『DRAGON NET』

segakiyui

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76.『淫儀』(2)

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「…」
 つう、とカークは自分の唇を伝ったよだれに目を細めた。
 あの中で極められていく快楽は先ほどカークを粉々にしたばかりだ。
 ラゴル13-4を父から打たれ、感覚の閾値を限界まで下げられた体は、ハイトの膝に座るだけ、その萎えた、用をなさない中心に触れただけですぐに駆け上がった。勃ち上がり弾けかけたものは絡みつかれた触手に縛められ、なのに同時にハイトのものを受け入れるべく後ろを無理矢理広げられて、その感触に視界も失うほど感じて叫んだ。
 悲鳴は途切れることなく部屋を満たし続けた。ハイトのものと同時に押し込まれたのは父の触手、それはハイトを支えつつ奥へ深く広がり波打ちぐるぐると回り続ける。弱いところを探すような優しいものではない、全ての襞を弱点にする圧倒的な快楽の蹂躙。精一杯目を見開き、叫び続けるしかないカークは、それがまだほんのテストでしかなかったとすぐに知る。
「わあああああああ!!!」
 背後に注ぎ込まれたのはハイトのものではなかった。高濃度のラゴル13-4。意識が吹っ飛び全身の感覚が弾けて気を失った瞬間に容赦のない快楽で引きずり起こされる。真っ暗になった視界に怯える間もなく、縛められたものがぬるぬるした激しく震え扱くものに吸い込まれる。おいしいよ、リフ。父が囁き再び強く吸い上げられる。絶叫して目を開けると、視界に迫っているのは父の白く滑らかな体から想像もつかないごつごつと節くれ立って濡れ光った巨大な男根、大声を上げたカークの口を一杯に満たして突っ込まれ、喉の奥まで犯される。広げられた両脚にからみつく触手が腹を這い上がり胸の先に争うように何本も絡みつき絞り吸い付き、首筋にまるで死ぬ間際のような喘ぎを響かせながら、ハイトが噛みついてくる。
 なのに。
 カークは一度たりとして放つことを許されなかった。全ての感覚器を犯され味わいしゃぶりつくされ、悲鳴さえも封じられて身体中に響き渡る快感の絶叫を傷みとして感じるしかないレベルで叩きつけられ、呼吸が止まりそうになっては一瞬口を外されるその時だけ視界が戻る、けれどそこにはすぐにまた口をねじ開けて押し込んでくる吐き気を催させる肉色の塊が全面を覆うだけで。
 すばらしいすばらしいすばらしいすばらしいすばらしいすばらしいすばらしい。
 もっともっともっともっともっともっともっともっと。
 何度か吐いた気がする。局部からは体液ではなく生臭い血までもが流れていたように思う。
 ハイトのものを銜え、今度は口一杯を満たした父のものに背後を引き裂かれた時も痛みは既に感覚に入っていなかった。生きながら死体になっているカークの胸を両方とも舐めしゃぶり噛みつきながら、父は切なげに喘ぎ触手で扱き続けているカークのものにもっと深く我が身を差し入れてきて、もっとよこせとねだり続けた。
 何を。
 遠い遥かな意識の彼方でカークはぼんやりと考えていた。
 何を望んでいるのか、この二体の機械は。
 何をよこせと言うのか、今カークの全てはハイトと父にむしゃぶり尽くされ喰らい尽くされている。体だけではない、感覚や精神までも、ラゴル13-4で押し開きすり潰し一粒残らず持ち去っているではないか。
「リフ、違う、もっと、ああ、違う、この、これじゃない、それだ、それを私にくれ、それが欲しいそれが欲しいんだああああ」
 喘ぎの合間に父の懇願が響く。ハイトはもう意識がないのだろう、がくりと崩れた首が人形のように揺れている。カークの体に触手とともに押し込まれたものは絡まれ引き延ばされてもうずたずたになっているのではないか。下半身をべたべたに濡らしている鮮血と体液に塗れたハイトこそが屍体のようだ、と考えた。折り重なって床に崩れているカークの口に男根を突っ込んで激しく前後させ、うねうねと動く首に開いた口に胸をしゃぶらせ、もう片方は触手で弄り回し続け、自分の口はカークの赤黒く爛れたものをじゃぶじゃぶ言わせて啜っている父は、呆れたことにまだまだ美しい顔でねだった。
「それをくれそれをくれそれをあああああリフなぜくれないそれだリフ」
 わからないよ。
 あなたは一体何を欲しがっているのか、全くわからない。
 私にあなたが欲しがる何が残っているのか、全くわからない。
 放り出された時には既に意識がなかった。

 今絶叫を放ってさすがに崩れ落ちて動かなくなった二つの体を眺め、そこにあっただろう快楽に無意識によだれを流しながら、カークは身動き一つできない自分の体がひどく透明なものになっている感覚に戸惑った。
 父はカークの中に何かを見つけたのだろうか。それを持ち去ってしまったのだろうか。だからこれほど、カークは静かに冷ややかに澄んだ気がするのだろうか。
 何だ、これは。
 ふいに、それが視えた。
 無数の光の粒が一面にある。
 砂漠だ。
 透明な空の下、果てのない砂漠が広がっている。
 
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