【完結】異世界で子作りしないで帰る方法〈加筆修正版〉

夜霞

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後片づけ【8】

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「黒髪黒目って、珍しいんですね!」
先日の誘拐事件の際も、犯人達は柚子を珍しがっていたが、その理由がようやくわかった。滅多にいない黒髪黒目だから、高く売れると思われたのだろう。
「ああ、そうだな。俺もアズールス以外で黒髪の者を見るのは初めてだ。更に黒目にもなると嬢ちゃんが初めてだな」
「黒髪といえば、アズールスさんも黒髪ですよね。という事は、アズールスさんにも異国人の血が流れているんでしょうか?」
アズールスも夜空の様な、綺麗な黒髪を持っていた。柚子はこの世界に来てから、アズールス以外で黒髪の者を見た事が無かった。
「俺もちゃんと聞いたわけではないが、アズールスの祖先にも異国人の血が流れていると聞いたな。アズールスは先祖返りだとか」
「祖先ですか……」
以前、柚子は姿絵でアズールスの家族を見た事があったが、言われてみればアズールスの家族はアズールス以外、黒髪ではなかった。
アズールスだけ、祖先の血が濃く現れたのだろうか。

柚子が考えていると、アズールスが戻って来たのだった。
「待たせたな、ユズ」
「アズールスさん、もういいんですか?」
「ああ。大丈夫だ。カルセドニーさんと話していたんだな」
アズールスは「ユズの相手をありがとうございます」と、カルセドニーに一礼をした。
カルセドニーは「気にすんな」っと、片手を振ったのだった。
「こっちも話せて良かった。あのアズールスが夢中になる恋人だか嫁だかが、ずっと気になっていたからな」
「ですから、恋人でも、嫁でもなく、ただの居候です……」
なかなか覚えてくれないカルセドニーに、小声で返しつつ、柚子は荷物をまとめ始めたのだった。
「これから、馬車を呼ぶからな。すぐ見つかるといいが……」 
「それなら、俺が乗って来た馬車を使え」
アズールスが考えていると、カルセドニーが外を指した。
「公文書館の近くの土地を借りて、馬車を停めている。その近くの民家に御者がいるはずだから、声を掛けて乗せてもらえ」
アズールスは目を瞬いた。
「いいんですか?」
「俺は今晩も公文書館に泊まり込んで火事の始末書を書かねばならん。馬車も屋敷に返さなきゃならないし、なんなら嬢ちゃんを乗せてから屋敷に戻っても変わらない」
カルセドニーの屋敷は、アズールスの屋敷の途中にあるらしい。
アズールスの屋敷に寄ってから、カルセドニーの屋敷に戻っても大差無いとの事だった。

「ありがとうございます。カルセドニーさん」
「ありがとうございます!」
二人が礼を言うと、カルセドニーは笑ったのだった。
「嬢ちゃんへのささやかな礼でもあるから、気にすんな」
そうして、カルセドニーは馬車の場所をアズールスに教えると、仮眠を取りに奥の部屋に向かったのだった。
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