【完結】異世界で子作りしないで帰る方法〈加筆修正版〉

夜霞

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火事!?・5

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「という事で、アズールスを借りて行きますね」
コースタルがアズールスを促すと、アズールスも諦めたように、「ああ……。わかった」と承諾したのだった。
「では、俺はコースタル達を手伝ってくる。マルゲリタ、後は頼む」
「承知しました」
マルゲリタが返事を返すと、アズールスはファミリアにも「マルゲリタを頼んだぞ」と声を掛けた。
「はい!」と、ファミリアがマルゲリタの腕を取りつつ返事を返すと、アズールスは最後に柚子の方を向いた。
アズールスは真っ直ぐに柚子を見つめると、柚子の両肩に触れた。
「ユズ、屋敷やマルゲリタ達を頼む。……何かあったら、貴女が守ってくれないか」 
「アズールスさん……」
アズールスは真っ直ぐに柚子を見つめた。
「すぐに戻ってくる。俺が帰ってくるまでは、誰にも屋敷には入れるな。誰が訪ねて来ても出なくていい。……今度こそ、ユズに何かあったらと思うと……。胸が苦しくなる」
「大丈夫ですよ。アズールスさんこそ気をつけて下さい。無理はしないで」
柚子の言葉に、アズールスはフッと笑ったのだった。
「勿論だ。……これが終わったら話そう。俺達の今後について」
「アズールスさん……」
「では、行ってくる」
アズールスは柚子から手を離すと、マルゲリタが用意したマントを羽織って屋敷を出た。
外にはコースタルが乗って来た馬車が停まっており、先にコースタルが乗り込んでいた。
アズールスは外まで見送りに来た柚子に、小さく微笑むと馬車に乗り込んだのだった。
コースタルが馬車の天井を叩いて御者に合図を送ると、二人が乗った馬車は火の手が上がっている方角へと消えて行ったのだった。

「アズールスさんは大丈夫でしょうか……?」
不安そうに呟いた柚子は、後ろからやって来たマルゲリタに「大丈夫ですよ」と返されたのだった。
「旦那様は元は軍人です。必ず戻って来ますよ」  
「……そうですね。帰ってくると信じています」
柚子の胸の中は不安で一杯だったが、今はマルゲリタとアズールスの言葉を信じようと思ったのだった。
「ユズ様……」
不安に見上げてくるファミリアに、柚子は「大丈夫だよ」と安心させるように微笑んだのだ。
「今はアズールスさんに託されたモノを守りましょう。もし、ここまで火の手が迫ってしまったら、すぐに逃げられるように」
アズールスは「屋敷とマルゲリタ達を頼む」と柚子に託した。
もしも、ここまで火の手が迫ってしまったら、柚子はマルゲリタ達を連れて避難する必要があるだろう。……アズールスの宝物と共に。
それまでは、柚子は主人が不在の屋敷を守らなければならない。
アズールスが帰ってくる時までーー。
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