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第3章
9.欲情(5)
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「気分が悪いんですか?」
ティッシュを渡しながら、そうじゃないだろう、と美並は思う。
もしかして、美並は肝心のところで読み損ねたのかもしれない。
ならば……この後、もう真崎の側には居られないかもしれない、今この時をのぞいては。
ごめんなさい。
心の中で謝って、布団を被って横になる。
それでももう少しだけここに居て。
「伊吹、さん…?」
「じゃあ、今日は諦めますね」
今日、だけじゃなくて、明日も明後日もないかもしれないけれど。
だめ、だったか。
「今日は?」
溜め息をついて、ずきんとした胸の痛みをごまかしたのに、真崎は妙な顔で尋ねてくる。
何かおかしかっただろうか? 明日もう一度とでも?
「もう一度試してみる?」
「もう一度?」
尋ね返すと、真崎がますます不安そうに瞬きする。
あれだけ追い詰められて辛そうだった。
「無理でしょ?」
「……あの」
それってまた一緒に、やってもいい、ってこと?
尋ねられて、今度は美並が固まった。
何だろう、これは?
ひょっとして、嫌じゃなかったのだろうか。
ならばやり方だけをどうにかしたら、もうしばらく関係が続けられるのだろうか。たとえば、あんな風に犯すんじゃなくて、とにかく待つ、とかの方向で?
自分でも未練がましいと思いつつ、すみません、と美並は謝った。
「でも、京介は気持ちよさそうだったし」
確認してみると、うっすらと真崎の白い頬に血の気が戻る。
「いいかなと思って」
「いいかな?」
「あそこ」
「あそ」
真崎が絶句した。
「他も十分気持ちよさそうで………それでも十分楽しかったけど」
自分は不愉快じゃない、そう伝えようとして、不愉快どころか、と身体の底に潤んだ部分を感じて少し顔が熱くなる。
「伊吹さん?」
「はい」
「楽しかった……?」
「はい」
真崎は何が言いたいのか、ゆっくり眉を寄せる。
「何が?」
う、やっぱりだめか。
美並はひきつりながら問い返す。
「楽しくなかった?」
「え…?」
「今の、楽しくなかった? ……ひょっとして、本当は気持ち悪かったの?」
ええい、聞くだけ聞いてしまえ、と美並は続けた。
「い、今のって」
「キスされて、胸摘まれて、脇腹撫でられて、揺さぶられて、後ろに指…」
「わあっ」
見る見る真っ赤になった真崎が急いで口を押さえに来て、微かに真崎の香りがして、その顔が恥ずかしそうで蕩けそうだとふいに気付いた。
あれ、ひょっとして?
「大丈夫なんですね? 気持ちよかった?」
うん、と頷く真崎がもっと赤くなる。耳たぶまで真っ赤で、そのまま含みたくなるような可愛らしさだ。ためらいながら、ぼそぼそと、
「でも、あれは、男、としては」
おかしいでしょ、と小さく尋ねてきて、ふいに安堵感が広がった。続けて、普通はあんなことはしないでしょ、と確認されて、くすぐったくなる。
何を聞いてるのか、わかってるのかな。
「さあ」
「さあって…」
「京介は気持ち良かったんでしょ?」
「う…ん」
「じゃあ、いいです」
「じゃあいいって……そんなの、伊吹さんはどうなるの………ってか、男の矜持ってのはどうなっちゃうの」
こんなところに男の矜持があるのか。
ちょっと感心しながら、それでもかなりほっとして、唇を尖らせた真崎にキスする。
そのとたん、僕は美並にも気持ちよくなってほしい、そう続けられて思わずぎくりとした。
「?」
気持ち良く。
そりゃあ、もう、十分。
けれど、それをどうやって伝えるか。
「あのですね」
「え…? ……っ」
掴んだ指を導いて、その指先が触れた時になおぞくっとした自分が照れくさくて、思わずぶっきらぼうに呟く。
「濡れてるでしょ?」
まだぴんとこない顔の真崎に付け加える。
「十分気持ち良かったんです」
「え? どうして…?」
「京介、色っぽいですもんね」
囁くとひくりと真崎が震え。
「……あ」
「何?」
「………勃っちゃった…」
上目遣いに見つめてくる相手に他に答えることばがなかった。
「じゃあ、もう一度いちゃいちゃしてみましょうか」
伸ばした指に確かに温かな膨らみが触れて、美並は軽く唾を呑んだ。
ティッシュを渡しながら、そうじゃないだろう、と美並は思う。
もしかして、美並は肝心のところで読み損ねたのかもしれない。
ならば……この後、もう真崎の側には居られないかもしれない、今この時をのぞいては。
ごめんなさい。
心の中で謝って、布団を被って横になる。
それでももう少しだけここに居て。
「伊吹、さん…?」
「じゃあ、今日は諦めますね」
今日、だけじゃなくて、明日も明後日もないかもしれないけれど。
だめ、だったか。
「今日は?」
溜め息をついて、ずきんとした胸の痛みをごまかしたのに、真崎は妙な顔で尋ねてくる。
何かおかしかっただろうか? 明日もう一度とでも?
「もう一度試してみる?」
「もう一度?」
尋ね返すと、真崎がますます不安そうに瞬きする。
あれだけ追い詰められて辛そうだった。
「無理でしょ?」
「……あの」
それってまた一緒に、やってもいい、ってこと?
尋ねられて、今度は美並が固まった。
何だろう、これは?
ひょっとして、嫌じゃなかったのだろうか。
ならばやり方だけをどうにかしたら、もうしばらく関係が続けられるのだろうか。たとえば、あんな風に犯すんじゃなくて、とにかく待つ、とかの方向で?
自分でも未練がましいと思いつつ、すみません、と美並は謝った。
「でも、京介は気持ちよさそうだったし」
確認してみると、うっすらと真崎の白い頬に血の気が戻る。
「いいかなと思って」
「いいかな?」
「あそこ」
「あそ」
真崎が絶句した。
「他も十分気持ちよさそうで………それでも十分楽しかったけど」
自分は不愉快じゃない、そう伝えようとして、不愉快どころか、と身体の底に潤んだ部分を感じて少し顔が熱くなる。
「伊吹さん?」
「はい」
「楽しかった……?」
「はい」
真崎は何が言いたいのか、ゆっくり眉を寄せる。
「何が?」
う、やっぱりだめか。
美並はひきつりながら問い返す。
「楽しくなかった?」
「え…?」
「今の、楽しくなかった? ……ひょっとして、本当は気持ち悪かったの?」
ええい、聞くだけ聞いてしまえ、と美並は続けた。
「い、今のって」
「キスされて、胸摘まれて、脇腹撫でられて、揺さぶられて、後ろに指…」
「わあっ」
見る見る真っ赤になった真崎が急いで口を押さえに来て、微かに真崎の香りがして、その顔が恥ずかしそうで蕩けそうだとふいに気付いた。
あれ、ひょっとして?
「大丈夫なんですね? 気持ちよかった?」
うん、と頷く真崎がもっと赤くなる。耳たぶまで真っ赤で、そのまま含みたくなるような可愛らしさだ。ためらいながら、ぼそぼそと、
「でも、あれは、男、としては」
おかしいでしょ、と小さく尋ねてきて、ふいに安堵感が広がった。続けて、普通はあんなことはしないでしょ、と確認されて、くすぐったくなる。
何を聞いてるのか、わかってるのかな。
「さあ」
「さあって…」
「京介は気持ち良かったんでしょ?」
「う…ん」
「じゃあ、いいです」
「じゃあいいって……そんなの、伊吹さんはどうなるの………ってか、男の矜持ってのはどうなっちゃうの」
こんなところに男の矜持があるのか。
ちょっと感心しながら、それでもかなりほっとして、唇を尖らせた真崎にキスする。
そのとたん、僕は美並にも気持ちよくなってほしい、そう続けられて思わずぎくりとした。
「?」
気持ち良く。
そりゃあ、もう、十分。
けれど、それをどうやって伝えるか。
「あのですね」
「え…? ……っ」
掴んだ指を導いて、その指先が触れた時になおぞくっとした自分が照れくさくて、思わずぶっきらぼうに呟く。
「濡れてるでしょ?」
まだぴんとこない顔の真崎に付け加える。
「十分気持ち良かったんです」
「え? どうして…?」
「京介、色っぽいですもんね」
囁くとひくりと真崎が震え。
「……あ」
「何?」
「………勃っちゃった…」
上目遣いに見つめてくる相手に他に答えることばがなかった。
「じゃあ、もう一度いちゃいちゃしてみましょうか」
伸ばした指に確かに温かな膨らみが触れて、美並は軽く唾を呑んだ。
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