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第2章
4.ポーカー・フェイス(5)
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「課長!」
「伊吹…さん」
美並が玄関を入るや否や、そこにのそりと真崎が立っていて驚いた。
「何してるんですか!」
「……帰って来ないかと思って」
「え?」
「このまま……帰って来ないんじゃないかと思って」
真崎が切ない顔で目を潤ませる。
「このまま、あいつのところへ行くんじゃないかと……思って」
「……ばか」
靴を脱いでコンビニの袋を置き、壁にもたれていた真崎が体を起こすのを抱き締める。
「……また熱があがってますよ?」
「……うん」
抱き返してくる真崎は小さく震えている。
「苦しい……」
「汗かいてますね。パジャマ、着替えましょう?」
「ん…」
頷いたものの、ためらって不安そうに唇を寄せてきた。見上げて目を閉じて受け止める。
「いぶき…さん」
風邪、移しちゃうかもしれない。
掠れた声が少し離れた口の間から零れ落ちる。
大丈夫ですよ。
美並も啄んでくる唇に触れながら囁き返す。
体は丈夫なんです。
「は…っ」
息が続かなくなったのだろう、真崎が軽く喘ぎながらしがみついてきた。
「着替えましょう?」
「……」
小さく首を振る。
「風邪が悪化しますよ?」
「……いい」
このまま伊吹さんが居てくれるなら、ずっと寝込んだっていい。
「はぁ」
またそういう発想になっちゃうんだ。
「着替えましょう、京介」
びく、と真崎が震えて顔を上げる。
「でないと、いろんなこと、できませんよ?」
「いろんな…こと?」
いぶかしそうに美並の肩に甘えたまま視線を投げてくるから、さすがにちょっと目を逸らせて呟いた。
「……さっきの続きとか」
「っ……」
息を呑んだ顔が見る見る赤くなっていく。熱が移ったみたいに美並の方も顔が熱くなる。
「……さっき…って」
柔らかく掠れた声で真崎が尋ねた。
「どれ……?」
「どれって」
振り向いて気付く。細めた瞳がひどく嬉しそうだ。確信犯で聞いている。
「どれでしょう」
「……ねえ…どれ…?」
「どれならいいですか」
「……ネクタイ解いたところから…?」
「ずいぶん戻りましたね」
「………じゃあ……シャツ……脱いだところ……?」
「脱ぐだけでいいんですか?」
覚悟だ、覚悟。
居直って潤んだ目を見つめ返しながら美並が尋ねると、目を見開いて口を噤む。こ、くり、と喉が動いた。
「キス……してくれなかったでしょう?」
「今したでしょ?」
「……僕……待ってたのに」
「気付きませんでした」
「……嘘つき…」
ふふ、と吐息で笑った真崎が、パジャマの襟に指をかける。ぎょっとする間もなく、ボタン一つだけ外して開いてみせた。汗に濡れた首の付け根に赤い染み。ふわりと熱に熟れた体臭が広がる、それさえも計算していたように微笑みながら、
「こんなのつけたくせに」
「そこからですか?」
「………うん」
あ。
ひたりと寄り添ってきた真崎が腰を押し付けてきて教えたのに、美並は大きく深呼吸した。
「京介」
「…はい」
「元気になってから、しましょう」
「う、ん」
真崎は驚いた顔で頷き、慌てたように瞬きする。
「伊吹さん、あの、今なんて…?」
「元気になってから、しましょう」
「……その、するって………あの、する……?」
「そう、その、する」
「するの?」
「しないの?」
「…する」
「じゃあ」
今はパジャマを着替えましょうね?
笑った美並に、急いで体を起こし、真崎はあたふたと離れていった。
「伊吹…さん」
美並が玄関を入るや否や、そこにのそりと真崎が立っていて驚いた。
「何してるんですか!」
「……帰って来ないかと思って」
「え?」
「このまま……帰って来ないんじゃないかと思って」
真崎が切ない顔で目を潤ませる。
「このまま、あいつのところへ行くんじゃないかと……思って」
「……ばか」
靴を脱いでコンビニの袋を置き、壁にもたれていた真崎が体を起こすのを抱き締める。
「……また熱があがってますよ?」
「……うん」
抱き返してくる真崎は小さく震えている。
「苦しい……」
「汗かいてますね。パジャマ、着替えましょう?」
「ん…」
頷いたものの、ためらって不安そうに唇を寄せてきた。見上げて目を閉じて受け止める。
「いぶき…さん」
風邪、移しちゃうかもしれない。
掠れた声が少し離れた口の間から零れ落ちる。
大丈夫ですよ。
美並も啄んでくる唇に触れながら囁き返す。
体は丈夫なんです。
「は…っ」
息が続かなくなったのだろう、真崎が軽く喘ぎながらしがみついてきた。
「着替えましょう?」
「……」
小さく首を振る。
「風邪が悪化しますよ?」
「……いい」
このまま伊吹さんが居てくれるなら、ずっと寝込んだっていい。
「はぁ」
またそういう発想になっちゃうんだ。
「着替えましょう、京介」
びく、と真崎が震えて顔を上げる。
「でないと、いろんなこと、できませんよ?」
「いろんな…こと?」
いぶかしそうに美並の肩に甘えたまま視線を投げてくるから、さすがにちょっと目を逸らせて呟いた。
「……さっきの続きとか」
「っ……」
息を呑んだ顔が見る見る赤くなっていく。熱が移ったみたいに美並の方も顔が熱くなる。
「……さっき…って」
柔らかく掠れた声で真崎が尋ねた。
「どれ……?」
「どれって」
振り向いて気付く。細めた瞳がひどく嬉しそうだ。確信犯で聞いている。
「どれでしょう」
「……ねえ…どれ…?」
「どれならいいですか」
「……ネクタイ解いたところから…?」
「ずいぶん戻りましたね」
「………じゃあ……シャツ……脱いだところ……?」
「脱ぐだけでいいんですか?」
覚悟だ、覚悟。
居直って潤んだ目を見つめ返しながら美並が尋ねると、目を見開いて口を噤む。こ、くり、と喉が動いた。
「キス……してくれなかったでしょう?」
「今したでしょ?」
「……僕……待ってたのに」
「気付きませんでした」
「……嘘つき…」
ふふ、と吐息で笑った真崎が、パジャマの襟に指をかける。ぎょっとする間もなく、ボタン一つだけ外して開いてみせた。汗に濡れた首の付け根に赤い染み。ふわりと熱に熟れた体臭が広がる、それさえも計算していたように微笑みながら、
「こんなのつけたくせに」
「そこからですか?」
「………うん」
あ。
ひたりと寄り添ってきた真崎が腰を押し付けてきて教えたのに、美並は大きく深呼吸した。
「京介」
「…はい」
「元気になってから、しましょう」
「う、ん」
真崎は驚いた顔で頷き、慌てたように瞬きする。
「伊吹さん、あの、今なんて…?」
「元気になってから、しましょう」
「……その、するって………あの、する……?」
「そう、その、する」
「するの?」
「しないの?」
「…する」
「じゃあ」
今はパジャマを着替えましょうね?
笑った美並に、急いで体を起こし、真崎はあたふたと離れていった。
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