乙女ゲームのモブキャラから離脱してみせます。

沖城沙音

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36話 魔法士団

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朝。
僕はおそるおそる魔法で寝癖を直す。

「良かった……。」
昨日、大体の感覚を掴んでいたおかげで問題なく使うことが出来た。

身支度を終えリビングに向かう。

「お父さん、おはよう。」
「おはよう。フランツ、少し話したいことがあるんだけどいいかな?」
「うん。大丈夫。どうしたの?」

僕はお父さんの向かいに座る。

「あ、そうだ。その後魔法の様子はどう?」
「うん。大丈夫みたい。」

「そうか。良かった。で、話って言うのは、魔法士団に入らないかっていう提案なんだ。」
「魔法士団に?」

「そう。フランツは入団するだけの実力はあるし、入団すれば一緒に訓練したり、研究できたり、団の一員として、魔物討伐にも参加しやすくなるとおもうんだ。」

確かに今まではお父さんの息子って事で、いろんなことに参加させてもらったり、施設を使わせてもらってたけど、魔法士団に入れば正式にそういうのに参加できるってことだよね。

「お願いします。僕、入団したいです。」
「分かった。じゃぁさっそく手続きしに行こうか。」


僕らは朝一で手続きを済ませ、僕は正式に魔法士団に入団することが出来た。

「ここが、魔法士団が使っている研究棟だよ。」
「あ、ここって魔法士団が使っているところだったんだね。よく通るけど知らなかった。」
「そっか。そういえば説明したことなかったかもね。」

僕らは早速建物の中に入り、お父さんが各施設を案内してくれている。

「ここでは団員がそれぞれ興味のある分野を研究をしているんだ。フランツも、もし研究してみたいこととかあれば出来るよ。」
「みんなはどんなこと研究してるの?」

「例えば、フランツがここに来て少し経った頃だったかな。魔力変換するときに使ったリング覚えてる?」
「うん。覚えてる。水が出るやつだよね?」
「そうそう。それとかも、ここで研究して作ったやつなんだよ。」

「そうだったの?」
「うん。あとは、魔法付与とか、魔法薬とか、それこそ1つの魔法を極めたりする人もいるし、魔法に関する事ならなんでもって感じかな。」

「魔法付与って?」
「魔法付与は、何か物に特定の機能を追加するんだ。例えば、剣に切れ味を良くする魔法を付与するとかね。」
「なるほど。それ面白そうだね。」

「挑戦してみる?」
「いいの?」
「もちろん。専用の研究室があるから行ってみようか。」
「うん!」

お父さんの案内で、魔法付与の研究室に到着した。
研究室には、剣や防具などが乱雑に置かれていた。

「散らかっててごめんね。ここは、もう使わなくなった剣とか防具を使って、どんな効果の付与が出来るか試す場所なんだ。」
「そうなんだ。」

「さっそくやってみようか。何か付与してみたい物ある?」
「何が良いかな。あっあそこにある剣にする。」

「いいよ。じゃそれ持ってこっち座ろうか。」
「はーい。」
僕はさびの付いた剣を手に持ち席に着く。

「やり方は、付与したい効果をイメージしながら、魔力をその剣に刻み込むって感じかな。」
「刻み込む……。」

「そう。そこが重要だね。ただ魔力を流すだけだと、効果が長続きしないんだ。フランツがいつも剣に魔法をかけてるみたいにね。」
「あ、なるほど。確かに言われてみればそうだね。」

「うん。だから、剣に覚えさせるっていうのかな。そんなイメージでやってみてごらん。」
「わかった。」

うーん。どんな効果を付与してみようかな。
やっぱり切れ味は重要だよね。あとは軽くもしたいし、手入れも少しで済むように、さびにくくしよう。

イメージして、魔力を刻み込むっと。

あっ、さびがなくなって、新品同様の見た目になった。
「出来たかも。」

「ずいぶんと見違えたね。何を付与したんだい?」
「えっと、切れ味を良くするのと、軽くするのと、さびにくくするのを付与してみた。」

「えっそんなに?」
初めは欲張らないで1つの方が良かったかな?

「さびは今の見た目で付与できてると思うから、あと2つ出来てますように。」
僕はそう願いながら、目の前にある短剣を持ち上げる。

「軽い!後は何か切ってもいい物……。」

「この鎧で試してみても良いよ。」
「わかった!行くよ。」

僕は普通の剣では切れないであろう鎧に、そっと刃を当てる。
「え……。」
なんの抵抗もなしに切れる!

「すごいよ。フランツ。」
「やった!出来た!」

「ここまでの切れ味の剣はなかなかないんじゃないかな?」
「そうなの?」

「うん。しかも3つも付与するなんて、普通出来ないんだよ?これで論文書けるレベルだよ。」
「そうなの?でも、もっと付与できると思うよ?やってみてもいい?」

「とりあえずこの辺までにしておこうか。言っておくけど、この剣も相当すごいんだからね?」
あれ?ちょっと引かれてる?

「わ、わかった。」
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