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第3章
10.ドローゲーム(3)
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伊吹はまだ電話中だったから、インターフォンを切って京介はクローゼットに向かった。
鏡を覗き込む。
ばさりと羽織った厚手のコーデュロイシャツに少しくたびれたジーンズ、伊吹に合わせて休日仕様。髪をかきあげながら素早く全身点検する。
だめだ、負ける。
自然体で張合っては、きっと渡来の方が強い。
『降りて』
命じる口調の渡来は引く気配がなかった。
『公園』
それほど長く話をするつもりはない、そういう意志を漲らせて。
『美並のこと』
付け加えられた一言の甘い響きに腹の底が冷えた。
呼び捨てにした、僕の美並を、また。
まるで所有物が何かのように、平然と。
「…」
唇を噛む。オフホワイトのタートルネックセーター、細かなチェックのジャケット、同系統のスラックスを選びだし、シャツとジーンズを脱ぎ捨てる。婚約指輪のことばにためらったような伊吹の顔を脳裏に蘇らせて、軽く首を振る。
弱気は禁物。戦闘体勢で行くしかない。
「大人には大人の」
やり方がある、と一人ごちる。
シャツとジーンズを洗濯機に放り込みに行き、まだ伊吹が電話しているのに不安が広がる。
「……そう……うん……うん」
誰だろう。
落ち着いて話すことに決めたのか、ソファに移動している伊吹は軽く胡座を組んでふんわり座っている。時々落ちてきた髪を片手で払う仕草が、いつかのシュレッダー前の踊りのような手の動きと重なって見愡れる。
ほんとうに、伊吹さんは、動きが鮮やかで綺麗だ、夕べだって。
「今京介を抱いてるの、私だから」
甘い声が響いてまともに下半身が痺れた。
「私で知って」
勢いよく叩かれたこぶしが解かれて頭を撫で、首筋に触れて撫で降ろしてくる。もう片方の手が頬を滑って顎を辿り、喉へ降りていくのにたまらなくなる。
思わずそのまま一気に走りそうになって、きわどい瞬間に気付いた。
伊吹は子どものことを気にしている。つい、とか、勢いで、とかで済む話じゃない。
枕の下へ挟み込んでいたのを確認する。
「うん……」
微笑む伊吹の顔を見つめたまま、同じように首から胸へ指で辿っていった。
いつか触れたことがあるはずなのに、今夜の伊吹の肌は滑らかなだけじゃなくて指先にまとわりつくような気がする。京介の指が無骨で無神経なものに思えてくる感触に思わず呟く。
「柔らかい…」
「うん…」
頷く伊吹が淡く頬を染めた。よく見ていなければわからないほどの紅が、喉から這い降りて胸にも広がっていくのを目で追う。ぞく、と体の芯に妖しい波が生まれて息を呑む。
まるで京介の指が伊吹の中から血の色を引き出していくようだ。
思わず掴んで握り締めると、微かに伊吹が体を反らせた。掌にぴたりとおさまった丸みが京介の指に挟まれて苦しそうに色を増す。
「なんか…どこまでも握れそう…」
乳房を全部粉々になるまで力を込めたくなって、衝動を堪えて指をずらせる。
「ここ好き?」
自分の声が震えた気がした。
そんなところじゃない、もっと深くまで指を押し込んで引きむしりたい。強くて激しい感覚を滾らせているのを見抜かれそうで、違うところへ必死に意識を持っていこうとする。
「ねえ好き?」
指先で柔らかな粒が固さを増していくのを楽しむ。
そうだ、これは知っている。感覚が鋭敏なところをこうして軽く触れられ続けると、別の場所に快感が溜まる。
「…っう」
呻き声に誘われて、京介の方の腰が揺れた。
「答えて? わからないよ、僕」
違う、わかっている。わかっているから、愛撫していてもまるで自分がされているようで、その感覚の重なりに追い詰められ、伊吹が何を望むのか、手に取るようにわかってくる。
「こ、ら」
気丈に伊吹が息を吐いた。きつい目で見返すそれが煽っているとわかって、自分の中の力に気付く。
「ねえ?」
もっと欲しいんでしょ。
「こうしてみるとどう?」
いっぱい、あげる。
摘んだそこに吸いついた矢先、
「あ…っ」
切ない声を響かせて伊吹が仰け反り、夢中で抱き寄せた。
ああ、ほら、ぴったりじゃない、僕の体と伊吹の体。
隙間もないほどくっついて内側で波打っているのさえ感じ取れる、京介の中に伊吹の体があるように。
だから、気持ちいいところはここだよね?
舌先で嬲る。唇で挟んで摺り合わせ、吸い付いてくすぐる。
何度か唇で挟み直しながら、下半身がまずくなってきたのに気付いて、一瞬だけ唇を離し、封を切って指で中身に触れる。
思ってた以上に早いかも。
と、ふいに口の中で固さを増していたそれがいきなりふわりと弛んで驚いた。
「もっと柔らかくなってきた………さっきより柔らか…」
なんだろう、これは。この前こんなことはなかった。
そう思いながらもその柔らかさに夢中になって吸い込む。
「っん、うっ」
切羽詰まった声が漏れた。口の中で蕩けるように柔らかさを増していたのが、ねだるように京介の舌を押し返す。
「僕の舌に……擦りつけてくるよ」
じれったい?
自分の時と重ねて思わず指を下へ滑らせた。
鏡を覗き込む。
ばさりと羽織った厚手のコーデュロイシャツに少しくたびれたジーンズ、伊吹に合わせて休日仕様。髪をかきあげながら素早く全身点検する。
だめだ、負ける。
自然体で張合っては、きっと渡来の方が強い。
『降りて』
命じる口調の渡来は引く気配がなかった。
『公園』
それほど長く話をするつもりはない、そういう意志を漲らせて。
『美並のこと』
付け加えられた一言の甘い響きに腹の底が冷えた。
呼び捨てにした、僕の美並を、また。
まるで所有物が何かのように、平然と。
「…」
唇を噛む。オフホワイトのタートルネックセーター、細かなチェックのジャケット、同系統のスラックスを選びだし、シャツとジーンズを脱ぎ捨てる。婚約指輪のことばにためらったような伊吹の顔を脳裏に蘇らせて、軽く首を振る。
弱気は禁物。戦闘体勢で行くしかない。
「大人には大人の」
やり方がある、と一人ごちる。
シャツとジーンズを洗濯機に放り込みに行き、まだ伊吹が電話しているのに不安が広がる。
「……そう……うん……うん」
誰だろう。
落ち着いて話すことに決めたのか、ソファに移動している伊吹は軽く胡座を組んでふんわり座っている。時々落ちてきた髪を片手で払う仕草が、いつかのシュレッダー前の踊りのような手の動きと重なって見愡れる。
ほんとうに、伊吹さんは、動きが鮮やかで綺麗だ、夕べだって。
「今京介を抱いてるの、私だから」
甘い声が響いてまともに下半身が痺れた。
「私で知って」
勢いよく叩かれたこぶしが解かれて頭を撫で、首筋に触れて撫で降ろしてくる。もう片方の手が頬を滑って顎を辿り、喉へ降りていくのにたまらなくなる。
思わずそのまま一気に走りそうになって、きわどい瞬間に気付いた。
伊吹は子どものことを気にしている。つい、とか、勢いで、とかで済む話じゃない。
枕の下へ挟み込んでいたのを確認する。
「うん……」
微笑む伊吹の顔を見つめたまま、同じように首から胸へ指で辿っていった。
いつか触れたことがあるはずなのに、今夜の伊吹の肌は滑らかなだけじゃなくて指先にまとわりつくような気がする。京介の指が無骨で無神経なものに思えてくる感触に思わず呟く。
「柔らかい…」
「うん…」
頷く伊吹が淡く頬を染めた。よく見ていなければわからないほどの紅が、喉から這い降りて胸にも広がっていくのを目で追う。ぞく、と体の芯に妖しい波が生まれて息を呑む。
まるで京介の指が伊吹の中から血の色を引き出していくようだ。
思わず掴んで握り締めると、微かに伊吹が体を反らせた。掌にぴたりとおさまった丸みが京介の指に挟まれて苦しそうに色を増す。
「なんか…どこまでも握れそう…」
乳房を全部粉々になるまで力を込めたくなって、衝動を堪えて指をずらせる。
「ここ好き?」
自分の声が震えた気がした。
そんなところじゃない、もっと深くまで指を押し込んで引きむしりたい。強くて激しい感覚を滾らせているのを見抜かれそうで、違うところへ必死に意識を持っていこうとする。
「ねえ好き?」
指先で柔らかな粒が固さを増していくのを楽しむ。
そうだ、これは知っている。感覚が鋭敏なところをこうして軽く触れられ続けると、別の場所に快感が溜まる。
「…っう」
呻き声に誘われて、京介の方の腰が揺れた。
「答えて? わからないよ、僕」
違う、わかっている。わかっているから、愛撫していてもまるで自分がされているようで、その感覚の重なりに追い詰められ、伊吹が何を望むのか、手に取るようにわかってくる。
「こ、ら」
気丈に伊吹が息を吐いた。きつい目で見返すそれが煽っているとわかって、自分の中の力に気付く。
「ねえ?」
もっと欲しいんでしょ。
「こうしてみるとどう?」
いっぱい、あげる。
摘んだそこに吸いついた矢先、
「あ…っ」
切ない声を響かせて伊吹が仰け反り、夢中で抱き寄せた。
ああ、ほら、ぴったりじゃない、僕の体と伊吹の体。
隙間もないほどくっついて内側で波打っているのさえ感じ取れる、京介の中に伊吹の体があるように。
だから、気持ちいいところはここだよね?
舌先で嬲る。唇で挟んで摺り合わせ、吸い付いてくすぐる。
何度か唇で挟み直しながら、下半身がまずくなってきたのに気付いて、一瞬だけ唇を離し、封を切って指で中身に触れる。
思ってた以上に早いかも。
と、ふいに口の中で固さを増していたそれがいきなりふわりと弛んで驚いた。
「もっと柔らかくなってきた………さっきより柔らか…」
なんだろう、これは。この前こんなことはなかった。
そう思いながらもその柔らかさに夢中になって吸い込む。
「っん、うっ」
切羽詰まった声が漏れた。口の中で蕩けるように柔らかさを増していたのが、ねだるように京介の舌を押し返す。
「僕の舌に……擦りつけてくるよ」
じれったい?
自分の時と重ねて思わず指を下へ滑らせた。
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