乙女ゲームのモブキャラから離脱してみせます。

沖城沙音

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41話 研究

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僕は自分の研究室に到着し、椅子に腰掛ける。

やっぱり僕が研究したい事って、コードのことなんだよな。
最終的には、みんなゲームの設定に左右されずに、自分の好きなように生きていけるようになってもらいたい。

まずは、人物分類の項目が魔法以外にどんなところで使われているのか、コードを調べるところからかな。

僕は、コードの世界に入って確認することにした。
見てみると、思ったより多くの場所で使われているようだった。

今見ているのは私生活に関するところだけど、一般人(下)はどれも悲惨だ。

職に就ける確率、家族に恵まれる確率、家が襲われる確率、問題に巻き込まれる確率など、そんなことまで?っていうくらい、ことあるごとに人物分類が使われているみたいだ。

これだけ良いことが起こる確率が低ければ、何もかも嫌になってしまうだろう。
きっとあそこの路地にいた人達も、そういうことが積み重なった結果、ああいった生活を送る事になったのかな。

コードを見る限り、どの処理に関しても人物分類が空の場合は、人物分類によって確率が低くなる処理に入らないらしい。

ということは、やっぱり僕みたいに、みんなの人物分類の値を空にすることが、ゲームに邪魔されず、この世界で自分らしく生きていけることに繋がるだろう。

いや、待って。
今思えば、人物分類が使われているところは、一緒に空だった場合の処理も入っているか、全て確認しないとまずいのでは?

今見ているところは、処理が入っているから良いけど、全てに入っているとは限らない。

恐らく人物分類は必須項目だろうから、値が空の人はいない想定で書かれているところもあるかもしれない。

もし、その処理が入っていなくてエラーになった場合、何が起きるか分からない。

現状、僕自身が空だし、エラーになって例外にもならず、処理が続けられなくなったら……、僕だけじゃなくて、もしかしたらこの世界自体も滅んでしまうかもしれない。

今まで何もなくて良かった。いや気づいて良かった。これは最優先で確認しないと。


にしても、これは果てしない作業だ。せめて検索できればありがたいんだけど。

すると、僕の目の前に検索バーのようなものが現れた。
もしかして、検索機能があるのかもしれない。

僕はその検索バーに向かって、「人物分類」と言うと、それに関連しているコード一覧が現れた。
やった。これで確認しやすくなる。

ただ、一覧が現れたと言っても、それでも膨大な量がある。
今日中に終わるだろうか……。


やっと終わった。
確認したところ、人物分類が使われているところは、全てのコードで空でもエラーにならない処理が入っていた。

良かった。本当に良かった。

なぜならエラーにならない処理が入っていなかった場合、編集することが出来ないからだ。
本当にこのコードを書いた人に感謝だ。


僕はコードの世界から戻ることにした。

なぜか目の前にある来客用のソファにお父さんが座って本を読んでいた。

「え?お父さん?」
「あぁお帰り。帰ってくるのが遅いから少し気になってね。勝手に入らせてもらったよ。」

窓から外を見ると真っ暗になっていた。それはそうか。相当いたもんな。お父さんに心配かけちゃった。

「ごめんなさい。僕すっかり夢中になっちゃってて……。」
「いや、その気持ち分かるよ。何か発見はあった?」

「うん。とりあえず僕のせいでこの世界が無くなることはなさそう。」
僕は腕を伸ばし、ストレッチをしながら答える。ずっと動いてなかったから身体がカチカチだ。

「ん?それはどういうこと?」
お父さんは神妙な面持ちで聞いてきた。
あっそっか。言ってなかったんだ。

「実は――、」
僕は人物の設定項目を確認して、人物分類という項目があること、それによって一般人は様々な数値が悪くなっていること、だから路地裏で生活を余儀なくされている人がいるのではないかということ、その根本的な解決策として、その項目の値を空にしたいといったことをお父さんに話す。

「あと、この前魔法がおかしいって言ってたと思うんだけど、あれも、この人物分類項目が影響してそうだった。」
「どういうこと?」

「鑑定魔法で僕の人物分類の値を確認したんだ。そしたら、その項目が空になってて。だからあの朝、魔法を使った時おかしかったんだと思う。今は制御できているから問題ないけどね。」
「なるほど。そうだったんだね。」

「で、今はその項目が空でも、エラーになるようなことがないか、この世界に影響はないか調べてたんだ。」
「それで、僕のせいでって言ってたのか。」
「うん。そういうこと。」

「ん?ということは、フランツは鑑定魔法が使えるのか?」
「うん。どんな項目があるか分かったから、その項目の値を鑑定魔法で指定して見られるようになったんだ。」

「それはすごいな。でも、使いどころは間違えちゃダメだよ?」
「うん。分かってるよ。個人情報だもんね。普段は使わないようにするよ。」

「そうだね。あ、お父さんからも話があるんだ。」
「話って?」

「さっそく国境付近に派遣されている騎士から報告があってね。」
「それって……。」

「隣国の偵察隊を捕らえたらしい。もしかしたら本当に攻めてくるかもしれないってね。」
「それって、その騎士さんは大丈夫だったの?」

「うん。数も少なかったし、特に手こずるようなことはなかったって言ってたよ。」
「ならよかった。でもいくらすごい騎士さんがいるからって、お母さんやジュリアンのことは心配だな。」

「そうだよね。明日は家に帰る日だし、いつもより早めにこっちを出るようにしようか。」
「うん。でも2日しか居られないんだよね?もっと家にいてもいい?」

「そうだね。フランツはまだ仕事という仕事はないから家にいても問題ないよ。隣国との問題が解決するまではそうしようか。」
「うん。ありがとう。」
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