『緑満ちる宇宙』

segakiyui

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第8章 モリ(1)

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 スライは半時間ほど仮眠しただけで目を覚ました。
 さっそくデスクにつき、地球のカナンを呼び出す。非常回線を使った呼び出しで、これで応答しなければ、ステーションの緊急用の小型機を使って、サヨコを地球に送り返すつもりだった。
 タカダの死因は、ファルプによって窒息死と判断された。モリと同様、睡眠薬を飲まされた形跡があり、換気が止められていた。
 ファルプ自身が殺したのなら、これほど滑稽な図もないだろうが、当のファルプは心臓に剛毛が生えているとみえ、何の動揺も見せなかった。カナンへの報告についても、当然のこととして応じ、正直なところ、スライには、どこまでがファルプの芝居でどこからが本音なのか判別できなかった。
(長い付き合いの部下だったのに、これほどわからない人間だったのか)
 サヨコの『一緒に長くいるからといって、わかっているとはかぎらない』ということばを改めて思い出す。ファルプのあまりにも明るくはっきりした容貌に、内側の人格まで表面と同じものだと思い込んでいたのだ。
 タカダの死因は、アイラも窒息死と判断している。睡眠薬についての判断は、アイラが身分をファルプに偽っている以上、詳しい検査ができないために二重チェックはできなかった。だが、アイラもスライと同じように、タカダの殺され方が、モリと非常によく似ていることを認めている。
(なぜだ?)
 スライはそこに引っ掛かった。
 モリの死は、常識で考えると、自殺とした方が納得できる。
 もし、ファルプとカナンが何かを企んで、モリの死を自殺として演出したのなら、今回のタカダの死は逆効果だ。あの状態では、たとえ、タカダが眠り込み、換気が止められていたにせよ、窒息死することはできない。
 動き揺れて漂っている状態では、いくら呼気が顔を覆っていくにせよ、二酸化炭素の膜はすぐに顔からずれていく。仮に、一晩中、あのホールに放り込まれていたとしても、ホールの酸素全部を使い切って窒息することは無理だろう。タカダの体にはモリの時のようなフィクサーによる固定はなかった。そのあたりも気になるところだ。
 今回、タカダは直前にサヨコ達に会っており、それから殺されたとしても、スライ達が発見するまでに、あの状態で窒息して死ぬのは、時間的に見ても不可能だ。
 つまり、タカダは、あえて不必要と思われるほどモリに似せて殺された、とも言える。
 ファルプがタカダを殺した、とする。だがファルプは、スライ達がタカダを発見しているときには医務室にいてクルド達の対応をしている。タカダを殺して医務室に戻るというやり方は、一歩間違えば自分の疑いを増すだけだったはずだ。
 なぜ、そんな危ない橋を渡ったのだろう。もうだめだ、と自棄になったのか。
 それなら、なおさら、なぜタカダを殺したのだろう。
 もし、ファルプがタカダを殺したとすれば、何か別の意図があったのだ。
 ファルプがタカダをモリに似せて殺すことに意味があった、ということだ。
(どんな意味だ?)
『スライ船長、カナン部長とつながりました』
 スライの思考は、この数日間待ち望んでいた声で切られた。
 座り直して、モニター画面を見つめる。
 瞬きの後、画面にカナンの顔が映った。相変わらず整い過ぎるほど整った、一分の隙もない美女の表情は、気のせいかいつもより少し陰って見えた。
『ずいぶん忙しいのね、スライ』
「それはこちらのセリフだと思うがね、カナン」
 直接話すときは互いに敬称も官名もつけない。スライとカナンの無言の戦いの証拠だ。
 冷ややかにこちらを見据えるカナンの目に、スライはゆっくりと口を開いた。
「報告がある。急を要するものだ。サヨコ・J・ミツカワの『草』が盗まれた」
 ちかっとカナンの目が奥の方で煌めいた。
『…そう。あなたの管理にはいろいろ問題がありそうね。今までそんな話は聞いたことがないわ。モリのケースはどうなったの?』
「まだ調査中だ。サヨコは有能で、かなりのことを調べ出してくれている。たとえば、モリが実は『GN』だった、とかな」
『モリが「GN」だった? 初耳ね。ステーションに入る前に検査していなかったの?』
 スライはカナンのお決まりの話の進め方にうんざりしかけたが、ふとカナンの対応の共通点に気づいた。
 サヨコの『草』の盗難も、モリが『GN』だったという事実も、考えてみればスライの管理不行き届きで処理できる問題だ。
 もし、ファルプがカナンと組んでいたなら、カナンの意図は『スライの失脚』だったのではないか。
 サヨコは有能だが『宇宙不適応症候群』を起こしやすい問題児だった。彼女がステーションで問題を起こしたならば、即座にスライの管理のまずさに話を持っていける。
 モリの死の原因がわからなくても、自殺の可能性が高く、それに対してカナンは心理療法士を派遣してきちんと対応したのに、スライが調査を拒んだためにわからなかったのだとも言い逃れられる。
 もし、サヨコもモリの死は自殺だったと結論したなら、それこそ、スライの責任が問えるだろう。たとえ、モリが『GN』だったとしても、チェック不足でスライを陥れられる。
 それらは、連邦警察につつかれることなく、カナンがモリの死を最も自分に有効に使える方法だった。
「そうか……あんたは、俺を狙ったんだな」
『何のことなの、スライ』
 とぼけたカナンの表情は動かない。スライがいまさら気づいても、どうにもならないと確信しているのだろう。
(だが、その計画は狂ってきたようだぜ、カナン)
 少し息を吸い込んで、スライは言った。
「カナン、もう一つ報告がある」
『ああ、サヨコの「草」なら、今日中には手配するわ。予備があるはずよね?』
 話を終わらせようとするカナンに、スライは一言一言区切るように言った。
「話を最後まで聞いてほしいな。俺達は、サヨコの『草』を盗んだ奴を追い詰めたんだ」
『それで?』
 カナンの目が、再びスライをとらえ直した。
「犯人の名前はソーン・K・タカダ。彼はあんたが身分保証をしているが、こちらの調査ではタカダはテロリスト『青い聖戦』のメンバーだとわかっている。これはどういうことなのか、教えてほしいね。あんたは、ステーションにテロリストを送り込んだのか? 加えてタカダはサヨコに対して連邦警察だと詐称している。これも、あんたの指示なのか?」
 初めてカナンの顔にかすかな不安が広がった。
『タカダが…?』
「おいおい、まさか、タカダのことは詳しく知らないけれども身分を保証した、とでも言うのか? 地球連邦総合人事部のトップ、カナン・D・ウラブロフともあろうものが? それはないよな」
『知らなかった…わ』
 カナンは唇を軽く噛んだ後、吐き捨てるような苦々しさを込めて答えた。
『タカダはわたしのところには、警備保障会社の人間として紹介されてきたのよ』
(どうやら、タカダを切り捨てるつもりらしいな)
 もちろん、カナンとしては、そう答えざるを得ないだろう。
(タカダさえ生きていれば、カナンのことばを聞かせて、裏の裏まで吐かせてやるのに)
 スライは胸の内で舌打ちした。
「タカダに聞けばわかる……と言いたいところだが、それもできなくって困るよ」
『え?』
 カナンは細めていた目を少し開いた。
「報告したいもう1つのことはそっちだ。タカダは、昨夜、何者かに殺された。それも、モリととてもよく似ている死に方だ。こうなると、モリの死も単に自殺と取れないかもしれないからな、改めてサヨコに調査を依頼したというわけだ」
『……そう、タカダは死んだの』
 カナンは頭の中で目まぐるしく変わる思考を追っているようだったが、しばらく沈黙した後、異様に静かな、まるで怒りを押し殺しているような声音で答えた。
『…とにかく、タカダに関しては、わたしは紹介されたことしか知らないの。それ以上をきちんと調べずに身分保証したのは軽率だったわ。連邦警察の詐称も知らないわ。サヨコには、安心させるために、連邦警察が同行していると言ったけど、今回の件には連邦警察は噛んでいないわ』
 死人に口なしとして、カナンはタカダに関しては知らぬ存ぜぬを押し通すことに決めたらしい。次第にはっきりした語調でまとめた。
(すると、カナンには、まだアイラの動きは伝わっていないのか)
 もっとも、サヨコの『草』の一件で応援を要請したというから、遅かれ早かれ連邦警察が介入していることは伝わるだろう。
(そのときのカナンの顔こそ見ものだな)
 苦笑しかけたスライは、今はそれどころではない、と思い直した。
「まあ、どちらにせよ、サヨコはもう少しモリのことを調べると言っている。実はほかの客の『宇宙不適応症候群』で『草』のストックを使ったせいで、ステーションにはもう『草』の予備がない。タカダの死体や部屋からはサヨコの『草』は見つからなかった。探してはいるが、間に合わないかもしれない。早急に『草』を送り届けてほしい」
『いいえ、そんな危険は冒せないわ』
 カナンは打てば響くように首を振って答えた。
『サヨコ・J・ミツカワは連邦にとって貴重な存在なの。今回の任務は特別だったから送ったのよ。サヨコにそんな無茶はさせられないわ。今日の午後には迎えをやります。それでサヨコには地球に戻ってもらうわ』
 サヨコにこれ以上の調査を続けさせまいとする意図は明らかだった。
 スライは皮肉な笑みをカナンに返した。
「お優しいことだな、カナン・D・ウラブロフ。とてもじゃないが、『宇宙不適応症候群』に怯える娘を無理やりこっちに送り込んだ人間とは思えないね。それほど、モリの調査を続けるのが困るのか?」
『何のことだか、わからないわ、スライ。わたしはいつも最善を尽くしているのよ。真実を知るためだけにむやみな危険を冒すつもりはないわ。むしろ、今回のモリのことがうやむやになって助かるのは、あなただと思うけれど。タカダについては、こちらでも調査を始めるつもりよ。じゃあね、スライ、話は終わりよ』
 カナンはスライの同意を得ずに画面から消えた。彼女にしては珍しい動揺ぶりだ。
 カナンの企みは失敗した。いまごろ、彼女はオフィスであわてているだろう。
 タカダと関わっていた形跡をことこどく消さなくてはならないからだ。『青い聖戦』とも一時的にでも手を切らなくてはならないだろう。責任をタカダにおっかぶせたものの、サヨコの調査が進めば、火の粉を被る羽目にならないとも限らない。
 スライはひさしぶりにカナンをやり込めたという快感に浸った。
(後はサヨコだ)
 サヨコに『草』がないのは事実だ。そして、サヨコはモリのことをはっきりさせるまで、ステーションを降りないと言っている。
(強い娘、だよな)
 スライはサヨコの瞳の中の炎を思い出した。追い詰められるほど、あの目は光を増してくる。動けなくなるほど、存在が光り輝いてくる。
 体全体でサヨコは叫んでいる、まだだと。まだわたしは動けるんだ、と。
 その娘にスライは惚れている。
 スライはど甘い溜め息をついた。
 苦い思い出しかない地球なのに、サヨコが育った場所を見てみたいと思った。彼女の暮らしていた世界を、スライも見てみたい。
 その世界でサヨコが何を思い、何を感じていたのか話してほしい。何を好み、何と触れ合うのを楽しんだのか。何に驚き、何に心を痛めていたのか。思い出の1つ1つをスライと話し合って共有することを望んでほしい。
(そうすれば、地球も俺を受け入れてくれるような気がする、サヨコを通して)
 そして、いつか、そうせめて、恋人とまではいかないにせよ、サヨコの一番近しい存在として彼女に受け入れられるかも、しれない。
(そうなったら……)
 休暇をとろう、サヨコと過ごすために。いや、そうなる前に、休暇を取ろう。少しでも彼女のことを早く知って近づいておきたい……他の男にあの笑顔を見つけられてしまう前に。
 スライはぼんやりと微笑んだ。
 幻想はふいに響いたノックで遮られた。
「誰だ?」
(こんなに朝早く、また何か?)
 不審を込めた声に、ドアの外からおどおどした声が答える。
「ごめんなさい。サヨコ・J・ミツカワです」
「サヨコ?」
 まるで、自分の妄想を見られていたかのように、スライはうろたえた。いつもなら、相手が入ってくるのを待つのに、慌てて席を立ち、ドアを開けてサヨコに対する。
「あ…ごめんなさい。まだ、おやすみでしたか?」
「いや…早いね」
 スライは相手の黒い目に見入った。
 視線を感じたサヨコが見上げ、かすかに頬を染める。だが、相手の唇からこぼれたことばは、スライを現実に引き戻すのに十分だった。
「時間がありませんから」
「あ、ああ」
 スライは頷いた。サヨコも頷き返し、静かな口調で続ける。
「あの…少しお願いがあって……入ってもかまいませんか?」
「もちろんだ…どうぞ」
 ぎくしゃくした動作で、スライはサヨコを部屋に入れた。ドアを閉めてから尋ねる。
「気分は? まだ……大丈夫か?」
「大丈夫です」
 にこりとサヨコは目を細めて笑った。いつもと違うスライの対応に戸惑ったように、けれども、失われていく時間を惜しむように、
「あの……それで……これを預かって頂きたいと思って…」
 ポケットからアクリルケースを取り出した。受け取って、それがアイラが持っていたはずの『第二の草』であるのに気づき、スライはサヨコを見た。
「これは…」
「アイラが…万が一のときに、と言って、渡してくれたんです、でも…わたし…」
 サヨコは目を上げて、正面からスライの顔を凝視し、どこか哀しそうに、けれどもきっぱりとした笑顔で言った。
「使う気はありません。たとえ、『宇宙不適応症候群』を起こしたとしても」
「……なぜ」
 スライは一瞬の驚きから立ち直ると、無意識にそう問いかけていた。
「アイラの気持ちは嬉しいし……わたしが受け取らないと、彼女が心配するでしょう? でも、使わないから……あなたに預かってもらおうと思って…]
「そうじゃない!」
 答えかけたサヨコを激しい口調で遮る。
「どうして、『草』を使わないんだ?」
 サヨコに魅かれていると自覚したものだから、不安に塗りつぶされるのも早かった。
「君はわかっていないんだ。4歳のときのことだから忘れてるんだ。いや、今回だって発作を起こしたじゃないか。『宇宙不適応症候群』を起こしてもいいのか? ひょっとしたら、死んでしまうかもしれないんだぞ」
 むっとしたような顔をしたサヨコは、次の瞬間、不思議そうな目の色になった。スライの顔がまったく違うものに見えた、そんな表情だ。だが、やがて、何かを突然理解したような顔になった。まばゆそうな目でスライを見つめる。
 その視線の穏やかな明るさに、一層不安をかきたてられた気がした。
(まさか、サヨコ、このまま)
「いいか、君は『GN』で『CN』じゃない。それは変えようのない現実なんだ。君がどれほど努力しても、今まで『GN』が『草』なしで宇宙で暮らせた例はない。救援が来ると思っているのかもしれないが、絶対とは言い切れないんだぞ。そうだ、たとえば、カナンが救援を約束したからと言って、必ず来るとは……」
 スライは唐突に口をつぐんだ。あまりにひどいことを言っていると思ったせいではない、自分が指摘した可能性に気づいたのだ。
 さっきのカナンへの連絡で、スライはカナンをやり込めることに夢中になって、手持ちの情報を全部晒してしまったのではないか。その情報は、総合するとこういうことを示している。
『サヨコが死ねば、モリへの追及は阻止できるばかりか、真実を知る連邦側の厄介な証言者が減る』
 自分にとって不利な情報をもたらすはずの部下を、わざわざカナンが救おうとするだろうか。他の理由をつけてでも、サヨコの救援を拒むのではないか。
(まさか、カナン……)
 最後にカナンが考えていたのは、効率的で素早い保身の手立てではなかったか。そして、その鍵は目の前にいる華奢な少女1人が握っている。それに気づいたカナン、それこそあのカナン・D・ウラブロフともあろうものが、サヨコに何の手立ても打たずにいるだろうか?
 背筋をぴりぴりとした緊張感が走るのを感じた。
 そのスライの不安は、突然入ってきたアイラからの通信で裏付けられることになった。
『スライ?』
「何だ、アイラ」
『変なのよ、連邦警察に圧力がかかったらしいの』
 体中から音をたてて血が引いた。
『すぐには応援をよこせないって言ってきたわ。早くても明日以降になるって言うの。あなた、カナンに連絡するって言ってたわね。妙なことを話したんじゃないでしょうね? これからもう一度、何とか今日中に応援が来れるように話し合ってみるつもりだから、もしサヨコが動き始めたら注意して』
「わかった」
 よほど焦ったのだろう、スライの返事が届くや否や、通信は切れた。
 スライはデスクに手をついたまま、動けなくなっていた。
「俺のせいだ…」
 凍てついていくような思いで呻いた。
 カナンはサヨコをも切り捨てることに決めたのだ。
 スライやステーションの乗務員は『CN』であり、カナンの支配下にある。どうあがいても宇宙空間に封じられている、と言ってもいい。
 だが、サヨコは、いくら連邦の中とは言え、厳密に言えば部署が違う。いつかは地球に戻ってくる。そのときには、カナンだけの思惑では動かせなくなっているはずだ。
 折りも折り、カナンはタカダや『青い聖戦』のことで追い詰められている。面倒な人間は支配下にあるうちに何とか処理しようと考えるのは当然だろう。
 そして、そこへカナンを追い詰めたのは、ほかならぬスライなのだ。
 追い打ちをかけるように、地球から連絡が入った。
 画面にカナンの秘書が顔を出し、地球での状況により、今日の午後、サヨコを迎えに行くことは不可能になった、と言う。迎えは早くても明日の午後になる。それまでは、何とか『草』を都合しあって乗り切ってほしいと告げ、連絡は一方的に切れた。
(サヨコをこのステーションで死なせるつもりだ)
 ファルプがカナンとつながっているのだから、死因も何とでもでっちあげられるだろう。
 スライ自身が緊急用の小型機に乗り、サヨコを脱出させる手もあるが、ファルプがまだ何を考えているのかわからない状態で、客や仲間を残してステーションを出るわけにはいかない。他の人間に頼むにしても、アイラは連邦警察としてファルプから目を離すわけにはいかないし、クルドは動けない。その他となると、どこまでがファルプとつながっているか確認できない。
 スライは、デスクの上に置いた『第二の草』を見た。絞るようにサヨコに伝える。
「…俺の手落ちだ……助けが来ない…明日の午後まで………おまけに『草』はこれしかないんだ」
(もう……だめだ)
 自分のこの手で、今度こそ完全にサヨコを窮地に陥れてしまった。
 悔恨が胸を突き上げ、また強い吐き気が襲った。
(俺は……どうしていつもこう…へまばかり…)
 できることなら、今すぐにサヨコをさらって地球に降りたい。だが、それはスライの今まで築きあげた全てを崩壊させていくものだ。
 恐怖に怯えるスライを、サヨコは動じることなく、静かな優しい目で見守っていた。やがて、ゆっくりと、
「いいえ。わたし、これは使いません」
「何?」
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