76 / 109
頼み【4】
しおりを挟む
「本当はよ。この機会に本の整理をする館内の片付けを嬢ちゃんに手伝って欲しいんだけどよ。地下にある軍の機密資料には嬢ちゃんを近づけられないって、カルセドニーさんが言っていてな」
「そうなんですね……」
「だけど、その代わりにこっちを手伝ってくれるとありがてぇ。俺も古傷が痛んで、重い物を動かすのに時間がかかってよ」
ガルシアは軍に所属していた頃、村民達の喧嘩の仲裁に入ったら、相手が持っていたナイフて腕を斬られてしまったらしい。
斬られた場所が悪かったようでそれ以来、剣や馬の手綱にど長時間、物を持つ事が辛くなってしまった。
それがきっかけで軍を辞めたが、たまたまカルセドニーの軍時代の上司から公文書館の人間を探していると言われてた。
そうして、この地に移住して、公文書館で働く事にした。
ちなみに、その上司はアズールスを公文書館に誘った者でもあるらしい。
「わかりました。重い物は私が運ぶので、遠慮なく言って下さい」
「俺も手伝おう。ガルシア」
アズールスも頷くと、袖を捲り上げた。
「助かるよ。じゃあ、ここにある本を館内に持って行ってくれるか?」
ガルシアが示した布の上には、数冊の分厚い本が重なっていた。
昨日、濡れていた本の重石に使っていた本だと柚子にも見覚えがあったのだった。
「わかりました」
柚子が数冊を持ち上げると、慌てたアズールスに止められた。
「ユズ、さすがに一度に持ち過ぎではないだろうか!? これでは腕を痛めてしまう!」
「そうですか……? これでもまだ軽い方ですよ。まだ持てそうなんですが……」
柚子が更にもう一冊取ろうとすると、アズールスが止めた。
「いいから! ユズは女性なんだ! 無理はしなくていい!」
「でも、このままじゃあ、日が暮れちゃいますよ……?」
柚子達の目の前には、まだまだ本があった。乾燥中の本や、その本の重石になっている本を合わせると、数十冊になるだろうか。
「それに、私は片付けの手伝いに来ているんです。その分、しっかり働かないと……」
「それは、こちらでやるから! ユズはもっと軽い本を……」
「アズールス」
すると、ずっと二人の様子を見ていたガルシアが声を掛けた。
「過保護なのはいいけどよ。嬢ちゃんの言う通りでもある。嬢ちゃんは片付けの手伝いに来てくれているんだ。俺達が邪魔する訳にいかないだろう」
「それは、そうだが……」
アズールスは迷っているようだったが、ガルシアは続けた。
「それに、嬢ちゃんは子供じゃないんだ。自分の限界は自分がよくわかっているだろう。カルセドニーさんにも、嬢ちゃんのやりたいようにやらせろって言われていただろう」
「そうなんですか? アズールスさん?」
柚子は知らなかったが、どうやらカルセドニーから柚子について何か言われていたらしい。
アズールスは迷っているようだったが、やがて「そうだな」と自分を納得させたようだった。
「ガルシアの言う事も一理ある。ユズは子供じゃないんだ。やりたいようにさせよう」
「そういう事だ。さあ、早く片付けてしまおう」
ガルシアは分厚い本を一冊持つと、館内に入っていった。
柚子達もガルシアの後を追いかけて、館内に入ったのだ。
「そうなんですね……」
「だけど、その代わりにこっちを手伝ってくれるとありがてぇ。俺も古傷が痛んで、重い物を動かすのに時間がかかってよ」
ガルシアは軍に所属していた頃、村民達の喧嘩の仲裁に入ったら、相手が持っていたナイフて腕を斬られてしまったらしい。
斬られた場所が悪かったようでそれ以来、剣や馬の手綱にど長時間、物を持つ事が辛くなってしまった。
それがきっかけで軍を辞めたが、たまたまカルセドニーの軍時代の上司から公文書館の人間を探していると言われてた。
そうして、この地に移住して、公文書館で働く事にした。
ちなみに、その上司はアズールスを公文書館に誘った者でもあるらしい。
「わかりました。重い物は私が運ぶので、遠慮なく言って下さい」
「俺も手伝おう。ガルシア」
アズールスも頷くと、袖を捲り上げた。
「助かるよ。じゃあ、ここにある本を館内に持って行ってくれるか?」
ガルシアが示した布の上には、数冊の分厚い本が重なっていた。
昨日、濡れていた本の重石に使っていた本だと柚子にも見覚えがあったのだった。
「わかりました」
柚子が数冊を持ち上げると、慌てたアズールスに止められた。
「ユズ、さすがに一度に持ち過ぎではないだろうか!? これでは腕を痛めてしまう!」
「そうですか……? これでもまだ軽い方ですよ。まだ持てそうなんですが……」
柚子が更にもう一冊取ろうとすると、アズールスが止めた。
「いいから! ユズは女性なんだ! 無理はしなくていい!」
「でも、このままじゃあ、日が暮れちゃいますよ……?」
柚子達の目の前には、まだまだ本があった。乾燥中の本や、その本の重石になっている本を合わせると、数十冊になるだろうか。
「それに、私は片付けの手伝いに来ているんです。その分、しっかり働かないと……」
「それは、こちらでやるから! ユズはもっと軽い本を……」
「アズールス」
すると、ずっと二人の様子を見ていたガルシアが声を掛けた。
「過保護なのはいいけどよ。嬢ちゃんの言う通りでもある。嬢ちゃんは片付けの手伝いに来てくれているんだ。俺達が邪魔する訳にいかないだろう」
「それは、そうだが……」
アズールスは迷っているようだったが、ガルシアは続けた。
「それに、嬢ちゃんは子供じゃないんだ。自分の限界は自分がよくわかっているだろう。カルセドニーさんにも、嬢ちゃんのやりたいようにやらせろって言われていただろう」
「そうなんですか? アズールスさん?」
柚子は知らなかったが、どうやらカルセドニーから柚子について何か言われていたらしい。
アズールスは迷っているようだったが、やがて「そうだな」と自分を納得させたようだった。
「ガルシアの言う事も一理ある。ユズは子供じゃないんだ。やりたいようにさせよう」
「そういう事だ。さあ、早く片付けてしまおう」
ガルシアは分厚い本を一冊持つと、館内に入っていった。
柚子達もガルシアの後を追いかけて、館内に入ったのだ。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です

出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる