乙女ゲームのモブキャラから離脱してみせます。

沖城沙音

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30話 復興

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昨日は念のため一日安静にして、今日は町に出てきている。
町民達は、魔物に壊された家の瓦礫を集めていたり、また補修していたりと、みんな前向きに働いている。

お父さんに案内してもらって、カイさんが入院している病院に着く。
本音を言うと、みんなに合わせる顔がない。
きっと勝手なことして、カイさんを巻き込んでって、怒っているんだろな。

ふぅーー。覚悟を決めて入りますか。

”トントントン”
「失礼します。」
ドアを開けると、真ん中にカイさんが寝ていて、それを囲うようにハンナさん、リーナ、ヘラーが座っていた。

リーナは僕の顔を見るやいなや、席を立ちこちらに向かってきた。

その歩いてくる勢いに叩かれるのかと思ったら、そうではなかった。
リーナに抱きしめられてる?

「よかった。無事で。もう心配したんだからっ!」

「リーナ。ありがとう。カイさんのこと、ごめん。僕守れなかった……。」
「大丈夫。お父さんは時期目を覚ますわ。」

「ねぇ、僕もその輪にいれてよぉ。」
ヘラーもこちらにやってきた。相変わらずマイペースだなぁ。
でもそれが、今の僕にとってどんなに助かるか。

「ヘラーもおいで。」
「やったぁ。あれ?もしかしてフランツお兄ちゃんのお父さん?」
「そうだよ。僕のお父さんだ。」
「てことはもう帰っちゃうのぉ?」
そういうところは覚えているんだ。意外だ。

「そうだね。もう少ししたら、帰ることになるかな。」
「さみしいなぁ。お姉ちゃんもさみしいよね?」
「まっまぁそうね。そういうことにしておくわ。」
「2人ともありがとう。」

「あなた?分かる?みんなちょっと。お父さんが。」
ハンナさん?もしかして、カイさんの意識が戻った?
僕らはカイさんの方に駆け寄る。

「お父さん!お父さん!」
「お父さん。起きてぇー。遊ぼーよー。」
リーナとヘラーも各々カイさんに呼びかけている。

「みんな……。」
カイさんの意識が戻ったみたいだ。こんなタイミングで戻るなんて。よかった。本当に良かった。

「……フランツ君は?」
家族が目の前にいるのに一番先に出てくる質問はそれなのか。
僕のこと、相当心配してくれてたんだ。

「カイさん。僕はここにいます。元気です。」

カイさんは僕を確認すると、微笑んだ。
「良かったぁ。」

その後、家族で積もる話もあるだろうからと僕とお父さんは部屋を後にした。

町を歩いていると、復興の指示を出していた町長に声をかけられた。
町長とはこの前の事があるから、ぶっちゃけ気まずい。
お父さんに用があるなら僕はこの場から立ち去りたいんだけど……。

「いや良かった。帰る前に会えて。一言言っておきたかったんだ。」
あれ?お父さんじゃなくて僕に向かって話しかけてる?
今度はどんなことを言われるんだろう。

「この前は、申し訳なかった。焦っていたとはいえ、ひどい言葉を浴びせてしまった。」

あれ?思ってたのと違う。町長が僕に向かって全力で謝っている。
「いえ。僕も力不足で。」

「いや、君のおかげで、どれだけ多くの町人が救われたか。本当にありがとう。」
「いえ。」
まさかお礼を言われるとは思わなかった。

「では。これで。」
町長はそそくさと仕事に戻っていった。

「町長に何か言われたのか?」
お父さんが聞いてくる。

「ちょっとね。まっ僕と町長の秘密。」
「そっか。」
お父さんもうすうす気づいていそうだけどね。


そして次の日、諸々の事務作業などが終わったとのことで、王都に帰ることになった。
とうとうこの町ともお別れか。
町の門のところでこれまでの思い出を振り返る。

お父さんが王都に戻るとき、最初は1人でいいって思ってたのに、カイさんの家にお邪魔して本当に良かった。
リーナとヘラーは本当に面白かったなぁ。また会いに来たいな。

あれ?あれって、リーナ?手を振りながらこちらに全力で走ってきている。
僕もリーナの方に向かう。よく見るとリーナの後ろの方に、ヘラー、ハンナさん、そしてカイさんが歩いてきている。
カイさん。もう大丈夫なの?

「フランツ。もう、帰るときくらい言いなさいよね。」
「リーナ。ごめん。今までありがとう。すごく楽しかった。」

「そんなの当たり前なんだから。あの髪型、まだ教わってないんだけど、また来るわよね?」
「あっそうだったね。うん。また来るよ。今度はリーナ達が王都に来てくれても良いし。今度は僕が案内するよ。」
「まぁそれも悪くはないわね。」

ヘラー達も僕らのところに合流する。
「フランツお兄ちゃん帰っちゃうの?」
「うん。今日でバイバイだね。カイさんは大丈夫ですか?」

「ああ。この通り。心配かけてごめんね。疲れて寝ちゃってただけだったみたいだ。」
そんなばかな……。確かにあの夜は、疲れていそうではあったけど。

「よかったです。じゃぁ僕たちはこの辺で。今度は皆さんが王都に遊びに来てください。」
「ありがとう。そのうち家族で旅行の計画でも立てるよ。」

そうして僕らはカイ一家に見送られ、王都に戻ることになった。
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