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第3章
11.刑罰(2)
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「写真あるよ、見る?」
「写真?」
そんなものがよく手に入った、と美並が呆れると、明がくすくす笑って軽く片目をつぶる。
「俺もそれなりに人脈が」
でなきゃ営業なんてやれないだろ。
したたかな笑みは七海を得てから見られるようになった男の顔だ。
「っていうか、元々姉ちゃんの人脈だよ」
「?」
「有沢さん。覚えてる?」
「……覚えてる」
その名前に繋がった一連の出来事に美並は思わず目を逸らせた。
有沢基継。美並が高校の頃はまだ下っ端の刑事だったはずだ。
「今警部補になってる。あれから勘がよくなって、事件も結構解決したって」
「無理させたんじゃないの?」
「させてない。姉ちゃんが困ってるって伝えただけ」
「……」
「ああ、それ京介が知ったら、またきりきりするかな」
明がふふん、と鼻で笑った。
「あきくん」
「ん?」
「楽しんでる?」
「ん、まあね」
京介が出て来てから気付いたんだけど。
「俺ってかなりシスコンだったみたいで…っていうか、京介をいじめるのって楽しいなっていうか?」
「大石さんの時はそんなこと言わなかったじゃない」
「あいつは、その、なんていうか」
俺が餓鬼だったていうのもあるけど、姉ちゃんが一気になだれ込むみたいに好きになってるみたいで。
「口が出せないって感じもあったし。けど……今考えるとちょっと違うな」
「違う?」
「あいつは、姉ちゃんを変えたりしなかった」
ひょいと指を組んで頭の後ろに当て、軽く伸びをするように天井を見上げた明が、
「姉ちゃんは姉ちゃんのままで、ほんわりすうっとあいつの横におさまっててさ。お似合いっていうか。けど京介と会ってからの姉ちゃんは」
なんだか危なっかしくてずっと揺れてて、でも。
「なんかあっという間に俺の知らない人になってくみたいだってそう思ってたら、七海が」
「七海さんが?」
「話を聞いていると感じがどんどん変わるんだって。大きな薔薇が開いていくみたい、だって」
「……ばら……」
思わずべったりとした声で唸ってしまった。
「それにすとんって納得したらさ、なんだかむかつくなーって」
「……おい」
「あんなに頼りない不安定なやつの側で、なんで美並はこんなに綺麗になっちゃうんだ、って」
「………小説とか漫画の読み過ぎだよ、あきくん」
「京介ならわかってくれると思うな」
「は?」
「今の俺の気持ち、京介ならわかってくれる」
「あんたね」
さっきむかつくとか言ってなかったか?
「でも、大石はわかんないんだぜ、きっと」
ちろりと視線を美並に戻してくる明は真面目な顔だ。
「そこんところが決定的にあいつの足りないところだよな」
「足りない?」
「じっと見てればわかるんだ、目の前で変わってくんだから」
「……」
「それに、大石はきっと気付かない、美並が自分の知ってる美並じゃなくなっても」
だから不安にならなくて、心配もしなくて、ずっと美並は自分のものだって思い込める。
「けど、京介は気付いてる、美並が変わっていくの。だから不安になって落ち着かなくてきりきりする」
「……それって」
好きじゃなくなる、ってこと、かな。
思わず尋ねてしまった美並に、今度は少し困った顔で明が笑った。
「京介に聞いてみろよ。ついでに俺にそう聞いたって付け加えてみたら?」
たぶん間違いなく、次から俺と会う時にもくっついてくるって言い出すよ。
「あきくん……」
くつくつ笑いながら、明は一枚の写真を取り出した。
「で、これがタカ先輩」
「ん………っ、こ、れっ」
「そう、びっくりするだろ?」
差し出された写真には細面の優しげな顔だちの青年が映っている。まだ若い顔、20歳前後だろうか。だが、その写真に映っているコンビニに、美並は覚えがある。
「あそこに、居たの?」
「そう、あそこで勤めてたんだよ、タカ先輩」
だから余計に京介の居るところで話すわけにはいかないだろうと思った。
明の声に美並は唇を噛み締めた。
「写真?」
そんなものがよく手に入った、と美並が呆れると、明がくすくす笑って軽く片目をつぶる。
「俺もそれなりに人脈が」
でなきゃ営業なんてやれないだろ。
したたかな笑みは七海を得てから見られるようになった男の顔だ。
「っていうか、元々姉ちゃんの人脈だよ」
「?」
「有沢さん。覚えてる?」
「……覚えてる」
その名前に繋がった一連の出来事に美並は思わず目を逸らせた。
有沢基継。美並が高校の頃はまだ下っ端の刑事だったはずだ。
「今警部補になってる。あれから勘がよくなって、事件も結構解決したって」
「無理させたんじゃないの?」
「させてない。姉ちゃんが困ってるって伝えただけ」
「……」
「ああ、それ京介が知ったら、またきりきりするかな」
明がふふん、と鼻で笑った。
「あきくん」
「ん?」
「楽しんでる?」
「ん、まあね」
京介が出て来てから気付いたんだけど。
「俺ってかなりシスコンだったみたいで…っていうか、京介をいじめるのって楽しいなっていうか?」
「大石さんの時はそんなこと言わなかったじゃない」
「あいつは、その、なんていうか」
俺が餓鬼だったていうのもあるけど、姉ちゃんが一気になだれ込むみたいに好きになってるみたいで。
「口が出せないって感じもあったし。けど……今考えるとちょっと違うな」
「違う?」
「あいつは、姉ちゃんを変えたりしなかった」
ひょいと指を組んで頭の後ろに当て、軽く伸びをするように天井を見上げた明が、
「姉ちゃんは姉ちゃんのままで、ほんわりすうっとあいつの横におさまっててさ。お似合いっていうか。けど京介と会ってからの姉ちゃんは」
なんだか危なっかしくてずっと揺れてて、でも。
「なんかあっという間に俺の知らない人になってくみたいだってそう思ってたら、七海が」
「七海さんが?」
「話を聞いていると感じがどんどん変わるんだって。大きな薔薇が開いていくみたい、だって」
「……ばら……」
思わずべったりとした声で唸ってしまった。
「それにすとんって納得したらさ、なんだかむかつくなーって」
「……おい」
「あんなに頼りない不安定なやつの側で、なんで美並はこんなに綺麗になっちゃうんだ、って」
「………小説とか漫画の読み過ぎだよ、あきくん」
「京介ならわかってくれると思うな」
「は?」
「今の俺の気持ち、京介ならわかってくれる」
「あんたね」
さっきむかつくとか言ってなかったか?
「でも、大石はわかんないんだぜ、きっと」
ちろりと視線を美並に戻してくる明は真面目な顔だ。
「そこんところが決定的にあいつの足りないところだよな」
「足りない?」
「じっと見てればわかるんだ、目の前で変わってくんだから」
「……」
「それに、大石はきっと気付かない、美並が自分の知ってる美並じゃなくなっても」
だから不安にならなくて、心配もしなくて、ずっと美並は自分のものだって思い込める。
「けど、京介は気付いてる、美並が変わっていくの。だから不安になって落ち着かなくてきりきりする」
「……それって」
好きじゃなくなる、ってこと、かな。
思わず尋ねてしまった美並に、今度は少し困った顔で明が笑った。
「京介に聞いてみろよ。ついでに俺にそう聞いたって付け加えてみたら?」
たぶん間違いなく、次から俺と会う時にもくっついてくるって言い出すよ。
「あきくん……」
くつくつ笑いながら、明は一枚の写真を取り出した。
「で、これがタカ先輩」
「ん………っ、こ、れっ」
「そう、びっくりするだろ?」
差し出された写真には細面の優しげな顔だちの青年が映っている。まだ若い顔、20歳前後だろうか。だが、その写真に映っているコンビニに、美並は覚えがある。
「あそこに、居たの?」
「そう、あそこで勤めてたんだよ、タカ先輩」
だから余計に京介の居るところで話すわけにはいかないだろうと思った。
明の声に美並は唇を噛み締めた。
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