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第3章
9.欲情(8)
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「どうしたら…いいのかな」
美並の指に自分を任せながら、真崎が少し目を閉じる。
「あ…」
「気持ちいい?」
「うん…」
ひくん、と震えたそれが強く存在を主張し始め、布団に擦れたのだろう、ん、と切ない呻きを上げて真崎が向きを変える。美並を抱き寄せ、自分のものを押し付けてきた。
「入りたい」
掠れた声で耳元で囁く。
「美並の中に入りたい」
「待って」
「だめ?」
僕じゃ、やっぱりだめ?
キスは上下、突くようにして尋ねてくるから思わずくすりと笑ってしまった。
「何」
「正直ですね」
「…っん」
指を滑らせる。絡むような感触を気持ち悪いと思わなかった。美並の指で濡れそぼっているのが無我夢中な感じがして可愛い。
大石ではこんなことなかったな。
またふと思った。
ここまで触ってみることもなかったし、大石も望まなかった。
「……ん」
ふいに真崎がキスを仕掛けて来て我に返る。のしかかってきた真崎が下腹に擦りつけながら、ちゅ、ちゅ、と何度もキスしてくる。
「なに…?」
「他のやつのこと考えた」
「え?」
「僕以外のやつのこと、思い出した」
顔を離した真崎は唇を尖らせている。
「美並を僕でいっぱいにしたい」
「あ」
ぐい、と割り入ろうとする脚をとっさに拒んだ。
「っ」
真崎がぎくりとしたように固まり、そっと膝を立てて触れないように腰を浮かせる。美並を跨いで、それでもキスを続けた。
「きょう…」
「黙って」
「ちょ…」
「黙って」
他のやつのことなんか聞かないから。
「はい?」
「他のやつがどうしたかなんて聞かない」
「ん…っ、ちょ、っと」
「……今美並を抱いてるの、僕だから」
「こら」
「てっ」
こん、と後頭部にふった美並のこぶしに、真崎が顔を上げる。今にも零れ落ちそうな涙で潤んでいる瞳に苦笑する。
「…だめ…?」
「違います」
「…………」
「いきなりじゃ、入りません」
「………え?」
え、じゃないだろ、えじゃ。
思わず突っ込みたくなったが、美並は半分目を伏せながら続けた。
「京介と同じです。ちょっと……慣らしてくれないと」
「……?」
真崎が微妙な顔で視線を逸らせる。
「でも…」
「えいっ」
こんっ!
「ったあ」
また頭に降ったこぶしに真崎がむっとする。
「何」
「今他の人のこと考えましたね?」
「う」
「わかりますよ、私だって」
「だって…」
「今京介を抱いてるの、私だから」
私で知って。
囁くと真崎がはっとした顔になった。
「……うん……」
生真面目な顔で頷いて、ゆっくり胸に触れてくる。
「……柔らかい…」
「うん…」
「……なんか…どこまでも握れそう…」
あんたはことば責めタイプですか。
また突っ込みそうになったのを、いきなり摘まれて息を呑む。
「美並…」
「はい、」
「ここ好き?」
うあ。
指先がさっき美並がしたままを繰り返して、思わず背中を逸らせた。
「ねえ好き?」
「…っう」
「答えて?」
わからないよ、僕。
呟いた瞬間、相手の顔が嬉しそうに綻ぶのを見る。
「こ、ら」
このやろう、そう思って睨みつけると、真崎が目を細めた。
「ねえ?」
「っ、っ」
「こうしてみるとどう?」
「あ…っ」
拒む間もなく唇を寄せられて吸いつかれ、体を抱えられて舌先で嬲られる。
もっと柔らかくなってきた。
真崎が唇で軽く噛みながら呟いて、体が震えた。
「さっきより柔らか…」
「っん、うっ」
「僕の舌に……擦りつけてくるよ」
「きょう、すけ、が」
吸いついてくるんでしょう。
そう続けようとしたことばの代わりに、ああ、と声を上げてしまったのは、ふいに降りた真崎の指が敏感なところをまともに撫でたから。
「ほんとだ、濡れてる」
さっきよりも、濡れてるから。
「気持ちいいんだ、伊吹さん?」
ことさら職場の声音で言った真崎がくすくす笑った。
「よかった……僕を待ってる……」
「あ、ぅ」
乳首に触れたままの唇が吐息で呟く。片腕で抱かれた腰は、その下に滑り込んだ手を挟みつけようとするように揺れてしまう。
「……動けないよ、美並」
そんなに手首を押さえちゃ動かせない。
「脚…開いて……僕…欲しい」
「…あの、ね…」
そんな恥ずかしくなるような蕩けた声で言われたら、できるものもできません。
意地を張ったけれど、じゃあ手伝ってあげる、とあっさり今度は膝を割られた。同時に触れてゆっくり撫でていただけの指がずぶりと入り込む感触に小さく声を上げてしまう。
「ん、あっ」
「……ああ」
真崎が嬉しそうに顔を胸にすり寄せて呟いた。
「いい声…」
「ん、んっっ」
後ろに回された掌に抱え込まれ、美並はより深く真崎の指を受け入れて呻いた。
美並の指に自分を任せながら、真崎が少し目を閉じる。
「あ…」
「気持ちいい?」
「うん…」
ひくん、と震えたそれが強く存在を主張し始め、布団に擦れたのだろう、ん、と切ない呻きを上げて真崎が向きを変える。美並を抱き寄せ、自分のものを押し付けてきた。
「入りたい」
掠れた声で耳元で囁く。
「美並の中に入りたい」
「待って」
「だめ?」
僕じゃ、やっぱりだめ?
キスは上下、突くようにして尋ねてくるから思わずくすりと笑ってしまった。
「何」
「正直ですね」
「…っん」
指を滑らせる。絡むような感触を気持ち悪いと思わなかった。美並の指で濡れそぼっているのが無我夢中な感じがして可愛い。
大石ではこんなことなかったな。
またふと思った。
ここまで触ってみることもなかったし、大石も望まなかった。
「……ん」
ふいに真崎がキスを仕掛けて来て我に返る。のしかかってきた真崎が下腹に擦りつけながら、ちゅ、ちゅ、と何度もキスしてくる。
「なに…?」
「他のやつのこと考えた」
「え?」
「僕以外のやつのこと、思い出した」
顔を離した真崎は唇を尖らせている。
「美並を僕でいっぱいにしたい」
「あ」
ぐい、と割り入ろうとする脚をとっさに拒んだ。
「っ」
真崎がぎくりとしたように固まり、そっと膝を立てて触れないように腰を浮かせる。美並を跨いで、それでもキスを続けた。
「きょう…」
「黙って」
「ちょ…」
「黙って」
他のやつのことなんか聞かないから。
「はい?」
「他のやつがどうしたかなんて聞かない」
「ん…っ、ちょ、っと」
「……今美並を抱いてるの、僕だから」
「こら」
「てっ」
こん、と後頭部にふった美並のこぶしに、真崎が顔を上げる。今にも零れ落ちそうな涙で潤んでいる瞳に苦笑する。
「…だめ…?」
「違います」
「…………」
「いきなりじゃ、入りません」
「………え?」
え、じゃないだろ、えじゃ。
思わず突っ込みたくなったが、美並は半分目を伏せながら続けた。
「京介と同じです。ちょっと……慣らしてくれないと」
「……?」
真崎が微妙な顔で視線を逸らせる。
「でも…」
「えいっ」
こんっ!
「ったあ」
また頭に降ったこぶしに真崎がむっとする。
「何」
「今他の人のこと考えましたね?」
「う」
「わかりますよ、私だって」
「だって…」
「今京介を抱いてるの、私だから」
私で知って。
囁くと真崎がはっとした顔になった。
「……うん……」
生真面目な顔で頷いて、ゆっくり胸に触れてくる。
「……柔らかい…」
「うん…」
「……なんか…どこまでも握れそう…」
あんたはことば責めタイプですか。
また突っ込みそうになったのを、いきなり摘まれて息を呑む。
「美並…」
「はい、」
「ここ好き?」
うあ。
指先がさっき美並がしたままを繰り返して、思わず背中を逸らせた。
「ねえ好き?」
「…っう」
「答えて?」
わからないよ、僕。
呟いた瞬間、相手の顔が嬉しそうに綻ぶのを見る。
「こ、ら」
このやろう、そう思って睨みつけると、真崎が目を細めた。
「ねえ?」
「っ、っ」
「こうしてみるとどう?」
「あ…っ」
拒む間もなく唇を寄せられて吸いつかれ、体を抱えられて舌先で嬲られる。
もっと柔らかくなってきた。
真崎が唇で軽く噛みながら呟いて、体が震えた。
「さっきより柔らか…」
「っん、うっ」
「僕の舌に……擦りつけてくるよ」
「きょう、すけ、が」
吸いついてくるんでしょう。
そう続けようとしたことばの代わりに、ああ、と声を上げてしまったのは、ふいに降りた真崎の指が敏感なところをまともに撫でたから。
「ほんとだ、濡れてる」
さっきよりも、濡れてるから。
「気持ちいいんだ、伊吹さん?」
ことさら職場の声音で言った真崎がくすくす笑った。
「よかった……僕を待ってる……」
「あ、ぅ」
乳首に触れたままの唇が吐息で呟く。片腕で抱かれた腰は、その下に滑り込んだ手を挟みつけようとするように揺れてしまう。
「……動けないよ、美並」
そんなに手首を押さえちゃ動かせない。
「脚…開いて……僕…欲しい」
「…あの、ね…」
そんな恥ずかしくなるような蕩けた声で言われたら、できるものもできません。
意地を張ったけれど、じゃあ手伝ってあげる、とあっさり今度は膝を割られた。同時に触れてゆっくり撫でていただけの指がずぶりと入り込む感触に小さく声を上げてしまう。
「ん、あっ」
「……ああ」
真崎が嬉しそうに顔を胸にすり寄せて呟いた。
「いい声…」
「ん、んっっ」
後ろに回された掌に抱え込まれ、美並はより深く真崎の指を受け入れて呻いた。
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