【完結】異世界で子作りしないで帰る方法〈加筆修正版〉

夜霞

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新しい使用人?【1】

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「戻った」
「ただいま戻りました」
夕方、公文書館から戻って来た柚子とアズールスが屋敷に入ると、いつもアズールスを出迎えるように、マルゲリタとファミリアがやって来たのだった。
「お帰りなさいませ。旦那様、ユズ様」
「お帰りなさい!」
すると、マルゲリタとファミリアの後ろから、フェーンもやって来て柚子達を出迎えてくれたのだった。

「お帰りなさい……」
「ただいま! フェーン君!」
柚子がフェーンに顔を向けると、今朝とは違う格好をしていたのだった。
「フェーン君、着替えたの?」
フェーンは今朝の薄手のシャツにズボン姿ではなく、糊のきいた白色のシャツとズボンに、黒色の蝶ネクタイも付けていた。
金色の髪はしっかりと整えられており、顔がはっきりと見えるように後ろに撫で付けられていたのだった。
「うん。マルゲリタさんに用意してもらった」
「ええ。せっかくなので、使用人のお仕着せを用意しました」

フェーンは昨夜アズールスに言われた事もあって、今日も朝からマルゲリタやファミリアの仕事を手伝ってくれたらしい。
洗濯物を洗うのを手伝ってくれた時に、フェーンがシャツとズボンを汚すのを躊躇ったので、急遽マルゲリタが子供用のお仕着せを用意したとの事だった。
この服なら汚してもいいとフェーンに言うと、フェーンは嬉々として着替えたとの事だった。

「そうだったんですね。フェーン君、とっても似合っていますよ!」
「ありがとう! ユズお姉さん」
フェーンが嬉しそうに笑っていると、アズールスが咳払いをした。
「ところで、俺とユズの夕食は用意出来ているのか?」
「ええ。出来ていますよ。ファミリア、フェーンさん、夕食の用意を」
マルゲリタに名前を呼ばれた二人は返事をすると、食堂に向かったのだった。

「今日の夕食は、フェーンさんも手伝ってくれたのですよ」
「わぁ! 楽しみです!」
どうやら、フェーンは料理をした経験があるようで、包丁も危なげなく使えたらしい。
「さあ、お二人共、着替えて来て下さい。それと、旦那様」
マルゲリタに声を掛けられたアズールスは、柚子に先に部屋に行くように促した。
「実は、夕方頃にコースタル様がお見えになりまして……」
どうやら、夕方にコースタルが屋敷に来たらしい。マルゲリタとアズールスは小声で話し出したのだった。
柚子は気になりつつも、アズールスに言われた通り、先に部屋へと戻った。
「そうか、それなら俺の方から……」
マルゲリタとアズールスの会話が漏れ聞こえてくる中、階下の食堂からはファミリアとフェーンが用意をしている夕食の美味しそうな匂いが漂ってきたのだった。
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