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ファミリアとフェーン【4】
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「私なんて、まだまだです。見出しの作成だって、パソコンが無いのですぐには作成出来ませんし、私がいる間に完成出来ればいいのですが……」
パソコンが無いこの世界では、柚子は手書きで作成する。
紙を切って、文字を書いて、インクで塗る。
乾いたらそれぞれの棚に持って行って設置する。
以前、アズールスが言っていた通り、アズールスの知識を共有した柚子はこの世界の文字を書けるようになっていた。
文字を書く際には、頭に書きたい言葉を思い浮かべると、頭の中でこの世界の文字に変換される。それを柚子は紙に写すように、文字を書いていたのだった。
ただ、柚子の文字はかなりの癖字の様でーーどうも、アズールスも癖字らしい。カルセドニーやガルシア達に「読めない」と言われて、書き直しをしており、なかなか見出し作りは進んでいなかったのだった。
「間に合わなかった時はその時で、カルセドニーさんが考えているだろうから、ユズは気にしなくていい」
「そうですか……。それなら、いいんですが……」
柚子が心配になっていると、二人の正面から荷馬車がやってきた。
二人は道の端に避けるが、避けた際に柚子は足元の石につまづいてしまった。
(しまっ……!)
すると、柚子の様子に気づいたアズールスが、さっと繋いでいた柚子の腕を引いてくれた。
柚子はアズールスの胸の中に、寄り掛かかるように倒れ込んだのだった。
「大丈夫か!?」
「はい。すみません……」
大きなアズールスの胸の中に倒れ込んだ柚子の心臓が大きく高鳴る。
繋いでいる手と柚子の腰を押さえてくれているアズールスの手が温かかった。
柚子はそっとアズールスから離れたのだった。
「さあ、早く買い物に行きましょう!」
「そうだな」
アズールスの熱が名残惜しいと思いつつも、柚子はアズールスの手を引いて市場に向かったのだった。
パソコンが無いこの世界では、柚子は手書きで作成する。
紙を切って、文字を書いて、インクで塗る。
乾いたらそれぞれの棚に持って行って設置する。
以前、アズールスが言っていた通り、アズールスの知識を共有した柚子はこの世界の文字を書けるようになっていた。
文字を書く際には、頭に書きたい言葉を思い浮かべると、頭の中でこの世界の文字に変換される。それを柚子は紙に写すように、文字を書いていたのだった。
ただ、柚子の文字はかなりの癖字の様でーーどうも、アズールスも癖字らしい。カルセドニーやガルシア達に「読めない」と言われて、書き直しをしており、なかなか見出し作りは進んでいなかったのだった。
「間に合わなかった時はその時で、カルセドニーさんが考えているだろうから、ユズは気にしなくていい」
「そうですか……。それなら、いいんですが……」
柚子が心配になっていると、二人の正面から荷馬車がやってきた。
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(しまっ……!)
すると、柚子の様子に気づいたアズールスが、さっと繋いでいた柚子の腕を引いてくれた。
柚子はアズールスの胸の中に、寄り掛かかるように倒れ込んだのだった。
「大丈夫か!?」
「はい。すみません……」
大きなアズールスの胸の中に倒れ込んだ柚子の心臓が大きく高鳴る。
繋いでいる手と柚子の腰を押さえてくれているアズールスの手が温かかった。
柚子はそっとアズールスから離れたのだった。
「さあ、早く買い物に行きましょう!」
「そうだな」
アズールスの熱が名残惜しいと思いつつも、柚子はアズールスの手を引いて市場に向かったのだった。
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