56 / 109
食料庫に誰かいる!・3
しおりを挟む
「ユズ様、ユズ様……」
夜中、柚子が自室で寝ていると肩を揺すられた。
「んっ……」
柚子が目を覚ますと、ベッド脇にはファミリアが立っていたのだった。
「ユズ様、ユズ様、起きて下さい……!」
小声で声を掛けながら、肩を揺すってくるファミリアに、柚子は目をこすりながら返事をした。
「どうしたの? ファミリアちゃん……」
室内は真っ暗だった。おそらく、柚子が寝てから、さほど時間は経っていないのだろう。
ファミリアは「起こしてごめんなさい……」と謝ると、不安そうな顔になったのだった。
「さっきから食料庫で変な音が聞こえるの……。それが怖くて……」
「食料庫で変な音?」
屋敷内の食料を保管している食料庫は、ファミリアやマルゲリタが使っている使用人部屋のすぐ側にあった。
主に穀物や保存のきく食料を保管するのに使用しているらしい。
「うん。ガサゴソって、音が聞こえてくるから気になって……」
ファミリアによると、部屋で寝ていると物音が聞こえてきて起こされてしまった。
耳をすますと音の出どころは、食料庫から聞こえてくるようだった。
けれども、ファミリアの隣の部屋を使っているマルゲリタはベッドで寝ており、アズールスはまだ帰って来ておらず、柚子もここで寝ていた以上、食料庫に居るのが屋敷の者では無いのは確かだった。
怖くなったファミリアだったが、祖母のマルゲリタを起こし辛く、アズールスも不在にしている以上、柚子を頼って来たという事だった。
「泥棒かな。どうしよう……」
ファミリアは柚子の袖を不安そうに握ってきた。
「大丈夫だよ。ファミリアちゃん」
「ユズ様……」
柚子はベッドから起き上がると、靴を履いた。
「私が見に行ってみるから」
「でも、ユズ様に何かあったら、旦那様が……」
ファミリアはますます柚子の服の袖をギュッと握ってきたが、柚子はそっと手を離したのだった。
「大丈夫。アズールスさんから屋敷とファミリアちゃん達を託されたんだから、私がしっかりしないとね」
アズールスから「屋敷とマルゲリタ達を頼む」と、柚子は言われていた。
(アズールスさんが不在の間は、私がしっかりしないと……!)
柚子はグッと両手を握りしめると、ファミリアと共に食料庫に向かったのだった。
夜中、柚子が自室で寝ていると肩を揺すられた。
「んっ……」
柚子が目を覚ますと、ベッド脇にはファミリアが立っていたのだった。
「ユズ様、ユズ様、起きて下さい……!」
小声で声を掛けながら、肩を揺すってくるファミリアに、柚子は目をこすりながら返事をした。
「どうしたの? ファミリアちゃん……」
室内は真っ暗だった。おそらく、柚子が寝てから、さほど時間は経っていないのだろう。
ファミリアは「起こしてごめんなさい……」と謝ると、不安そうな顔になったのだった。
「さっきから食料庫で変な音が聞こえるの……。それが怖くて……」
「食料庫で変な音?」
屋敷内の食料を保管している食料庫は、ファミリアやマルゲリタが使っている使用人部屋のすぐ側にあった。
主に穀物や保存のきく食料を保管するのに使用しているらしい。
「うん。ガサゴソって、音が聞こえてくるから気になって……」
ファミリアによると、部屋で寝ていると物音が聞こえてきて起こされてしまった。
耳をすますと音の出どころは、食料庫から聞こえてくるようだった。
けれども、ファミリアの隣の部屋を使っているマルゲリタはベッドで寝ており、アズールスはまだ帰って来ておらず、柚子もここで寝ていた以上、食料庫に居るのが屋敷の者では無いのは確かだった。
怖くなったファミリアだったが、祖母のマルゲリタを起こし辛く、アズールスも不在にしている以上、柚子を頼って来たという事だった。
「泥棒かな。どうしよう……」
ファミリアは柚子の袖を不安そうに握ってきた。
「大丈夫だよ。ファミリアちゃん」
「ユズ様……」
柚子はベッドから起き上がると、靴を履いた。
「私が見に行ってみるから」
「でも、ユズ様に何かあったら、旦那様が……」
ファミリアはますます柚子の服の袖をギュッと握ってきたが、柚子はそっと手を離したのだった。
「大丈夫。アズールスさんから屋敷とファミリアちゃん達を託されたんだから、私がしっかりしないとね」
アズールスから「屋敷とマルゲリタ達を頼む」と、柚子は言われていた。
(アズールスさんが不在の間は、私がしっかりしないと……!)
柚子はグッと両手を握りしめると、ファミリアと共に食料庫に向かったのだった。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる