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第5章
11.天に還る(7)
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「ん…」
伊吹が甘く鼻を鳴らして、毛布の中へ潜り込む。
京介はパソコンを閉じた。
それぞれにメールを返信し、特に元子には感謝と月曜日まで休む旨を伝える。
思い立って、明にもメールを入れた。
『夜分にごめん。今日から月曜日まで伊吹さんは僕のマンションに泊まると思う。ご両親が心配されているだろうから、伝えてあげてくれる?』
返信はすぐにあった。
『有沢さん、亡くなったって? 美並、大丈夫?』
『今のところ崩れてないけれど、逆に心配している。休ませてあげたい』
『助かる。ありがとう』
起きているのだから、普通なら電話に切り替えそうなものだが、メールで送ったことに察したのだろう、明はメールで応じ続ける。
『京介も大変だよね。いろいろひどいこと言われてる』
『あれだけのことがあったから仕方がない。月曜日には桜木通販の社長に就任する。そこからが修羅場かも。伊吹さんに実家に帰るように勧めようか?』
そうだ、明日にでも実家に帰った方が休めるかも知れない。
ちょっと寂しい気持ちになりながら、また眠る息吹を見つめていると、携帯が震えた。
『いや、京介の側で休ませてやって』
明からの返信に目を見開く。
『美並が一番安心するだろうから』
「…明くん…」
思わず唇が綻んだ。
『京介は唯一美並の願いを叶えた男だから』
「……」
返信を忘れて文面に見入る。
『事件のこと、いつか話してくれると嬉しいけど、美並が今そこに居るってことは、ちゃんと解決したってことだろ?』
『美並が自分の力を使うって決めてやり切ったってことだろう?』
『それで京介も美並も無事だったってことだろう?』
『美並はきっと喜んでるよ、京介を守れて』
『ほっとしてる、京介が無事で』
『京介は今、幸せなんだろう?』
一瞬、押し寄せた感情で胸が詰まった。
『幸せだよ』
文字を押す。
『伊吹さんは今眠ってる。有沢さんの通夜に出てシャワー浴びて着替えたら、そのまま寝落ちゃって起きない』
『僕が髪を拭いても起きない』
『鍋焼きうどん買ってきたのに今夜は食べられそうにない』
『けれど幸せだ』
『幸せ過ぎて胸が痛い』
『君のお姉さんは最高だ』
しばらく返信は戻らなかった。
眠ったのか、そろそろこちらも伊吹を運んで眠ろうかと思ったあたりで、返信が届く。
『当たり前だ、美並だぞ』
ふいに視界に胸を張る小さな男の子の姿が見えた。
笑い出す、視界が滲む。
よく頑張ってくれたよ、明。
よく頑張って、この人を守り抜いて来てくれた。
君のおかげで僕は今、伊吹さんをこの手に抱ける。
「…ん…? …京介?」
もそもそと伊吹が体を起こす。
「私…眠ってました…?」
「うん、眠ってた」
『お休み。そのうちにまた出向く』
明に最後のメールを送って京介は伊吹を抱き寄せる。
「月曜日に社長就任だって」
「…早くなったんですね」
「それまで休んでいいってさ。伊吹さんも」
「私も?」
「社長がお疲れ様って送って来た」
首を傾げる伊吹を膝の上に抱き上げた。
「そう…」
まだ寝ぼけているのか、ふんわりと肩に頭を乗せてくる伊吹の柔らかさに目を閉じる。
「美並?」
「はい」
「結婚式、いつにしよう」
「…そうですねえ…」
今からだと1年後? 『ニット・キャンパス』の準備もあるし、同時並行で進めても夏以降でしょうか。
淡い囁きが首筋に触れる。いつもなら際どいところが疼くのに、今夜は京介もぼんやりしてくる。
「また明日考えようか」
美並を抱えたまま立ち上がった。寝室へ向かいながら囁く。
「今夜はもう一緒に寝よう?」
「はい…」
頷きながらすぐにうとうとし始める伊吹に、小さく笑う。
「おやすみ、美並」
「おや…す……み……なさ……」
い、の声は京介の唇の中で甘く溶けた。
伊吹が甘く鼻を鳴らして、毛布の中へ潜り込む。
京介はパソコンを閉じた。
それぞれにメールを返信し、特に元子には感謝と月曜日まで休む旨を伝える。
思い立って、明にもメールを入れた。
『夜分にごめん。今日から月曜日まで伊吹さんは僕のマンションに泊まると思う。ご両親が心配されているだろうから、伝えてあげてくれる?』
返信はすぐにあった。
『有沢さん、亡くなったって? 美並、大丈夫?』
『今のところ崩れてないけれど、逆に心配している。休ませてあげたい』
『助かる。ありがとう』
起きているのだから、普通なら電話に切り替えそうなものだが、メールで送ったことに察したのだろう、明はメールで応じ続ける。
『京介も大変だよね。いろいろひどいこと言われてる』
『あれだけのことがあったから仕方がない。月曜日には桜木通販の社長に就任する。そこからが修羅場かも。伊吹さんに実家に帰るように勧めようか?』
そうだ、明日にでも実家に帰った方が休めるかも知れない。
ちょっと寂しい気持ちになりながら、また眠る息吹を見つめていると、携帯が震えた。
『いや、京介の側で休ませてやって』
明からの返信に目を見開く。
『美並が一番安心するだろうから』
「…明くん…」
思わず唇が綻んだ。
『京介は唯一美並の願いを叶えた男だから』
「……」
返信を忘れて文面に見入る。
『事件のこと、いつか話してくれると嬉しいけど、美並が今そこに居るってことは、ちゃんと解決したってことだろ?』
『美並が自分の力を使うって決めてやり切ったってことだろう?』
『それで京介も美並も無事だったってことだろう?』
『美並はきっと喜んでるよ、京介を守れて』
『ほっとしてる、京介が無事で』
『京介は今、幸せなんだろう?』
一瞬、押し寄せた感情で胸が詰まった。
『幸せだよ』
文字を押す。
『伊吹さんは今眠ってる。有沢さんの通夜に出てシャワー浴びて着替えたら、そのまま寝落ちゃって起きない』
『僕が髪を拭いても起きない』
『鍋焼きうどん買ってきたのに今夜は食べられそうにない』
『けれど幸せだ』
『幸せ過ぎて胸が痛い』
『君のお姉さんは最高だ』
しばらく返信は戻らなかった。
眠ったのか、そろそろこちらも伊吹を運んで眠ろうかと思ったあたりで、返信が届く。
『当たり前だ、美並だぞ』
ふいに視界に胸を張る小さな男の子の姿が見えた。
笑い出す、視界が滲む。
よく頑張ってくれたよ、明。
よく頑張って、この人を守り抜いて来てくれた。
君のおかげで僕は今、伊吹さんをこの手に抱ける。
「…ん…? …京介?」
もそもそと伊吹が体を起こす。
「私…眠ってました…?」
「うん、眠ってた」
『お休み。そのうちにまた出向く』
明に最後のメールを送って京介は伊吹を抱き寄せる。
「月曜日に社長就任だって」
「…早くなったんですね」
「それまで休んでいいってさ。伊吹さんも」
「私も?」
「社長がお疲れ様って送って来た」
首を傾げる伊吹を膝の上に抱き上げた。
「そう…」
まだ寝ぼけているのか、ふんわりと肩に頭を乗せてくる伊吹の柔らかさに目を閉じる。
「美並?」
「はい」
「結婚式、いつにしよう」
「…そうですねえ…」
今からだと1年後? 『ニット・キャンパス』の準備もあるし、同時並行で進めても夏以降でしょうか。
淡い囁きが首筋に触れる。いつもなら際どいところが疼くのに、今夜は京介もぼんやりしてくる。
「また明日考えようか」
美並を抱えたまま立ち上がった。寝室へ向かいながら囁く。
「今夜はもう一緒に寝よう?」
「はい…」
頷きながらすぐにうとうとし始める伊吹に、小さく笑う。
「おやすみ、美並」
「おや…す……み……なさ……」
い、の声は京介の唇の中で甘く溶けた。
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