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47話 ブレスレット
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僕は今、相当悩んでいる。
ドラゴンの核を埋め込んだブレスレットをいつ、どのタイミングでセシリア様に渡すべきか。
職人にお願いしてブレスレットを作ってもらうまでは良かったのにな。
その完成品を受け取ってからしばらく経つけど未だに渡せてない。
そもそも受け取ってくれるかな。
悩んでいるときは決まって王宮の見晴らしのいいバルコニーに来るんだけど、解決策が出てこない。
どうしようかな。これ。
「あっまた会ったね。」
「えっ!せっセシリア様!?」
なんでこのタイミングで!?いや、会えるのはうれしいけど。
急いでブレスレットをポケットにしまう。
「何?どうしたの?」
「あっいや、それより奇遇ですね。」
「ここに来たら、フランツ君に会える気がして。」
「そうだったんですか。ここにいて良かったです。」
「あのさ、私の話聞いてくれる?」
セシリア様はいつになく真剣な表情だ。
「もちろんです。聞かせてください。」
「――私、怖いんだ。」
そうだよな。
魔王の復活も近くて、いよいよ魔物の王と戦わないといけないわけで、普通に考えたら、そりゃ怖いよな。
なんで普通の女の子が魔王を倒すために命を懸けないといけないのだろう。
彼女は別に望んだわけではないのに……。
彼女もまたゲームの設定に縛れているんだよな。
「そうですよね。誰かは魔王と対峙することになりますが、セシリア様はそれを望んだわけではないですもんね。」
「うん……。もしかしたら生きて帰れないって思うと……ね。」
「セシリア様は死なせません。僕が命を懸けて守ります。」
「ダメだよ。フランツ君が命を懸けちゃ。私はフランツ君に生きていてもらいたいから。」
「そうですよね。自分のせいで誰かが死んだら、残された方は辛いですよね。」
「うーん。それもそうだけど、それだけじゃないというか……」
「それだけじゃない?」
「ねぇ。フランツ君はなんで戦ってるの?誰にも強制されてるわけじゃないんだよね?」
「そうですね。僕は僕の意思でここにいます。僕がいつも思っているのは、もし自分が動くことで他の人の役に立てるのなら全力で動く、です。」
「すごいね。なんでそんなに他人のことを思いやれるの?」
「うーん。どうしてでしょう。僕の感覚では他人を思いやっているわけではないのかもしれません。ただ、僕がやりたいだけというか、人の役に立って、僕という存在を認めてもらいたいだけなのかもしれません。なので、そんなに大層なことではなく、完全に自己満足ですね。」
うん。僕はセシリア様や、みんなに認めてもらいたいだけなのかも。
「そうなんだ。」
「すみません。僕の話ばかり。」
「ううん。聞けてよかった。」
「セシリア様は、魔王との戦いが終わったら何がしたいですか?」
「うーん。そうだな。あんまり考えたことなかったけど、色んな国に行ってみたいな。ずっと、ここにいるからね。」
「いいですね!そうだ。少し息抜きをしに行きませんか?」
「え?行くって?」
「王都です。少しでも、気分を変えられればと思いまして。」
「え?でも私の場合、街に出るなら申請しないと。」
「それに関しては僕に考えがあります。」
僕はセシリア様に魔法をかける。
「え?これって。」
「はい。変装です。これで誰も聖女様だって気が付きません。」
「ふふっ。意外に悪いこと考えるんだね。」
「短い時間だけですから。でも、もし嫌なら無理にとは言いません。」
「ううん。行きたい。」
「じゃぁ行きましょ!僕が案内します。」
僕らは王宮を抜け出し、王都を散策する。
カフェに寄ったり、お店を見て回ったり。
2人でジェラート屋の脇にあるベンチでジェラートを食べてるとき、ふと思った。
よく考えればこれって、デートなのでは?
そこから急に恥ずかしくなったが、ジェラートを食べ終わる頃には日が沈みかけていた。
そろそろ戻った方がいいかな。
たった数時間だったけど僕にとっては一生の思い出だ。
「そろそろ帰りましょうか。」
「うん。そうだね。今日は楽しかった。ありがとね。」
あ、ブレスレット!
渡すなら、今がチャンスだよね?
「あっあの、これ、受け取ってもらえますか?」
「ん?ブレスレット?きれい。くれるの?」
「はい。あの、このブレスレットに絶対防御の魔法を付与しておきました。なので、つけてもらえると嬉しいです。」
「ありがとう。どうかな?」
セシリア様はその場でブレスレットを付けてくれた。
「はい。似合ってます。」
「この緑色のやつって、もしかして魔物の核?」
「わかりますか?」
「なんか魔物の核をアクセサリーにするのが流行ってるって誰かが言ってた気がして。」
「はい。でもなんの魔物かは秘密です。」
「ふふっ。ありがとう。大切にするね。」
ふー。ひとまずブレスレット渡せて良かった。
ドラゴンの核を埋め込んだブレスレットをいつ、どのタイミングでセシリア様に渡すべきか。
職人にお願いしてブレスレットを作ってもらうまでは良かったのにな。
その完成品を受け取ってからしばらく経つけど未だに渡せてない。
そもそも受け取ってくれるかな。
悩んでいるときは決まって王宮の見晴らしのいいバルコニーに来るんだけど、解決策が出てこない。
どうしようかな。これ。
「あっまた会ったね。」
「えっ!せっセシリア様!?」
なんでこのタイミングで!?いや、会えるのはうれしいけど。
急いでブレスレットをポケットにしまう。
「何?どうしたの?」
「あっいや、それより奇遇ですね。」
「ここに来たら、フランツ君に会える気がして。」
「そうだったんですか。ここにいて良かったです。」
「あのさ、私の話聞いてくれる?」
セシリア様はいつになく真剣な表情だ。
「もちろんです。聞かせてください。」
「――私、怖いんだ。」
そうだよな。
魔王の復活も近くて、いよいよ魔物の王と戦わないといけないわけで、普通に考えたら、そりゃ怖いよな。
なんで普通の女の子が魔王を倒すために命を懸けないといけないのだろう。
彼女は別に望んだわけではないのに……。
彼女もまたゲームの設定に縛れているんだよな。
「そうですよね。誰かは魔王と対峙することになりますが、セシリア様はそれを望んだわけではないですもんね。」
「うん……。もしかしたら生きて帰れないって思うと……ね。」
「セシリア様は死なせません。僕が命を懸けて守ります。」
「ダメだよ。フランツ君が命を懸けちゃ。私はフランツ君に生きていてもらいたいから。」
「そうですよね。自分のせいで誰かが死んだら、残された方は辛いですよね。」
「うーん。それもそうだけど、それだけじゃないというか……」
「それだけじゃない?」
「ねぇ。フランツ君はなんで戦ってるの?誰にも強制されてるわけじゃないんだよね?」
「そうですね。僕は僕の意思でここにいます。僕がいつも思っているのは、もし自分が動くことで他の人の役に立てるのなら全力で動く、です。」
「すごいね。なんでそんなに他人のことを思いやれるの?」
「うーん。どうしてでしょう。僕の感覚では他人を思いやっているわけではないのかもしれません。ただ、僕がやりたいだけというか、人の役に立って、僕という存在を認めてもらいたいだけなのかもしれません。なので、そんなに大層なことではなく、完全に自己満足ですね。」
うん。僕はセシリア様や、みんなに認めてもらいたいだけなのかも。
「そうなんだ。」
「すみません。僕の話ばかり。」
「ううん。聞けてよかった。」
「セシリア様は、魔王との戦いが終わったら何がしたいですか?」
「うーん。そうだな。あんまり考えたことなかったけど、色んな国に行ってみたいな。ずっと、ここにいるからね。」
「いいですね!そうだ。少し息抜きをしに行きませんか?」
「え?行くって?」
「王都です。少しでも、気分を変えられればと思いまして。」
「え?でも私の場合、街に出るなら申請しないと。」
「それに関しては僕に考えがあります。」
僕はセシリア様に魔法をかける。
「え?これって。」
「はい。変装です。これで誰も聖女様だって気が付きません。」
「ふふっ。意外に悪いこと考えるんだね。」
「短い時間だけですから。でも、もし嫌なら無理にとは言いません。」
「ううん。行きたい。」
「じゃぁ行きましょ!僕が案内します。」
僕らは王宮を抜け出し、王都を散策する。
カフェに寄ったり、お店を見て回ったり。
2人でジェラート屋の脇にあるベンチでジェラートを食べてるとき、ふと思った。
よく考えればこれって、デートなのでは?
そこから急に恥ずかしくなったが、ジェラートを食べ終わる頃には日が沈みかけていた。
そろそろ戻った方がいいかな。
たった数時間だったけど僕にとっては一生の思い出だ。
「そろそろ帰りましょうか。」
「うん。そうだね。今日は楽しかった。ありがとね。」
あ、ブレスレット!
渡すなら、今がチャンスだよね?
「あっあの、これ、受け取ってもらえますか?」
「ん?ブレスレット?きれい。くれるの?」
「はい。あの、このブレスレットに絶対防御の魔法を付与しておきました。なので、つけてもらえると嬉しいです。」
「ありがとう。どうかな?」
セシリア様はその場でブレスレットを付けてくれた。
「はい。似合ってます。」
「この緑色のやつって、もしかして魔物の核?」
「わかりますか?」
「なんか魔物の核をアクセサリーにするのが流行ってるって誰かが言ってた気がして。」
「はい。でもなんの魔物かは秘密です。」
「ふふっ。ありがとう。大切にするね。」
ふー。ひとまずブレスレット渡せて良かった。
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