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元の世界に帰る方法・2
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柚子がこの世界に来てから月がピンク色になったのは、最初の日だけであった。
「その、月がピンク色になる日はいつですか?」
「……明日だ。それを逃したら、次は召喚主の願いを叶えるまで、帰る事は出来ない」
明日。明日が柚子が元の世界に帰れる、唯一のチャンスなのだ。
そして、柚子は疑問に思った事をアズールスに聞いたのだった。
「どうして、今更、教えてくれるんですか? 黙っていれば、知らないままでいられたのに」
そうしたら、柚子は元の世界に帰れる方法を知らないまま、アズールスの願いを叶えるまでこの世界に留められるのに。
柚子が訊ねると、アズールスは目を逸らした。
「……俺にもわからない。だが、ユズは自分の事を話してくれただろう。今度は俺も話さなければならないと思ったんだ」
そうして、アズールスは召喚書を元の場所に戻すと、白手袋を外した。
「色々と明日までやる事があるだろう。俺の事は気にしないで、自分のやるべき事をやりなさい」
アズールスはそのまま出て行った。
「アズールスさん……」
後には柚子と、アズールスが外した白手袋だけが残されたのだった。
「その、月がピンク色になる日はいつですか?」
「……明日だ。それを逃したら、次は召喚主の願いを叶えるまで、帰る事は出来ない」
明日。明日が柚子が元の世界に帰れる、唯一のチャンスなのだ。
そして、柚子は疑問に思った事をアズールスに聞いたのだった。
「どうして、今更、教えてくれるんですか? 黙っていれば、知らないままでいられたのに」
そうしたら、柚子は元の世界に帰れる方法を知らないまま、アズールスの願いを叶えるまでこの世界に留められるのに。
柚子が訊ねると、アズールスは目を逸らした。
「……俺にもわからない。だが、ユズは自分の事を話してくれただろう。今度は俺も話さなければならないと思ったんだ」
そうして、アズールスは召喚書を元の場所に戻すと、白手袋を外した。
「色々と明日までやる事があるだろう。俺の事は気にしないで、自分のやるべき事をやりなさい」
アズールスはそのまま出て行った。
「アズールスさん……」
後には柚子と、アズールスが外した白手袋だけが残されたのだった。
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