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食料庫に誰かいる!・2
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「そうだったんですね……。じゃあ、アズールスさんはまた現場に?」
「ええ。公文書館にも被害が出たとの事で、その後片付けに行かれましたよ」
どうやら、火の手は公文書館のすぐ側まで迫ってきたようで、アズールス達を始めとする公文書館の関係者で貴重な資料を外に運び出したらしい。
他にも公文書館の建物の外壁の一部も燃えてしまい、修繕作業を行なっているらしい、
「それでは、アズールスさんはしばらく忙しいですよね」
「そうですわね……。お身体を壊されなければいいのですが……」
「そうですね……」
マルゲリタは頬に片手を当てて心配していたが、柚子も同じ気持ちだった。
柚子が試しに窓を開けると、もう焦げ臭くはなかった。
外はからりと晴れた快晴だった。
「もう避難の用意は必要なさそうなので、片付けを手伝いますね」
「まあ、ありがとうございます。ユズ様」
柚子はまとめていた避難道具の解体作業を手伝ったのだった。
結局、その日は夜になってもアズールスは戻って来なかった。
マルゲリタによると、これまでもアズールスは仕事が忙しい時は公文書館に泊まり、着替えの為だけに屋敷に帰り、すぐに公文書館に戻って行くという、生活をしていた事があったらしい。
柚子が屋敷に来てからは、そういう事は減ったらしいが、今回は火事の後始末もあって、しばらく屋敷に帰って来れないのではと、マルゲリタは心配していたのだった。
「アズールスさん心配ですね。もし明日の昼になっても戻って来なかったら、公文書館に様子を見に行ってもいいですか?」
夕食後、柚子はお茶を飲みながら、向かいに座るマルゲリタに訊ねる。
屋敷内の片付けは終わったので、もし公文書館の片付けに人手が必要なら、昼間は柚子も片付けを手伝いに行った方がいいかもしれないと思っての事だった。
マルゲリタは「その時はユズ様にお願いします」と頷いたのだった。
「今は旦那様から預かった屋敷を管理しましょう」
「そうですね。アズールスさんが帰って来た時に、屋敷が散らかっていたら、それこそ怒られそうです」
柚子はマルゲリタと顔を見合わせると、笑い合ったのだった。
「それでは、私は湯の用意をしますので、ユズ様は湯浴みを済ませて下さい」
「ありがとうございます。マルゲリタさん」
柚子はお茶を飲み干すと、食器を片付けたのだった。
「ええ。公文書館にも被害が出たとの事で、その後片付けに行かれましたよ」
どうやら、火の手は公文書館のすぐ側まで迫ってきたようで、アズールス達を始めとする公文書館の関係者で貴重な資料を外に運び出したらしい。
他にも公文書館の建物の外壁の一部も燃えてしまい、修繕作業を行なっているらしい、
「それでは、アズールスさんはしばらく忙しいですよね」
「そうですわね……。お身体を壊されなければいいのですが……」
「そうですね……」
マルゲリタは頬に片手を当てて心配していたが、柚子も同じ気持ちだった。
柚子が試しに窓を開けると、もう焦げ臭くはなかった。
外はからりと晴れた快晴だった。
「もう避難の用意は必要なさそうなので、片付けを手伝いますね」
「まあ、ありがとうございます。ユズ様」
柚子はまとめていた避難道具の解体作業を手伝ったのだった。
結局、その日は夜になってもアズールスは戻って来なかった。
マルゲリタによると、これまでもアズールスは仕事が忙しい時は公文書館に泊まり、着替えの為だけに屋敷に帰り、すぐに公文書館に戻って行くという、生活をしていた事があったらしい。
柚子が屋敷に来てからは、そういう事は減ったらしいが、今回は火事の後始末もあって、しばらく屋敷に帰って来れないのではと、マルゲリタは心配していたのだった。
「アズールスさん心配ですね。もし明日の昼になっても戻って来なかったら、公文書館に様子を見に行ってもいいですか?」
夕食後、柚子はお茶を飲みながら、向かいに座るマルゲリタに訊ねる。
屋敷内の片付けは終わったので、もし公文書館の片付けに人手が必要なら、昼間は柚子も片付けを手伝いに行った方がいいかもしれないと思っての事だった。
マルゲリタは「その時はユズ様にお願いします」と頷いたのだった。
「今は旦那様から預かった屋敷を管理しましょう」
「そうですね。アズールスさんが帰って来た時に、屋敷が散らかっていたら、それこそ怒られそうです」
柚子はマルゲリタと顔を見合わせると、笑い合ったのだった。
「それでは、私は湯の用意をしますので、ユズ様は湯浴みを済ませて下さい」
「ありがとうございます。マルゲリタさん」
柚子はお茶を飲み干すと、食器を片付けたのだった。
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