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第2章 書けない小説
5.PBW
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PBWが書けない。
予定通りに書くことにやる気を保てない。
テーマを決め、要因を列挙し、物語を構築し、粛々とそれに従って書き詰めていくやり方が、どうにも不快で続けられない。
PBWのお仕事をさせて頂いたことがある。
いろいろ全く未経験な中、知り合いもほとんどおらず、勢いだけで突っ込んでしまった世界で、やはりいつもの通り周囲の空気を読めず、定まったルールで展開できず、あちらこちらで不評を買った。
それでも、そういう私の展開をこよなく愛して下さる方もおられて、支えられて何とか終盤まで、自分好みのお話を展開しつつ繋いでこれた。
閉園が決まった遊園地で一つ一つの遊具に絞ってプレイングを頂き、その遊園地がやがて見事に再生を遂げる『最後の遊園地』シリーズ。
豪奢で傲慢な貴婦人が世界に散らばる宝石を集めていく冒険にプレイングを頂き、展開の中で見え隠れする昔の恋人との物語と彼女自身の変貌を描いた『宝石』シリーズ。
世界を侵蝕していく集団の中で生きる術を求めてもがきながら見いだせない少年少女が、敵として出逢った方々とのプレイングを通して居場所を見つけ出し成長していく『旅団』シリーズ。
月陰花園と呼ばれる花街を舞台に虚実駆け引き色恋あやなす中でのプレイングを頂いて一つの街として完成していくシリーズ。
『フォーチュン・カフェ』を開く青年と兄弟の出自に関する様々な事件にプレイングを頂いて、新しい人生をそれぞれに開いていくシリーズ。
異世界の大草原に住む一家を、時間の流れが違う場所から訪問するプレイングを頂いて、生死が過ぎ去っていくシリーズ。
描いている物語で、たぶん誰よりも楽しみに結末を待っているのは私自身で、あからさまに終わりが見えるとそれだけで書く気が失せる。
裏切りたい。
裏切ってほしい。
自分ではこうだと思っていた物語が、突然身も知らぬ変容を遂げて手に負えなくなってくると、どきどきして手が震え、息を呑みつつ喜びが増す。
企画やPC設定、シナリオ完成期限などいろいろ縛りのある中で頂くプレイングはそういう驚きと喜びと恐怖(笑)に満ちていて、毎日毎日没頭した。
それがどれほど、本来のPBWの在り方から逸脱していたのかわかったのは、別口のPBWに応募してみてからだ。
同じように物語を綴ってもまとまらない。設定されている試験問題とプレイングから「面白い」と思うものを書いても評価が上がらない。
何度か繰り返して気がついた。
私には提出されたものがシナリオにふさわしいプレイングであるかどうかの「判定」ができない。
与えられたプレイングは文字面の理解を最大範囲まで広げたり揺らさせたりして、その内容を全うさせようとしてしまう。
それは、お客様にとっては「書きたかったけれど書き切れなかった、でもこんなのが欲しかった」と思われる反面、「うまくいったのかもしれないけど、私が書いたものと違う何かが展開している」と感じさせてしまう。
試験はその部分をきちんとチェックするように作られていた。
つまり、お客様のプレイングの腕が反映するように書く能力。
プレイングを読み込み、骨子をまとめ、章立てし、構築し、それをもとに物語を綴っていく。プレイングからはみ出ず、お客様の世界を変化させず、イレギュラーを生み出さない。
そこにあるのは「私のどきどき」ではなく、非常に繊細で丁寧な文章の仕事だ。
それができない。
私自身が楽しみ面白いと思えなければ、書けない。
それを許されていた自由度があってこそ、あの時の仕事が成り立っていたと気づいた。
では私は何をもって、自分の小説は最後まで書き続けられるのか?
いや、あの今でも読み返して(私が)楽しいPBW小説群は、なぜ最後まで書き続けられたのか? 時間か金か声援かそれともただただ欲望か?
予定通りに書くことにやる気を保てない。
テーマを決め、要因を列挙し、物語を構築し、粛々とそれに従って書き詰めていくやり方が、どうにも不快で続けられない。
PBWのお仕事をさせて頂いたことがある。
いろいろ全く未経験な中、知り合いもほとんどおらず、勢いだけで突っ込んでしまった世界で、やはりいつもの通り周囲の空気を読めず、定まったルールで展開できず、あちらこちらで不評を買った。
それでも、そういう私の展開をこよなく愛して下さる方もおられて、支えられて何とか終盤まで、自分好みのお話を展開しつつ繋いでこれた。
閉園が決まった遊園地で一つ一つの遊具に絞ってプレイングを頂き、その遊園地がやがて見事に再生を遂げる『最後の遊園地』シリーズ。
豪奢で傲慢な貴婦人が世界に散らばる宝石を集めていく冒険にプレイングを頂き、展開の中で見え隠れする昔の恋人との物語と彼女自身の変貌を描いた『宝石』シリーズ。
世界を侵蝕していく集団の中で生きる術を求めてもがきながら見いだせない少年少女が、敵として出逢った方々とのプレイングを通して居場所を見つけ出し成長していく『旅団』シリーズ。
月陰花園と呼ばれる花街を舞台に虚実駆け引き色恋あやなす中でのプレイングを頂いて一つの街として完成していくシリーズ。
『フォーチュン・カフェ』を開く青年と兄弟の出自に関する様々な事件にプレイングを頂いて、新しい人生をそれぞれに開いていくシリーズ。
異世界の大草原に住む一家を、時間の流れが違う場所から訪問するプレイングを頂いて、生死が過ぎ去っていくシリーズ。
描いている物語で、たぶん誰よりも楽しみに結末を待っているのは私自身で、あからさまに終わりが見えるとそれだけで書く気が失せる。
裏切りたい。
裏切ってほしい。
自分ではこうだと思っていた物語が、突然身も知らぬ変容を遂げて手に負えなくなってくると、どきどきして手が震え、息を呑みつつ喜びが増す。
企画やPC設定、シナリオ完成期限などいろいろ縛りのある中で頂くプレイングはそういう驚きと喜びと恐怖(笑)に満ちていて、毎日毎日没頭した。
それがどれほど、本来のPBWの在り方から逸脱していたのかわかったのは、別口のPBWに応募してみてからだ。
同じように物語を綴ってもまとまらない。設定されている試験問題とプレイングから「面白い」と思うものを書いても評価が上がらない。
何度か繰り返して気がついた。
私には提出されたものがシナリオにふさわしいプレイングであるかどうかの「判定」ができない。
与えられたプレイングは文字面の理解を最大範囲まで広げたり揺らさせたりして、その内容を全うさせようとしてしまう。
それは、お客様にとっては「書きたかったけれど書き切れなかった、でもこんなのが欲しかった」と思われる反面、「うまくいったのかもしれないけど、私が書いたものと違う何かが展開している」と感じさせてしまう。
試験はその部分をきちんとチェックするように作られていた。
つまり、お客様のプレイングの腕が反映するように書く能力。
プレイングを読み込み、骨子をまとめ、章立てし、構築し、それをもとに物語を綴っていく。プレイングからはみ出ず、お客様の世界を変化させず、イレギュラーを生み出さない。
そこにあるのは「私のどきどき」ではなく、非常に繊細で丁寧な文章の仕事だ。
それができない。
私自身が楽しみ面白いと思えなければ、書けない。
それを許されていた自由度があってこそ、あの時の仕事が成り立っていたと気づいた。
では私は何をもって、自分の小説は最後まで書き続けられるのか?
いや、あの今でも読み返して(私が)楽しいPBW小説群は、なぜ最後まで書き続けられたのか? 時間か金か声援かそれともただただ欲望か?
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