【完結】異世界で子作りしないで帰る方法〈加筆修正版〉

夜霞

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頼み【4】

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「本当はよ。この機会に本の整理をする館内の片付けを嬢ちゃんに手伝って欲しいんだけどよ。地下にある軍の機密資料には嬢ちゃんを近づけられないって、カルセドニーさんが言っていてな」
「そうなんですね……」
「だけど、その代わりにこっちを手伝ってくれるとありがてぇ。俺も古傷が痛んで、重い物を動かすのに時間がかかってよ」

ガルシアは軍に所属していた頃、村民達の喧嘩の仲裁に入ったら、相手が持っていたナイフて腕を斬られてしまったらしい。
斬られた場所が悪かったようでそれ以来、剣や馬の手綱にど長時間、物を持つ事が辛くなってしまった。
それがきっかけで軍を辞めたが、たまたまカルセドニーの軍時代の上司から公文書館の人間を探していると言われてた。
そうして、この地に移住して、公文書館で働く事にした。
ちなみに、その上司はアズールスを公文書館に誘った者でもあるらしい。

「わかりました。重い物は私が運ぶので、遠慮なく言って下さい」
「俺も手伝おう。ガルシア」
アズールスも頷くと、袖を捲り上げた。
「助かるよ。じゃあ、ここにある本を館内に持って行ってくれるか?」
ガルシアが示した布の上には、数冊の分厚い本が重なっていた。
昨日、濡れていた本の重石に使っていた本だと柚子にも見覚えがあったのだった。
「わかりました」
柚子が数冊を持ち上げると、慌てたアズールスに止められた。

「ユズ、さすがに一度に持ち過ぎではないだろうか!? これでは腕を痛めてしまう!」 
「そうですか……? これでもまだ軽い方ですよ。まだ持てそうなんですが……」
柚子が更にもう一冊取ろうとすると、アズールスが止めた。
「いいから! ユズは女性なんだ! 無理はしなくていい!」 
「でも、このままじゃあ、日が暮れちゃいますよ……?」
柚子達の目の前には、まだまだ本があった。乾燥中の本や、その本の重石になっている本を合わせると、数十冊になるだろうか。
 
「それに、私は片付けの手伝いに来ているんです。その分、しっかり働かないと……」
「それは、こちらでやるから! ユズはもっと軽い本を……」
「アズールス」
すると、ずっと二人の様子を見ていたガルシアが声を掛けた。
「過保護なのはいいけどよ。嬢ちゃんの言う通りでもある。嬢ちゃんは片付けの手伝いに来てくれているんだ。俺達が邪魔する訳にいかないだろう」 
「それは、そうだが……」
アズールスは迷っているようだったが、ガルシアは続けた。
「それに、嬢ちゃんは子供じゃないんだ。自分の限界は自分がよくわかっているだろう。カルセドニーさんにも、嬢ちゃんのやりたいようにやらせろって言われていただろう」
「そうなんですか? アズールスさん?」
柚子は知らなかったが、どうやらカルセドニーから柚子について何か言われていたらしい。 
アズールスは迷っているようだったが、やがて「そうだな」と自分を納得させたようだった。

「ガルシアの言う事も一理ある。ユズは子供じゃないんだ。やりたいようにさせよう」
「そういう事だ。さあ、早く片付けてしまおう」
ガルシアは分厚い本を一冊持つと、館内に入っていった。
柚子達もガルシアの後を追いかけて、館内に入ったのだ。
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