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5.『風の乙女(ベルセド)』(1)
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「……ここにもいない、か」
野戦部隊(シーガリオン)隊長、シートス・ツェイトスは難しい顔で、草の上の野営の跡を見つめた。
黒く短い髭に囲まれたその顔には、厳しいものが漂っている。
「隊長!!」
ドスッ、ドスッ、と疲れた平原竜(タロ)の重い足音を響かせて、部下の一人が偵察から戻ってきた。
「どうだった?」
「それがおかしいんですよね。ガデロの奴らどころか、ここ数日、辺りをうろついていたモス兵士の姿もありません」
「ふうん」
シートスは髭に指を当て、考え込む。
「どうなったんですか? 『運命(リマイン)』の奴ら、スォーガから手を引くつもりなんでしょうか」
「そうは思えんな……ん?」
視線を上げて、シートスは赤茶色の草原を蹴散らしてくる一騎の武者に気づいた。栗毛の馬をひたすらに駆り立ててくる。かなり至急の用件と見える。
「隊長…」
部下が緊張した気配で剣の柄に手をかける。
「…いや」
シートスは馬上できらりと光ったものに気づいて眼を見開いた。笑みが零れる。
「大丈夫だ、敵じゃない」
「お知り合いですか」
「知り合いも知り合い…あれは、アシャだ」
「え!」
部下は高名な男の名に姿勢を正し、平原竜(タロ)の手綱を握り直した。
騎馬の男の姿は、それほど待つまでもなく目の前に拡大されてきていた。鈍い日の光を浴びて、なお華やかに輝く金褐色の髪は、細い革ひもで留められている。その下にあるのは、馬の勢いに不似合いな優しい顔立ち、深く澄んだ紫の瞳は激情に炎とならんばかりなのが妙な不安定さをもたらしている。
「珍しい格好をしてるな。あの髪型はあまり好きじゃなかったはずだが」
「あの」
「ん?」
「あれ……男……でしょうね、やっぱり」
部下のぼんやりとした呟きにシートスは苦笑いした。
「それをあの方の前で口にするなよ。半殺しにされるぞ」
「はっ、はいっ!」
「シートス!」
突然響いた鋭い声に、部下は怯えた顔を一層強張らせた。何せ、名にし負う野戦部隊(シーガリオン)隊長を、シートスなぞと心安く呼びかける男を相手にしようというのだ。
「シートス!」
「お久しぶりです、アシャ・ラズーン」
「挨拶など後回しだ」
アシャはひどく苛立った声で応じた。上気した頬に、そう意図したわけではないだろうが、この上もなく悩ましい色を浮かべてことばを継ぐ。
「野戦部隊(シーガリオン)に星の剣士(ニスフェル)というのがいるそうだが」
「ええ、いますよ」
シートスは呆気にとられた。彼の知っているアシャというのは、『氷のアシャ』の噂通り、常に冷静沈着、どんなことにも動じない男で、シートスはアシャに感情の起伏があるのかと訝ったこともあったのだ。それが、たかが『銀の王族』一人の行方にこれほど動揺している。
「星の剣士(ニスフェル)がユーノ、というのは本当か」
「ええ。セレドのユーノ、『銀の王族』で視察官(オペ)はあなただと言っていました」
「そうか…」
アシャの顔に心底ほっとしたような表情が浮かび、彼は少し緊張を解いた。ぱさりと額に乱れかかった金の髪をかきあげながら、ようやく、シートスが自分に向けている奇異の眼に気づく。
「あ、その」
アシャはうっすらと赤くなって、ことばを重ねた。ただでさえ華やかな顔が、炎の色で開く花のように悪目立ちするのに、側に居た部下が礼儀もわきまえずにごくりと唾を呑む。だが、その反応に構わず、アシャは不安げに問いかけてきた。
「ユーノは無事なのか?」
「無事も無事」
シートスは微笑しながら平原竜(タロ)の向きを変えた。呆然としている部下に、ついてこい、と眼で合図する。そのシートスに馬を並べながら、アシャはようやく落ち着いてきたようだ。
「あなたも聞いた通りですよ。星の剣士(ニスフェル)。星の剣士の名前の方が恥じるでしょうな」
「…」
淡く微かな、どこか誇らしげな笑みがアシャの唇に滲んだ。
「それに、あの子の剣は何ですか? 『銀の王族』があれほどの剣を使えること自体が驚きだが…」
「どのように見える?」
「そうですね」
シートスは少し考え込んだ。頭の中にこれまで戦って来た相手を浮かべてみる。だが、どれもユーノの剣の冴えに重なる者はいなかった。シートスは軽く首を振って、ちらりとアシャを見やった。
「強いて言えば、あなたの……視察官(オペ)の剣に似ている」
「…」
「もっとも、『銀の王族』のように優しくか弱い一族が、視察官(オペ)の守備即攻撃の荒々しい剣を身につけられるとは思いませんが」
「そうだ、と言ったら」
「え?」
「視察官(オペ)の剣を未完成ながら身につけた『銀の王族』だと言ったら?」
「……あなたが教えられたんですか」
シートスはアシャの悪戯っぽい眼が含んでいる問いに応えた。
「…道理で、並の野戦部隊(シーガリオン)じゃ敵わないはずだ」
「…」
ふっと悔しいほど魅力的な笑みがアシャの唇から零れた。教え子に対する自信と信頼、育て上げた存在の評価に満足した顔、今まで見たことのない大人びた微笑。
側に居た部下がもじもじと体を動かす。どうやら、その男もユーノに手合わせ願って、見事一本取られた口らしい。
「『銀の王族』が、視察官(オペ)の剣を、ね」
繰り返しながら、シートスはユーノが初めて彼の前へ姿を現した時のことを思い出していた。
どこか追い詰められた緊張感漂う黒い瞳、戦場ばかりを見てきているような振舞い、野戦部隊(シーガリオン)のふてぶてしい男達にもたじろぐことなく、ことばの端に宮廷生活を思わせる上品さが漂うのに、質素な天幕(カサン)の生活も黙々と耐え忍んだ。
(なるほど)
シートスは平原竜(タロ)の上に体を安定させながら考えた。
(アシャに見込まれた剣士ならば、それも頷ける…しかし)
ふと閃いたことばを口に乗せる。
「アシャ、星の剣士(ニスフェル)は、『あなたにとって』何か特別な人間なのですか?」
視察官(オペ)の剣は特殊な剣だ。単に才能だけでは身に着けられない。感覚から組み直されると聞いたことがある。
だからこそ、それを視察官(オペ)以外が使えるようにはならないとされる。生徒の教師への強い信頼、教師の生徒に対する深い理解、それらがうまく重なって初めて教えられる類のものだとも。
それだけ手間暇かかる難しい仕事、言い換えれば、それほど誰かに自分の全ての時間を注ぐような接し方をするアシャを、シートスは知らない。
(子ども? まさかな)
親子の絆ならあり得るかも知れない、だが、そんな絆自体がまずあり得ない。
「………」
沈黙があった。
駆け続ける草原、その地平の彼方へ向けていた目を、緩やかにこちらに回してきたアシャが、低くぽつりと口にする。
「そうだ」
く、っと引き締められた唇が、先ほどまでの興奮を消し去っていた。削いだような線の頬、暗く陰った紫色の目の語る想いをシートスは読み取る。
「失うわけにはいかない、ですか」
「…」
(たとえ自分が側に居なくても、その命を守り切るために)
その想いの深さに価するのは、おそらく、世界でただ一人の存在だから。
「よろしい。では急ぎましょう」
「ああ」
怯えがちな一頭の馬と、重い地響き立てる二匹の平原竜(タロ)は、速度を上げて野戦部隊(シーガリオン)の野営場所を目指した。
ピッ……チャーン……チャーン……チャ……。
「ん……」
岩肌で妙な形に区切られた闇に、遥かな高みからの水音、小さな雫が滴った音が谺して広がった。
ぐったりとしていたユーノは微かに呻いて身動きし、ぼんやりと目を開いた。
「……」
体の下にあるのは、ごつごつとした岩だ。自分の体が不自然な形で横たわっているとも感じる。
そろそろと上げた手で額に触れると、べっとりとしたものが指に絡んだ。見開いた目の前にもってこずとも、それが何だかわかる。血糊だ。かなりの出血の後、時間が経ち、自然に固まり始めた血が塊になりかけて指にへばりついている。
でも、『なぜ』だろう?
「う…」
腰と肩の辺りにずきりと痛みが走る。眉をしかめて痛みの部位を押さえたユーノは、右足が細い水の流れに浸かっていたのに気づいた。引き上げ、のろのろと茶色の衣の裾を縛る。
鈍く痛みを訴え続ける体とは違った、別種の違和感がユーノを悩ませていた。
何か違う。そういった漠然とした思い。
もう一度そっと額に触れた。今は止まっているが、再び出血してくるかも知れない。
衣の片袖に剣で切り目を入れて裂き、額に巻こうとすると、ふいに固いものが指に触れた。それは頭にしっかりと縛り付けられている。今の今まで気づかなかったのは、傷のせいか。
自分の物ではないような指を動かして、紐を解く。血糊で額に張り付きかけていたのだろうか、引きはがす時に鋭い痛みがあったが、それほど傷を抉ったわけではないようだ。
血でぬめりべとべとしている物を、そろそろと水で洗い、目を凝らして見つめた。
微かな光に浮かび上がったのは、濃い緑色の細工もの。紐がついていて、何かの認識票のようにも見えるが、額につけていたのだから装飾品の一種なのだろう。これをつけていたから、額の傷がざっくりと割れず、この程度で済んだものと知れる。
まじまじとそれを眺めていたユーノは、不意に心の中に浮かび上がった問いに耳を傾けた。
(これは、『何』だ?)
再び周囲を見回す。上の方から白っぽい光が差し込んでいる。
(裂け目?)
瞬きして、その光景に眉を寄せる。競り上がった岩肌が狭まり身を寄せ合う彼方、見つめていると、その向こうに広い大きな空間がある。灰色に澱む空…重い雲がゆっくり動いている。
(ボクはあそこから落ちたのか)
「落ちた?」
思わず口に出した。
それは今の今まで思っても見なかった考えだった。何となくずっとここにいたような気がしていた……と、それを考え続けているユーノの頭に、もう一つの問いが浮かび上がった。
(ボクは『誰』だ?)
「星の剣士(ニスフェル)は?」
「さあ、見てないな」
「隊長は?」
「まだ帰ってないみたいだが」
「ふ…ん」
ユカルは不安な思いを抱えたまま、トシェンから離れた。シートスが星の剣士(ニスフェル)に何の用があったんだろう、と考える。
(偵察に星の剣士(ニスフェル)の腕がいるとは思えねえし)
何か妙だった。何かが噛み合なかった。コクラノの姿が見えないことも、一層ユカルの不安をかきたてた。何かよからぬこと、少なくとも星の剣士(ニスフェル)にとって好ましくないことが、ユカルの知らないところで進んでいるという感覚を捨て切れない。
ついにユカルはきゅっと唇を結び、自分の平原竜(タロ)の側に寄った。大人しく草を食んでいた相手は、主人の姿を認めて不審気に首を上げ、尖った鼻面を突き出した。
シートス達が出ているのはスォーガの中心の方だと聞いている。
「…よし」
背に剣を負い、荷を確かめる。直接出向いていくつもりになっていた。
本来ならシートスの許可なしに、物見(ユカル)が隊を離れることなど言語道断の行為だったが、今のユカルには、その掟さえも取るに足らぬことのように思える。
(何か、変だ)
勘働きも物見(ユカル)の才能の一つ、ならば従ってもいいはずだ。
怯みかける心を、脳裏に過ったユーノの笑顔が後押しした。
(叱られたら謝ればいい)
愚かな振舞いだという自覚はある。だが、自分の愚かさに気づき、過ちを認め、懸命に償おうとする者を、シートスは無闇に貶めたりしない。
いざ平原竜(タロ)に跨がろうと顔を振り上げたユカルは、視線の先にこちらへ向かって駆けてくる三騎の武人に気づいた。二騎は平原竜(タロ)、もう一騎は栗毛の馬だ。
(星の剣士(ニスフェル)?)
ほっとして気を緩めかけたユカルは、次の瞬間、今までよりも緊張した。
栗毛の馬の額に、ユーノの呼び名の一因ともなった白い星(ヒスト)がない。
(星の剣士(ニスフェル)じゃない)
だが、明らかにシートス達とわかる、その二騎の平原竜(タロ)の近くに、他の馬はいない。
「っ」
矢も盾もたまらず、ユカルは自分の平原竜(タロ)に飛び乗るや否や、シートス達に向かって駆けた。向こうもすぐにユカルの接近に気づいたらしい。乗り手が誰だか確認する短い沈黙の後、厳しい叱責が飛んで来た。
「ユカル! 物見のくせに勝手に隊を離れるな!!」
びくっ、と体を竦ませながらも、ユカルはなおもシートスに向かって平原竜(タロ)を駆り続けた。
「ユカル!」
「隊長!」
声を荒げて叱りつけようとするシートスの声に、精一杯の意地で声を張って応じる。
「星の剣士(ニスフェル)は一緒じゃないんですか?!」
「何…?」
いつものように、詰りはしないが、十分に骨身に堪えるたしなめを口にしようとしたシートスが、ぎくりとした表情になった。ユカルはますます不安をかきたてられて、平原竜(タロ)を駆って相手の側まで迫り、そこでようやく、馬に乗っている男に気づいて目を見開いた。
「アシャ…ラズーン…」
「光栄だね。名前を知っていてくれるとは」
にこりと相手が微笑する。息を呑むほど艶やかな笑み、話には聞いていたが、実際に見たのは数えるほど、それもこれほど間近にその美貌に出くわすと、言うべきことばが雲散霧消してしまう。
しかもこの相手は、ただ美しいだけの人形ではない、『太皇(スーグ)』の第一正統後継者に選ばれたほどの才能の持ち主なのだ。
「ユカル」
シートスが、ごほん、とかなり白々しい咳払いをした。我に返ったユカルに改めて口を開こうとする、だがそれより先に、ユカルは迸るまままくしたてた。
「星の剣士(ニスフェル)を知りませんか?!」
隊長への敬意、アシャへの礼儀、そんなものを吹っ飛ばしていると気づいている、だがどれほど凄い人物であれ、今のユカルにとっては、ユーノの行方の方が遥かに大事だ。
「いや…こっちにいないのか?」
(隊長が知らない)
「さっき…」
ひやりとした感覚にことばが途切れそうになったのを、必死に声を張り上げる。
「隊長に呼ばれたと言って出て行ったまま、帰ってこないんです!」
「何? いや、俺は呼んでおらん」
「…っ」
予想はしたが、あまりにも恐れていた通りのことばに、ユカルは怯む。と、
「誰がそう言った?」
ユカルの興奮を一気に押しつぶす殺気を放ってアシャが口を挟み、思わず黙った。振り向くこちらを見返した紫の瞳は、研いだばかりの槍を思わせる酷薄な色、先ほどのにこやかさを微塵も残していない。
「あ、あの…ジャルノンです」
思わず声が引き攣った。答えを間違えれば殺される。そんな無意識の恐怖だ。
「彼は今どこに?」
「それが…」
しまった、それが問題だったんだ、と胸に広がる敗北感に臍を噛みながら答えた。
「コクラノと同様、姿を消していて」
「まずいな」
シートスが苦い顔になった。
「アシャ、実はジャルノンはモスへの投降を疑われていた男なんです。もう少し密通している証拠を掴んで、モス側の方も始末をつけようとしていたのですが」
「…」
アシャが無言で頷いた。瞳はますます暗く冷たい色になる。
「コクラノは、この前、ユーノに恥をかかされている。星の剣士(ニスフェル)にいつか思い知らせると公言していました」
「可能性としては」
感情を強いて押さえたのだろう、アシャの声は淡々として厚みがなく、端々が胸に刺さるような鋭さだ。
「ユーノがおびき出されたというのが妥当だな」
「………」
互いに顔を見合わせる。何のために、という問いはない。こういった暮らしをしていれば、そして、人の心の闇に少しでも接することがあるのなら、行方不明になった仲間の運命は嫌というほど思い知る。
「ジャルノンはどっちへ行った?」
「東の方です」
「こちらか……よし」
手綱を引いたアシャはシートスを振り向いた。
「先に隊へ帰っててくれ。俺が探す」
「そういうわけにはいきません」
シートスが渋った。
「これは、野戦部隊(シーガリオン)の責任だ。私も行きます」
「周囲が落ち着いていない。こんな状況にこれ以上、兵隊だけ置いておくのは…」
「俺が行きます!」
ユカルは声を上げた。訝しげに振り向くアシャと、やれやれと言った表情のシートスに口ごもりながら、それでも主張する。
「俺だって野戦部隊(シーガリオン)の一員だし……それに……俺……あいつ、じゃない、彼のことが好きですし!」
「彼?」
シートスは一瞬複雑な表情になって首を傾げ、やがて微妙な笑みを浮かべながら、アシャを振り向いた。
「星の剣士(ニスフェル)は女性、ですよね?」
「は?」
「ああ…まあ」
「え?」
二人を交互に眺め、やや強張った顔のアシャに、ようやくユカルも冗談ではないとわかる。
「え、あの…女性…って…女? あの、隊長、星の剣士(ニスフェル)って、女、だったんですかあっ?」
「あれだけ一緒に居たくせに、気づいてなかったのか」
シートスが呆れ顔で苦笑を浮かべた。
「俺はてっきり、べったりくっついているから、他の奴らからガードしてるとばかり思ってたぞ」
「いや、だって、俺、まさか、あれほどの遣い手が女? いや、そんなだって、あり得ねえ…っ」
うろたえて口ごもり、それでも思い出したのは細身の体や高めの声、ふとした拍子に妙に柔らかく見える仕草や表情にどきりとしてしまった自分の感情、みるみるほてってくる顔が何を意味するのかは、男ならわかること、それでもまだ、ユーノが女であって嬉しかったと口にするにはためらいがある。
「行くぞ!」
「あ、はいっ!」
気がつけば、アシャは既に先に馬を走らせている。シートスが隊を離れるのに同意してくれて、ほっとしながら素早く頷き返して、アシャの後を追う。
「は、あっ!!」
(ち、くしょうっっ…!)
平原竜(タロ)の掛け声とともに、胸の中で爆発した、不思議に甘い罵倒の種類を思いつくまもなく、あっという間に距離をあけて自分を置き去りにしそうなアシャを、ユカルは必死に追いかけた。
野戦部隊(シーガリオン)隊長、シートス・ツェイトスは難しい顔で、草の上の野営の跡を見つめた。
黒く短い髭に囲まれたその顔には、厳しいものが漂っている。
「隊長!!」
ドスッ、ドスッ、と疲れた平原竜(タロ)の重い足音を響かせて、部下の一人が偵察から戻ってきた。
「どうだった?」
「それがおかしいんですよね。ガデロの奴らどころか、ここ数日、辺りをうろついていたモス兵士の姿もありません」
「ふうん」
シートスは髭に指を当て、考え込む。
「どうなったんですか? 『運命(リマイン)』の奴ら、スォーガから手を引くつもりなんでしょうか」
「そうは思えんな……ん?」
視線を上げて、シートスは赤茶色の草原を蹴散らしてくる一騎の武者に気づいた。栗毛の馬をひたすらに駆り立ててくる。かなり至急の用件と見える。
「隊長…」
部下が緊張した気配で剣の柄に手をかける。
「…いや」
シートスは馬上できらりと光ったものに気づいて眼を見開いた。笑みが零れる。
「大丈夫だ、敵じゃない」
「お知り合いですか」
「知り合いも知り合い…あれは、アシャだ」
「え!」
部下は高名な男の名に姿勢を正し、平原竜(タロ)の手綱を握り直した。
騎馬の男の姿は、それほど待つまでもなく目の前に拡大されてきていた。鈍い日の光を浴びて、なお華やかに輝く金褐色の髪は、細い革ひもで留められている。その下にあるのは、馬の勢いに不似合いな優しい顔立ち、深く澄んだ紫の瞳は激情に炎とならんばかりなのが妙な不安定さをもたらしている。
「珍しい格好をしてるな。あの髪型はあまり好きじゃなかったはずだが」
「あの」
「ん?」
「あれ……男……でしょうね、やっぱり」
部下のぼんやりとした呟きにシートスは苦笑いした。
「それをあの方の前で口にするなよ。半殺しにされるぞ」
「はっ、はいっ!」
「シートス!」
突然響いた鋭い声に、部下は怯えた顔を一層強張らせた。何せ、名にし負う野戦部隊(シーガリオン)隊長を、シートスなぞと心安く呼びかける男を相手にしようというのだ。
「シートス!」
「お久しぶりです、アシャ・ラズーン」
「挨拶など後回しだ」
アシャはひどく苛立った声で応じた。上気した頬に、そう意図したわけではないだろうが、この上もなく悩ましい色を浮かべてことばを継ぐ。
「野戦部隊(シーガリオン)に星の剣士(ニスフェル)というのがいるそうだが」
「ええ、いますよ」
シートスは呆気にとられた。彼の知っているアシャというのは、『氷のアシャ』の噂通り、常に冷静沈着、どんなことにも動じない男で、シートスはアシャに感情の起伏があるのかと訝ったこともあったのだ。それが、たかが『銀の王族』一人の行方にこれほど動揺している。
「星の剣士(ニスフェル)がユーノ、というのは本当か」
「ええ。セレドのユーノ、『銀の王族』で視察官(オペ)はあなただと言っていました」
「そうか…」
アシャの顔に心底ほっとしたような表情が浮かび、彼は少し緊張を解いた。ぱさりと額に乱れかかった金の髪をかきあげながら、ようやく、シートスが自分に向けている奇異の眼に気づく。
「あ、その」
アシャはうっすらと赤くなって、ことばを重ねた。ただでさえ華やかな顔が、炎の色で開く花のように悪目立ちするのに、側に居た部下が礼儀もわきまえずにごくりと唾を呑む。だが、その反応に構わず、アシャは不安げに問いかけてきた。
「ユーノは無事なのか?」
「無事も無事」
シートスは微笑しながら平原竜(タロ)の向きを変えた。呆然としている部下に、ついてこい、と眼で合図する。そのシートスに馬を並べながら、アシャはようやく落ち着いてきたようだ。
「あなたも聞いた通りですよ。星の剣士(ニスフェル)。星の剣士の名前の方が恥じるでしょうな」
「…」
淡く微かな、どこか誇らしげな笑みがアシャの唇に滲んだ。
「それに、あの子の剣は何ですか? 『銀の王族』があれほどの剣を使えること自体が驚きだが…」
「どのように見える?」
「そうですね」
シートスは少し考え込んだ。頭の中にこれまで戦って来た相手を浮かべてみる。だが、どれもユーノの剣の冴えに重なる者はいなかった。シートスは軽く首を振って、ちらりとアシャを見やった。
「強いて言えば、あなたの……視察官(オペ)の剣に似ている」
「…」
「もっとも、『銀の王族』のように優しくか弱い一族が、視察官(オペ)の守備即攻撃の荒々しい剣を身につけられるとは思いませんが」
「そうだ、と言ったら」
「え?」
「視察官(オペ)の剣を未完成ながら身につけた『銀の王族』だと言ったら?」
「……あなたが教えられたんですか」
シートスはアシャの悪戯っぽい眼が含んでいる問いに応えた。
「…道理で、並の野戦部隊(シーガリオン)じゃ敵わないはずだ」
「…」
ふっと悔しいほど魅力的な笑みがアシャの唇から零れた。教え子に対する自信と信頼、育て上げた存在の評価に満足した顔、今まで見たことのない大人びた微笑。
側に居た部下がもじもじと体を動かす。どうやら、その男もユーノに手合わせ願って、見事一本取られた口らしい。
「『銀の王族』が、視察官(オペ)の剣を、ね」
繰り返しながら、シートスはユーノが初めて彼の前へ姿を現した時のことを思い出していた。
どこか追い詰められた緊張感漂う黒い瞳、戦場ばかりを見てきているような振舞い、野戦部隊(シーガリオン)のふてぶてしい男達にもたじろぐことなく、ことばの端に宮廷生活を思わせる上品さが漂うのに、質素な天幕(カサン)の生活も黙々と耐え忍んだ。
(なるほど)
シートスは平原竜(タロ)の上に体を安定させながら考えた。
(アシャに見込まれた剣士ならば、それも頷ける…しかし)
ふと閃いたことばを口に乗せる。
「アシャ、星の剣士(ニスフェル)は、『あなたにとって』何か特別な人間なのですか?」
視察官(オペ)の剣は特殊な剣だ。単に才能だけでは身に着けられない。感覚から組み直されると聞いたことがある。
だからこそ、それを視察官(オペ)以外が使えるようにはならないとされる。生徒の教師への強い信頼、教師の生徒に対する深い理解、それらがうまく重なって初めて教えられる類のものだとも。
それだけ手間暇かかる難しい仕事、言い換えれば、それほど誰かに自分の全ての時間を注ぐような接し方をするアシャを、シートスは知らない。
(子ども? まさかな)
親子の絆ならあり得るかも知れない、だが、そんな絆自体がまずあり得ない。
「………」
沈黙があった。
駆け続ける草原、その地平の彼方へ向けていた目を、緩やかにこちらに回してきたアシャが、低くぽつりと口にする。
「そうだ」
く、っと引き締められた唇が、先ほどまでの興奮を消し去っていた。削いだような線の頬、暗く陰った紫色の目の語る想いをシートスは読み取る。
「失うわけにはいかない、ですか」
「…」
(たとえ自分が側に居なくても、その命を守り切るために)
その想いの深さに価するのは、おそらく、世界でただ一人の存在だから。
「よろしい。では急ぎましょう」
「ああ」
怯えがちな一頭の馬と、重い地響き立てる二匹の平原竜(タロ)は、速度を上げて野戦部隊(シーガリオン)の野営場所を目指した。
ピッ……チャーン……チャーン……チャ……。
「ん……」
岩肌で妙な形に区切られた闇に、遥かな高みからの水音、小さな雫が滴った音が谺して広がった。
ぐったりとしていたユーノは微かに呻いて身動きし、ぼんやりと目を開いた。
「……」
体の下にあるのは、ごつごつとした岩だ。自分の体が不自然な形で横たわっているとも感じる。
そろそろと上げた手で額に触れると、べっとりとしたものが指に絡んだ。見開いた目の前にもってこずとも、それが何だかわかる。血糊だ。かなりの出血の後、時間が経ち、自然に固まり始めた血が塊になりかけて指にへばりついている。
でも、『なぜ』だろう?
「う…」
腰と肩の辺りにずきりと痛みが走る。眉をしかめて痛みの部位を押さえたユーノは、右足が細い水の流れに浸かっていたのに気づいた。引き上げ、のろのろと茶色の衣の裾を縛る。
鈍く痛みを訴え続ける体とは違った、別種の違和感がユーノを悩ませていた。
何か違う。そういった漠然とした思い。
もう一度そっと額に触れた。今は止まっているが、再び出血してくるかも知れない。
衣の片袖に剣で切り目を入れて裂き、額に巻こうとすると、ふいに固いものが指に触れた。それは頭にしっかりと縛り付けられている。今の今まで気づかなかったのは、傷のせいか。
自分の物ではないような指を動かして、紐を解く。血糊で額に張り付きかけていたのだろうか、引きはがす時に鋭い痛みがあったが、それほど傷を抉ったわけではないようだ。
血でぬめりべとべとしている物を、そろそろと水で洗い、目を凝らして見つめた。
微かな光に浮かび上がったのは、濃い緑色の細工もの。紐がついていて、何かの認識票のようにも見えるが、額につけていたのだから装飾品の一種なのだろう。これをつけていたから、額の傷がざっくりと割れず、この程度で済んだものと知れる。
まじまじとそれを眺めていたユーノは、不意に心の中に浮かび上がった問いに耳を傾けた。
(これは、『何』だ?)
再び周囲を見回す。上の方から白っぽい光が差し込んでいる。
(裂け目?)
瞬きして、その光景に眉を寄せる。競り上がった岩肌が狭まり身を寄せ合う彼方、見つめていると、その向こうに広い大きな空間がある。灰色に澱む空…重い雲がゆっくり動いている。
(ボクはあそこから落ちたのか)
「落ちた?」
思わず口に出した。
それは今の今まで思っても見なかった考えだった。何となくずっとここにいたような気がしていた……と、それを考え続けているユーノの頭に、もう一つの問いが浮かび上がった。
(ボクは『誰』だ?)
「星の剣士(ニスフェル)は?」
「さあ、見てないな」
「隊長は?」
「まだ帰ってないみたいだが」
「ふ…ん」
ユカルは不安な思いを抱えたまま、トシェンから離れた。シートスが星の剣士(ニスフェル)に何の用があったんだろう、と考える。
(偵察に星の剣士(ニスフェル)の腕がいるとは思えねえし)
何か妙だった。何かが噛み合なかった。コクラノの姿が見えないことも、一層ユカルの不安をかきたてた。何かよからぬこと、少なくとも星の剣士(ニスフェル)にとって好ましくないことが、ユカルの知らないところで進んでいるという感覚を捨て切れない。
ついにユカルはきゅっと唇を結び、自分の平原竜(タロ)の側に寄った。大人しく草を食んでいた相手は、主人の姿を認めて不審気に首を上げ、尖った鼻面を突き出した。
シートス達が出ているのはスォーガの中心の方だと聞いている。
「…よし」
背に剣を負い、荷を確かめる。直接出向いていくつもりになっていた。
本来ならシートスの許可なしに、物見(ユカル)が隊を離れることなど言語道断の行為だったが、今のユカルには、その掟さえも取るに足らぬことのように思える。
(何か、変だ)
勘働きも物見(ユカル)の才能の一つ、ならば従ってもいいはずだ。
怯みかける心を、脳裏に過ったユーノの笑顔が後押しした。
(叱られたら謝ればいい)
愚かな振舞いだという自覚はある。だが、自分の愚かさに気づき、過ちを認め、懸命に償おうとする者を、シートスは無闇に貶めたりしない。
いざ平原竜(タロ)に跨がろうと顔を振り上げたユカルは、視線の先にこちらへ向かって駆けてくる三騎の武人に気づいた。二騎は平原竜(タロ)、もう一騎は栗毛の馬だ。
(星の剣士(ニスフェル)?)
ほっとして気を緩めかけたユカルは、次の瞬間、今までよりも緊張した。
栗毛の馬の額に、ユーノの呼び名の一因ともなった白い星(ヒスト)がない。
(星の剣士(ニスフェル)じゃない)
だが、明らかにシートス達とわかる、その二騎の平原竜(タロ)の近くに、他の馬はいない。
「っ」
矢も盾もたまらず、ユカルは自分の平原竜(タロ)に飛び乗るや否や、シートス達に向かって駆けた。向こうもすぐにユカルの接近に気づいたらしい。乗り手が誰だか確認する短い沈黙の後、厳しい叱責が飛んで来た。
「ユカル! 物見のくせに勝手に隊を離れるな!!」
びくっ、と体を竦ませながらも、ユカルはなおもシートスに向かって平原竜(タロ)を駆り続けた。
「ユカル!」
「隊長!」
声を荒げて叱りつけようとするシートスの声に、精一杯の意地で声を張って応じる。
「星の剣士(ニスフェル)は一緒じゃないんですか?!」
「何…?」
いつものように、詰りはしないが、十分に骨身に堪えるたしなめを口にしようとしたシートスが、ぎくりとした表情になった。ユカルはますます不安をかきたてられて、平原竜(タロ)を駆って相手の側まで迫り、そこでようやく、馬に乗っている男に気づいて目を見開いた。
「アシャ…ラズーン…」
「光栄だね。名前を知っていてくれるとは」
にこりと相手が微笑する。息を呑むほど艶やかな笑み、話には聞いていたが、実際に見たのは数えるほど、それもこれほど間近にその美貌に出くわすと、言うべきことばが雲散霧消してしまう。
しかもこの相手は、ただ美しいだけの人形ではない、『太皇(スーグ)』の第一正統後継者に選ばれたほどの才能の持ち主なのだ。
「ユカル」
シートスが、ごほん、とかなり白々しい咳払いをした。我に返ったユカルに改めて口を開こうとする、だがそれより先に、ユカルは迸るまままくしたてた。
「星の剣士(ニスフェル)を知りませんか?!」
隊長への敬意、アシャへの礼儀、そんなものを吹っ飛ばしていると気づいている、だがどれほど凄い人物であれ、今のユカルにとっては、ユーノの行方の方が遥かに大事だ。
「いや…こっちにいないのか?」
(隊長が知らない)
「さっき…」
ひやりとした感覚にことばが途切れそうになったのを、必死に声を張り上げる。
「隊長に呼ばれたと言って出て行ったまま、帰ってこないんです!」
「何? いや、俺は呼んでおらん」
「…っ」
予想はしたが、あまりにも恐れていた通りのことばに、ユカルは怯む。と、
「誰がそう言った?」
ユカルの興奮を一気に押しつぶす殺気を放ってアシャが口を挟み、思わず黙った。振り向くこちらを見返した紫の瞳は、研いだばかりの槍を思わせる酷薄な色、先ほどのにこやかさを微塵も残していない。
「あ、あの…ジャルノンです」
思わず声が引き攣った。答えを間違えれば殺される。そんな無意識の恐怖だ。
「彼は今どこに?」
「それが…」
しまった、それが問題だったんだ、と胸に広がる敗北感に臍を噛みながら答えた。
「コクラノと同様、姿を消していて」
「まずいな」
シートスが苦い顔になった。
「アシャ、実はジャルノンはモスへの投降を疑われていた男なんです。もう少し密通している証拠を掴んで、モス側の方も始末をつけようとしていたのですが」
「…」
アシャが無言で頷いた。瞳はますます暗く冷たい色になる。
「コクラノは、この前、ユーノに恥をかかされている。星の剣士(ニスフェル)にいつか思い知らせると公言していました」
「可能性としては」
感情を強いて押さえたのだろう、アシャの声は淡々として厚みがなく、端々が胸に刺さるような鋭さだ。
「ユーノがおびき出されたというのが妥当だな」
「………」
互いに顔を見合わせる。何のために、という問いはない。こういった暮らしをしていれば、そして、人の心の闇に少しでも接することがあるのなら、行方不明になった仲間の運命は嫌というほど思い知る。
「ジャルノンはどっちへ行った?」
「東の方です」
「こちらか……よし」
手綱を引いたアシャはシートスを振り向いた。
「先に隊へ帰っててくれ。俺が探す」
「そういうわけにはいきません」
シートスが渋った。
「これは、野戦部隊(シーガリオン)の責任だ。私も行きます」
「周囲が落ち着いていない。こんな状況にこれ以上、兵隊だけ置いておくのは…」
「俺が行きます!」
ユカルは声を上げた。訝しげに振り向くアシャと、やれやれと言った表情のシートスに口ごもりながら、それでも主張する。
「俺だって野戦部隊(シーガリオン)の一員だし……それに……俺……あいつ、じゃない、彼のことが好きですし!」
「彼?」
シートスは一瞬複雑な表情になって首を傾げ、やがて微妙な笑みを浮かべながら、アシャを振り向いた。
「星の剣士(ニスフェル)は女性、ですよね?」
「は?」
「ああ…まあ」
「え?」
二人を交互に眺め、やや強張った顔のアシャに、ようやくユカルも冗談ではないとわかる。
「え、あの…女性…って…女? あの、隊長、星の剣士(ニスフェル)って、女、だったんですかあっ?」
「あれだけ一緒に居たくせに、気づいてなかったのか」
シートスが呆れ顔で苦笑を浮かべた。
「俺はてっきり、べったりくっついているから、他の奴らからガードしてるとばかり思ってたぞ」
「いや、だって、俺、まさか、あれほどの遣い手が女? いや、そんなだって、あり得ねえ…っ」
うろたえて口ごもり、それでも思い出したのは細身の体や高めの声、ふとした拍子に妙に柔らかく見える仕草や表情にどきりとしてしまった自分の感情、みるみるほてってくる顔が何を意味するのかは、男ならわかること、それでもまだ、ユーノが女であって嬉しかったと口にするにはためらいがある。
「行くぞ!」
「あ、はいっ!」
気がつけば、アシャは既に先に馬を走らせている。シートスが隊を離れるのに同意してくれて、ほっとしながら素早く頷き返して、アシャの後を追う。
「は、あっ!!」
(ち、くしょうっっ…!)
平原竜(タロ)の掛け声とともに、胸の中で爆発した、不思議に甘い罵倒の種類を思いつくまもなく、あっという間に距離をあけて自分を置き去りにしそうなアシャを、ユカルは必死に追いかけた。
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