乙女ゲームのモブキャラから離脱してみせます。

沖城沙音

文字の大きさ
上 下
3 / 48

3話 初王都

しおりを挟む
僕が転生してから、今日で5年。
つまり今日は僕の誕生日。

ちなみにまだ魔法は使えない。知識はあるけど……。
結局僕は魔法が使えない体質なのかもしれない。転生者だし。

でもまだ諦めたくないから、体力作りはしっかりするようにしてる。
魔法が使えようが使えまいが、体力はあるに越したことはないしね。

そして今日は王都に行く日。
初めての王都!
ずっと行ってみたいと思ってたけど、なかなか行く機会が無かったんだよね。遠いし。

そんな訳で、誕生日プレゼントは何が良い?って聞かれたときに、王都に行ってみたい!って答えたところ、連れていってもらえることになった。

この大自然も好きだけど、でもやっぱり王都の方はどうなってるんだろうって気になる。
人も多いだろうし、お店とか色々ありそうだし、何よりこの世界の事をもっと知りたいし。
準備は満タン!

「お母さん!準備出来たよ!」
「じゃぁちょっと早いけど、出発しましょうか。」

お父さんは仕事で王都にいるから、王都で待ち合わせ。
王都まではお母さんと2人旅。わくわくするな。
この日のために馬に乗る練習もしてきたし、完璧だ。


家を出てからしばらく走り、来たことの無い土地まで来ていた。

こんな方に川があったんだ。水が透き通ってて、太陽がキラキラ反射しててきれいだな。

「フランツ、この辺でお昼休憩にしましょうか。」
「そうだね。」

外でお弁当ってテンション上がるな。
お母さんの料理は何でもおいしいし。
川の音に癒やされて、ここまでの疲れも吹き飛ぶ。

「お母さん、王都まではあとどのくらいで着きそう?」
僕はお母さんが作ってくれたお弁当を食べながら質問をする。

「そうね。この調子だったら日が沈む前には着けると思うわ。」
「やっぱり遠いんだね。」

「そうね。大丈夫?疲れてない?しんどかったらすぐに言ってね。」
「うん。まだ大丈夫。お母さんの料理で元気出たから。」
「ありがとう。」

ん?ふと川の方を見ると、川を挟んだ向こう側に黒っぽい何かが動いているのが見える。
あれは何だ?
熊みたいな……。こっちの世界であんな生物は初めて見た。
熊みたいな生物との距離はそこそこあるけど、見るからに大きいし、襲われたら大変そう。

「お母さん、あれ何?」
僕は例の生物を指さす。

「ん?あぁあれはジャイアントベアっていう魔物よ。」
「え、魔物?」
魔物ってあの襲ってくるで有名な魔物?何でお母さんはそんなに冷静なの?

「そう。でも何もしなければ襲ってこないから大丈夫よ。」
「そうなの?でもすごく強そうだよ。襲われたらどうしよう。」
「大丈夫よ。何があってもお母さんが守るから。」

お母さんは襲ってこないって言ってたけど、
ジャイアントベアが気になりすぎてお昼休憩どころじゃない。

僕はジャイアントベアをチラチラ確認しながら弁当を掻き込んだ。

「お母さん、そろそろ出発しよう?」
「そうね。行きましょうか。」

ふぅ。襲われなくて良かった……。


もうすっかり夕方。
あれからずいぶん走ったな。

徐々にだけど道がきちんと整備されていたり、人とすれ違うことが多くなってきた。
日が沈む前には着けるって言ってたからそろそろかな?

もしかしてあれが王都かな?
まだ遠いからはっきりはしないけど、大きな橋が架かっていて、その奥に門らしき物がある。
そしてその門伝えに塀があるのが見える。

「お母さん、もしかしてあれが王都?」
「正解。あそこに見えているのが王都よ。後もう少しね。」

徐々に大きくなっていく王都にテンションが上がってきた。
とうとうやってきたぞ。王都!

でもなんか初めて来たわけではないくらい、外観とか想像通りでびっくりしてる。
まぁでも王都なんてどこもそんなもんなのかな?

馬から降りて入り口の列に並ぶ。
とうとう王都の中に入るぞ。
ふぅー。まずは深呼吸しよう。

門をくぐると、王都の街並みが目の前に広がる。

わぉ。今まで過ごしてきたところとはやっぱり全然違う。なんというか久しぶりに文明を感じる。

何もかもが新鮮で情報量が多すぎる。
もうすごいとしか言えないよ。建物がいっぱい建ち並んでいるし、人もいっぱいいる。
あー語彙力が無さすぎる。

「どう?フランツ。初めての王都は。」
「すごいね。お家の方とは真逆って感じ。」
「まぁそうね。お店や建物もいっぱいあるし、人も多いしね。」

なんだかヨーロッパみたいな雰囲気だ。
石畳の街並みで、どの建物も形や色合いが統一されていてきれいだ。

そしてあそこの高いところに建ってるのが王宮だよね!一目で分かる!すっごい!
本当すごい。お城だよ……。あんなの現実にあるんだ。

感動だなぁ。自然とはまた違う美しさがある。

でもやっぱなんか見たことあるんだよな。
日本にいたとき行ったテーマパークのお城と雰囲気が似ているからかな?

それか異世界に転生したと思ってたけど、案外地球にいるとか?
いやでも魔法があるからな……。

「フランツ。ぼーっとしてたら迷子になっちゃうから、手つなぎましょうか。」
「あっ、うん。」
確かに、この人の量だと迷子になりそう。

「ここが今日の宿よ。さっ馬預けて行きましょうか。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...