37 / 48
37話 魔法薬
しおりを挟む
僕らは魔法付与の研究室を後にして、他の研究も見て回ることにした。
さっき魔法付与した剣は、特定の場所に保管されることになった。
「ここが魔道具を作っているところだよ。」
「すごい。いろんな機械があるんだね。」
「そうだね。魔道具は1つ作るのに何年もかかったりするものもあるんだ。」
「次が、魔法薬を作っているところだよ。」
「魔法薬なんてあるんだ。」
ゲームにはそんなアイテムはなかった気がする。基本治癒魔法だけだったよな。
「一応ね。でもまだ量産が出来なくて、市場にはなかなか出回らないんだ。」
「そうなんだ。作るのって難しいの?」
「そうだね。魔力の消費が激しいから、一度にたくさんは作れないって感じかな。もちろん技術も必要だけどね。」
「僕も作ってみたい!」
「初めてだと難しいかもしれないけど、やってみる?」
「うん。やってみたい。」
「じゃぁまずは、彼が作るのを見てみようか。」
「はい。」
魔法薬を作っていた団員さんの動きを観察する。
まずは、鍋に水と草を入れて、火をかけてかき混ぜると。
え?草?
「あれって何か特別な草なの?」
「あれは薬草って言って、魔法薬の素になる重要な素材だよ。」
「そうなんだ。あまり手に入らないの?」
「いや、薬草自体は育てやすいから手に入りやすいよ。薬草自体にも多少効果はあるから、すりつぶして薬代わりにしている人もいるんだ。」
「そうなんだ。」
「うん。でも、魔法薬に比べたら効果はイマイチだけどね。あの状態に魔力を加えることで、効果がふくれあがるんだ。」
団員さんが、沸騰した鍋に手をかざしてる。
「もしかして、今魔力を注いでいるの?」
「そうだよ。この魔力の注ぎ方で完成品の善し悪しが決まるんだ。」
「なるほど。だからすごく集中しているんだね。」
「そうだね。」
なんか大変そうだな。
あ、終わったみたい。
後は濾して、瓶に詰めて完成と。
手順的には簡単そう。
「よし。じゃぁフランツもやってみようか。」
「うん。」
「じゃぁ彼の隣に座ってもらって、はい。これが道具ね。」
「ありがとう。」
僕はさっき団員が見せてくれた通りに、鍋に水と薬草を入れ火にかけ、沸騰するのを待つ。
問題はここからだ。
「ここで魔力を注ぐんだよね?」
「うん。そうだよ。感覚としては治癒魔法をかけるときみたいにやるといいよ。」
「ありがとう。やってみる。」
治癒魔法ならやり慣れている。
魔力を多く消費するって言ってたから、治癒魔法をかけるときの倍くらいの魔力を注ぐ。
「うーん。こんなもんでいいのかな?」
「とりあえず濾して、瓶に詰めてみようか。」
「あれ?色が違う?」
鍋に入ってたからわかりにくかったけど、透明な瓶に移すとはっきり分かる。
団員さんが作った黄緑色の液体に比べて僕が作ったやつは深緑、いや黒に近い。
これは失敗って事かな……?
「これは……。」
お父さんや団員さんもどう反応したら良いか分からないみたいだ。
別に慰めてくれなくても良いよ。失敗は誰にでもあるって知ってるし。
「失敗だよね?僕は大丈夫。気にしてないから。次は成功できるように頑張るね。」
「いやっ……。成功はしていると思うんだ。」
「そうなの?でも黒くなっちゃってるよ?」
「実は魔法薬は色が濃いほど効果が高いって言われているんだ。」
「ほんと?」
「フランツ。体調は問題ない?魔力使いすぎたんじゃないか?」
「え?大丈夫だよ?」
「そっか。なら良いんだけど。これは、どうしたものかな……。」
「薬が必要な人に使ってあげればいいとかじゃなくて?」
「それはそうなんだけど、これも、ちょっとお父さんが預かっても良いかな?」
「うん。いいよ。お父さん怪我したときに使ってよ。」
「ありがとう。」
これくらいだったら大量に作れる気がする。
一般の人は治癒魔法とか使えないから、魔法薬を普及することが出来れば、怪我や病気のせいで苦しんでいる人達を救えるかもしれない。
「お父さん!僕、魔法薬を市場に出回したい!」
「え?」
「僕、いっぱい作るから!」
「それはすごくありがたいことだけど、すぐには難しいもしれないな。」
「え?なんで?」
「今の魔法薬は高価な部類に入っていて、貴族とかでないと、買えないんだ。それを市場に、それもみんなが買える価格となると、色々問題がありそうな気がするな。」
「魔法士団で量産が成功したっていって、魔法士団を通して一般の人たちも買いにこれるっていうふうにしてもだめ?」
「魔法士団はお店を持ってないからね。どこかのお店に卸すのが妥当かな。でも現状ここで作ったものの9割は騎士団が討伐するときとかに使っているから、卸先も見つけないとかな。あとは価格交渉もしないといけないし……。」
なんか大変そう……。でもそういうのはお父さんがうまいことやってくれるはず。
「お父さん、僕、やってみたいな。お父さんもお店とか見つけてくれる?」
お父さんは相当悩んでいるみたいだ。それほど販売までの道のりは大変だということだろう。
「うーん。わかった。じゃ試しに作ってみようか。さっきのは魔力を込めすぎだから、もっと少なくて良いよ。」
「わかった。」
それから、ひたすら魔法薬を作ることになった。
初めのうちは、魔力を込める量の調整が難しかったが、作っていくうちにだんだん分かるようになってきた。
お父さんは途中、会議に参加すると行ってしまった。
僕は、魔法薬の作り方を見せてくれた団員さんと一緒に魔法薬を作っている。
僕が魔力を注ぐまでの工程をやって、団員さんは瓶詰めをしている。
「あの、大きい鍋はありますか?」
「え?大きい鍋ですか?」
「はい。もっと一気に作れたらなって思いまして。」
「あるにはありますけど、大丈夫ですか?」
「はい。問題ありません。」
明らかに団員さんが引いているのが分かるが、気にせず作っていく。
途中、魔法薬の色を確認し、魔力を調整しながら、団員さんに用意してもらった寸胴鍋で一気に作る。
「お待たせ。……え?」
お父さんが会議から戻ってきた。
「あっお父さんお帰り。」
「えっと、そこに積んであるケースの中身は、全部魔法薬?」
僕らの横には、十数個の魔法薬が入ったケースが、数十ケース積まれている。
「そうだよ。でも、市場に卸すのにはまだ足りないよね?」
「いや、これは流石に作りすぎじゃないか?それに、その鍋……。」
「これ団員さんが持ってきてくれたんだ。一気に作った方が効率が良いかなって思って。」
「と、とりあえず、今作っているので終わりにしよう。ね。流石にこんなに一気に増えても卸先を見つけるのが大変になるから。」
「そっか。わかった。じゃぁ、足りなくなったら言ってね。僕いつでも作るから。」
「うん。ありがとう。」
これで少しでも困っている人を救えれば良いな。みんなの手に魔法薬が行き渡りますように。
さっき魔法付与した剣は、特定の場所に保管されることになった。
「ここが魔道具を作っているところだよ。」
「すごい。いろんな機械があるんだね。」
「そうだね。魔道具は1つ作るのに何年もかかったりするものもあるんだ。」
「次が、魔法薬を作っているところだよ。」
「魔法薬なんてあるんだ。」
ゲームにはそんなアイテムはなかった気がする。基本治癒魔法だけだったよな。
「一応ね。でもまだ量産が出来なくて、市場にはなかなか出回らないんだ。」
「そうなんだ。作るのって難しいの?」
「そうだね。魔力の消費が激しいから、一度にたくさんは作れないって感じかな。もちろん技術も必要だけどね。」
「僕も作ってみたい!」
「初めてだと難しいかもしれないけど、やってみる?」
「うん。やってみたい。」
「じゃぁまずは、彼が作るのを見てみようか。」
「はい。」
魔法薬を作っていた団員さんの動きを観察する。
まずは、鍋に水と草を入れて、火をかけてかき混ぜると。
え?草?
「あれって何か特別な草なの?」
「あれは薬草って言って、魔法薬の素になる重要な素材だよ。」
「そうなんだ。あまり手に入らないの?」
「いや、薬草自体は育てやすいから手に入りやすいよ。薬草自体にも多少効果はあるから、すりつぶして薬代わりにしている人もいるんだ。」
「そうなんだ。」
「うん。でも、魔法薬に比べたら効果はイマイチだけどね。あの状態に魔力を加えることで、効果がふくれあがるんだ。」
団員さんが、沸騰した鍋に手をかざしてる。
「もしかして、今魔力を注いでいるの?」
「そうだよ。この魔力の注ぎ方で完成品の善し悪しが決まるんだ。」
「なるほど。だからすごく集中しているんだね。」
「そうだね。」
なんか大変そうだな。
あ、終わったみたい。
後は濾して、瓶に詰めて完成と。
手順的には簡単そう。
「よし。じゃぁフランツもやってみようか。」
「うん。」
「じゃぁ彼の隣に座ってもらって、はい。これが道具ね。」
「ありがとう。」
僕はさっき団員が見せてくれた通りに、鍋に水と薬草を入れ火にかけ、沸騰するのを待つ。
問題はここからだ。
「ここで魔力を注ぐんだよね?」
「うん。そうだよ。感覚としては治癒魔法をかけるときみたいにやるといいよ。」
「ありがとう。やってみる。」
治癒魔法ならやり慣れている。
魔力を多く消費するって言ってたから、治癒魔法をかけるときの倍くらいの魔力を注ぐ。
「うーん。こんなもんでいいのかな?」
「とりあえず濾して、瓶に詰めてみようか。」
「あれ?色が違う?」
鍋に入ってたからわかりにくかったけど、透明な瓶に移すとはっきり分かる。
団員さんが作った黄緑色の液体に比べて僕が作ったやつは深緑、いや黒に近い。
これは失敗って事かな……?
「これは……。」
お父さんや団員さんもどう反応したら良いか分からないみたいだ。
別に慰めてくれなくても良いよ。失敗は誰にでもあるって知ってるし。
「失敗だよね?僕は大丈夫。気にしてないから。次は成功できるように頑張るね。」
「いやっ……。成功はしていると思うんだ。」
「そうなの?でも黒くなっちゃってるよ?」
「実は魔法薬は色が濃いほど効果が高いって言われているんだ。」
「ほんと?」
「フランツ。体調は問題ない?魔力使いすぎたんじゃないか?」
「え?大丈夫だよ?」
「そっか。なら良いんだけど。これは、どうしたものかな……。」
「薬が必要な人に使ってあげればいいとかじゃなくて?」
「それはそうなんだけど、これも、ちょっとお父さんが預かっても良いかな?」
「うん。いいよ。お父さん怪我したときに使ってよ。」
「ありがとう。」
これくらいだったら大量に作れる気がする。
一般の人は治癒魔法とか使えないから、魔法薬を普及することが出来れば、怪我や病気のせいで苦しんでいる人達を救えるかもしれない。
「お父さん!僕、魔法薬を市場に出回したい!」
「え?」
「僕、いっぱい作るから!」
「それはすごくありがたいことだけど、すぐには難しいもしれないな。」
「え?なんで?」
「今の魔法薬は高価な部類に入っていて、貴族とかでないと、買えないんだ。それを市場に、それもみんなが買える価格となると、色々問題がありそうな気がするな。」
「魔法士団で量産が成功したっていって、魔法士団を通して一般の人たちも買いにこれるっていうふうにしてもだめ?」
「魔法士団はお店を持ってないからね。どこかのお店に卸すのが妥当かな。でも現状ここで作ったものの9割は騎士団が討伐するときとかに使っているから、卸先も見つけないとかな。あとは価格交渉もしないといけないし……。」
なんか大変そう……。でもそういうのはお父さんがうまいことやってくれるはず。
「お父さん、僕、やってみたいな。お父さんもお店とか見つけてくれる?」
お父さんは相当悩んでいるみたいだ。それほど販売までの道のりは大変だということだろう。
「うーん。わかった。じゃ試しに作ってみようか。さっきのは魔力を込めすぎだから、もっと少なくて良いよ。」
「わかった。」
それから、ひたすら魔法薬を作ることになった。
初めのうちは、魔力を込める量の調整が難しかったが、作っていくうちにだんだん分かるようになってきた。
お父さんは途中、会議に参加すると行ってしまった。
僕は、魔法薬の作り方を見せてくれた団員さんと一緒に魔法薬を作っている。
僕が魔力を注ぐまでの工程をやって、団員さんは瓶詰めをしている。
「あの、大きい鍋はありますか?」
「え?大きい鍋ですか?」
「はい。もっと一気に作れたらなって思いまして。」
「あるにはありますけど、大丈夫ですか?」
「はい。問題ありません。」
明らかに団員さんが引いているのが分かるが、気にせず作っていく。
途中、魔法薬の色を確認し、魔力を調整しながら、団員さんに用意してもらった寸胴鍋で一気に作る。
「お待たせ。……え?」
お父さんが会議から戻ってきた。
「あっお父さんお帰り。」
「えっと、そこに積んであるケースの中身は、全部魔法薬?」
僕らの横には、十数個の魔法薬が入ったケースが、数十ケース積まれている。
「そうだよ。でも、市場に卸すのにはまだ足りないよね?」
「いや、これは流石に作りすぎじゃないか?それに、その鍋……。」
「これ団員さんが持ってきてくれたんだ。一気に作った方が効率が良いかなって思って。」
「と、とりあえず、今作っているので終わりにしよう。ね。流石にこんなに一気に増えても卸先を見つけるのが大変になるから。」
「そっか。わかった。じゃぁ、足りなくなったら言ってね。僕いつでも作るから。」
「うん。ありがとう。」
これで少しでも困っている人を救えれば良いな。みんなの手に魔法薬が行き渡りますように。
0
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる