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火事!?・4
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柚子達が階段を降りていると、階下からは話し声が聞こえきた。
玄関のドアの前では、アズールスと寝間着にガウンを羽織ったマルゲリタ、そうしてシャツとズボンという簡単な服装のコースタルが話していたのだった。
「……では、火の手は判明しているんだな」
「ああ。ただ、風向きもあって火の手が早すぎる。公文書館にも被害が出るかもしれない」
「怖いですね」
すると、話していたコースタルが柚子の姿に気づいた。
「ユズちゃん、ファミリアちゃん!」
「こんばんは、コースタスさん」
コースタスの言葉で、柚子達の姿に気づいたアズールスとマルゲリタも柚子達を見つめたのだった。
先日の誘拐事件の後に、後処理と被害者への事情聴取という事で、コースタルが部下を伴って屋敷に来ていた。
コースタルとはその時に会ったのが最後だったので、それ以来という事になる。
「火事の件ですか?」
「そう。火の手が早くて、駆けつけた軍人達だけじゃ消火が間に合わなくて。それで、男手を借りに来たんだ」
その男手であるアズールスは、苦い顔をしていた。
「だが、公文書館も心配だが、屋敷やユズ達も心配だ」
コースタルは呆れたように肩を落とすと、アズールスを指して「さっきからこうなんだよ~」柚子に助けを求めて来たのだった。
「ユズちゃんからも言ってよ。今のところ、この屋敷は火の手から遠いから、アズールスが居なくても大丈夫だって」
「そうなんですか? アズールスさん」
柚子がアズールスに訊ねると、アズールスは「……ああ」と呟いた。
「だが、屋敷の者達が心配で……」
「私達は大丈夫ですから、コースタルさんを手伝ってあげて下さい。そうですよね?」
柚子がマルゲリタを促すと、マルゲリタも「そうですよ」と、呆れ気味に答えたのだった。
「先程から申し上げているように、いざとなったら、私達も避難しますので。旦那様の『大切なモノ』と共に」
「そうですよ! いざとなったら、私が書斎の引き出しから持ち出します!」
柚子はアズールスが大切に書斎にしまっているアズールスの家族の姿絵と、柚子をこの世界に呼ぶ時に使った召喚書の事を言ったが、何故か、アズールス以外の三人は苦笑したのだった。
「ああ、そうだな……。これなら安心できるな……。頼もしい」
アズールスまでもが肩を落としたので、柚子は首を傾げる事になった。
「あの、私、何か間違えましたか?」
「……いや、何も間違ってない」
「何も間違っていないよ。ユズ様」
アズールスとファミリアは否定をしたが、コースタルは「アズールス、苦労するな」と苦笑しつつアズールスに同情したのだった。
玄関のドアの前では、アズールスと寝間着にガウンを羽織ったマルゲリタ、そうしてシャツとズボンという簡単な服装のコースタルが話していたのだった。
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すると、話していたコースタルが柚子の姿に気づいた。
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先日の誘拐事件の後に、後処理と被害者への事情聴取という事で、コースタルが部下を伴って屋敷に来ていた。
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「だが、公文書館も心配だが、屋敷やユズ達も心配だ」
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「ユズちゃんからも言ってよ。今のところ、この屋敷は火の手から遠いから、アズールスが居なくても大丈夫だって」
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「だが、屋敷の者達が心配で……」
「私達は大丈夫ですから、コースタルさんを手伝ってあげて下さい。そうですよね?」
柚子がマルゲリタを促すと、マルゲリタも「そうですよ」と、呆れ気味に答えたのだった。
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「何も間違っていないよ。ユズ様」
アズールスとファミリアは否定をしたが、コースタルは「アズールス、苦労するな」と苦笑しつつアズールスに同情したのだった。
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