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働きたいです!・3
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(元の世界に住んでいた時は、計算機があったから楽だったんだけどね……)
マルゲリタの許可を得て、特別に食堂のテーブルに筆記具を広げたファミリアは、柚子が用意した計算問題を解いていた。
その様子を見ながら、柚子はこの世界に計算機が無い事を悔やんだのだった。
計算機があれば、わざわざ紙に書かずとも計算まで出来た。複雑な計算式や税率までも。
この世界には元の世界ほどの税率では無いが、やはり領主に税金を納めなければならないらしく、たまにアズールスが計算している姿を柚子は見ていたのだった。
「ユズ様! この計算はこれでいいの?」
ファミリアに声を掛けられて、柚子は「どれどれ」と別の紙に同じ計算式を書いて、答えが合うか試した。
「うんうん。これであってるよ!」
「本当!? 良かった~」
ホッとしたように胸を撫で下ろすファミリアに、柚子も釣られて微笑んだ。
「ファミリアちゃんはもう少し引き算と割り算をやった方がいいかもしれないね。そうしたら、今度は分数もやってみようか?」
「分数? また難しいの?」
ファミリアが嫌そうな顔をしたので、柚子は「そんな事は無いよ」と首を振ったのだった。
「かけ算が出来て、やり方を覚えれば、簡単に出来るよ」
「本当?」
「うん。ちゃんと教えるから、一緒にやってみようね」
「うん!」
すると、マルゲリタがお茶のセットを持ってニ人の元にやってきた。
「ニ人共、そろそろ休憩しませんか?」
「あれ? もうそんな時間なんですか?」
柚子はマルゲリタからお茶と軽食を受け取ると、ファミリアが片付けたテーブルに並べるのを手伝った。
「ええ。もうお昼になりました。声を掛けようかとも思いましたが、二人共にすっかり夢中になっていましたので」
「そうだったんですね。すみません……」
「いえいえ。私の代わりにファミリアの勉強を見てくださって、ありがとうございます」
柚子はマルゲリタが淹れてくれたお茶を受け取った。
この世界の女性は、昼食は軽く済ませるのが多いようで、マルゲリタもファミリアも昼食はお茶とパンなどを軽く摘むだけであった。
元の世界にいた頃の柚子は、昼間はラーメンやハンバーグなどガッツリ食べて、夜は軽くしか食べない生活を送っていたので、この世界に来たばかりの頃は、少々物足りなく感じていたのだった。
けれども、その分、この世界にはおやつの時間があるので、またそこで軽く食べるらしい。
そこではケーキやマドレーヌなどの焼き菓子を食べていたのだった。
「教師としての経験が無い私が、ファミリアちゃんに勉強を教えるのもどうかと思っていたのですが……」
「とんでもありません。実は私も学校に通っていないので、ファミリアに教えられる事が少なくて……」
「え? そうなんですか!?」
「そうです」と、マルゲリタはおっとり笑いながら、柚子に軽食のパンと木の実のジャムを取ってくれたのだった。
マルゲリタの許可を得て、特別に食堂のテーブルに筆記具を広げたファミリアは、柚子が用意した計算問題を解いていた。
その様子を見ながら、柚子はこの世界に計算機が無い事を悔やんだのだった。
計算機があれば、わざわざ紙に書かずとも計算まで出来た。複雑な計算式や税率までも。
この世界には元の世界ほどの税率では無いが、やはり領主に税金を納めなければならないらしく、たまにアズールスが計算している姿を柚子は見ていたのだった。
「ユズ様! この計算はこれでいいの?」
ファミリアに声を掛けられて、柚子は「どれどれ」と別の紙に同じ計算式を書いて、答えが合うか試した。
「うんうん。これであってるよ!」
「本当!? 良かった~」
ホッとしたように胸を撫で下ろすファミリアに、柚子も釣られて微笑んだ。
「ファミリアちゃんはもう少し引き算と割り算をやった方がいいかもしれないね。そうしたら、今度は分数もやってみようか?」
「分数? また難しいの?」
ファミリアが嫌そうな顔をしたので、柚子は「そんな事は無いよ」と首を振ったのだった。
「かけ算が出来て、やり方を覚えれば、簡単に出来るよ」
「本当?」
「うん。ちゃんと教えるから、一緒にやってみようね」
「うん!」
すると、マルゲリタがお茶のセットを持ってニ人の元にやってきた。
「ニ人共、そろそろ休憩しませんか?」
「あれ? もうそんな時間なんですか?」
柚子はマルゲリタからお茶と軽食を受け取ると、ファミリアが片付けたテーブルに並べるのを手伝った。
「ええ。もうお昼になりました。声を掛けようかとも思いましたが、二人共にすっかり夢中になっていましたので」
「そうだったんですね。すみません……」
「いえいえ。私の代わりにファミリアの勉強を見てくださって、ありがとうございます」
柚子はマルゲリタが淹れてくれたお茶を受け取った。
この世界の女性は、昼食は軽く済ませるのが多いようで、マルゲリタもファミリアも昼食はお茶とパンなどを軽く摘むだけであった。
元の世界にいた頃の柚子は、昼間はラーメンやハンバーグなどガッツリ食べて、夜は軽くしか食べない生活を送っていたので、この世界に来たばかりの頃は、少々物足りなく感じていたのだった。
けれども、その分、この世界にはおやつの時間があるので、またそこで軽く食べるらしい。
そこではケーキやマドレーヌなどの焼き菓子を食べていたのだった。
「教師としての経験が無い私が、ファミリアちゃんに勉強を教えるのもどうかと思っていたのですが……」
「とんでもありません。実は私も学校に通っていないので、ファミリアに教えられる事が少なくて……」
「え? そうなんですか!?」
「そうです」と、マルゲリタはおっとり笑いながら、柚子に軽食のパンと木の実のジャムを取ってくれたのだった。
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