【完結】異世界で子作りしないで帰る方法〈加筆修正版〉

夜霞

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食料庫に誰かいる!・3

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「ユズ様、ユズ様……」
夜中、柚子が自室で寝ていると肩を揺すられた。
「んっ……」
柚子が目を覚ますと、ベッド脇にはファミリアが立っていたのだった。
「ユズ様、ユズ様、起きて下さい……!」
小声で声を掛けながら、肩を揺すってくるファミリアに、柚子は目をこすりながら返事をした。
「どうしたの? ファミリアちゃん……」
室内は真っ暗だった。おそらく、柚子が寝てから、さほど時間は経っていないのだろう。
ファミリアは「起こしてごめんなさい……」と謝ると、不安そうな顔になったのだった。

「さっきから食料庫で変な音が聞こえるの……。それが怖くて……」
「食料庫で変な音?」
屋敷内の食料を保管している食料庫は、ファミリアやマルゲリタが使っている使用人部屋のすぐ側にあった。
主に穀物や保存のきく食料を保管するのに使用しているらしい。
「うん。ガサゴソって、音が聞こえてくるから気になって……」
ファミリアによると、部屋で寝ていると物音が聞こえてきて起こされてしまった。
耳をすますと音の出どころは、食料庫から聞こえてくるようだった。
けれども、ファミリアの隣の部屋を使っているマルゲリタはベッドで寝ており、アズールスはまだ帰って来ておらず、柚子もここで寝ていた以上、食料庫に居るのが屋敷の者では無いのは確かだった。
怖くなったファミリアだったが、祖母のマルゲリタを起こし辛く、アズールスも不在にしている以上、柚子を頼って来たという事だった。

「泥棒かな。どうしよう……」
ファミリアは柚子の袖を不安そうに握ってきた。
「大丈夫だよ。ファミリアちゃん」
「ユズ様……」
柚子はベッドから起き上がると、靴を履いた。
「私が見に行ってみるから」
「でも、ユズ様に何かあったら、旦那様が……」
ファミリアはますます柚子の服の袖をギュッと握ってきたが、柚子はそっと手を離したのだった。
「大丈夫。アズールスさんから屋敷とファミリアちゃん達を託されたんだから、私がしっかりしないとね」

アズールスから「屋敷とマルゲリタ達を頼む」と、柚子は言われていた。
(アズールスさんが不在の間は、私がしっかりしないと……!)
柚子はグッと両手を握りしめると、ファミリアと共に食料庫に向かったのだった。
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