるフェーンを保護して頂いた事、深く感謝を申し上げる。謝礼は後程、届けさせよう」
「や、やめて下さい。公爵様」
アズールスは慌てると、公爵を止めた。
「それよりも、フェーン……、さんについて説明をしてもらえませんか? 俺……、私には何がなんだかわかりません。事情をお聞かせ願えますか?」
「それもそうだな。息子を保護してもらった以上、君には知る権利がある。そちらのお嬢さんは?」
公爵は柚子を指すと、柚子が名乗る前にアズールスが柚子の隣に並んだ。
「彼女は私の婚約者です。最初にフェーンを見つけました」
(こ、婚約者って……!?)
柚子が内心で慌てていると、アズールスが促してきたので柚子は頷く事しか出来なかったのだった。
「では、二人には知る権利があるだろう。事情を説明させて欲しい」
公爵は、カルセドニーに案内をされてソファーに座った。その隣にフェーンを座らせると、公爵達の後ろには家令とコースタルが控えたのだった。
柚子はその向かい側のソファーにアズールスと並んで座った。
二人の後ろには、カルセドニーが控えたのだった。
いつの間にか、雨は弱まっていた。
そうして、公爵は話し出したのだった。
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