『書きたい小説』

segakiyui

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第2章 書けない小説

2.ODAI

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 サイトを展開していると、いろんな意見をもらう。
 その中の一つに私のエロが見たいとあった。
 えろ?
 恋し合うことは描いても、体の関係を描くことはなかった。
 欲望はあっても興味はなかった。
 なぜか。
 たぶん結果的には全部同じことじゃないかと思ったからだろう。
 ほのめかすあたりが十分楽しい。それをがっつり描きたいと思わなかったが、書けるかと挑まれると書いてみなくてはならないだろうと思ってトライした。だから、私にとってそれは『お題』と呼ばれる分野となった。
 意外に書けた。
 書いて気づいたのは、それぞれ皆違うということ。
 当たり前だ。
 同じ体の作りをしていても、細かな部分は全く別ものだし、そもそも快感を受け取る構造、生み出す構造が精神性に左右されているのだから、同じものになりようはずがない。
 個体差と肉体の優位性ということを改めて考えた。
 書きながら心配だった。
 これは果たして求められているものだろうか? このように反応したり感じたりするものだろうか? 私は描いている人物のような体は持っていないし、感覚も持っていない。それぞれの状況と予想される対応は描けても、えろとかいうものになっているのだろうか?
 さながら、電気刺激や化学反応をシャーレの中で観察する科学者のようだったが、繰り返すうちにキャラクターに愛着も産まれ、愛おしさも増し、そうするうちに「こういうふうに反応するだろうな、この子なら」的なところも見えてくると、予想外のことをしでかしてくれたりもして、別の不安も産まれた。
 こういうのはありなのか?
 こういうことはありなのか?
 私は知らないし聞いたことも見たこともないけれど。
 サイトを巡り人の話を聞いてみると、どうやら『あり』らしいとわかって、想像が現実化しているという妙な気分になった。
 『あり』かもしれない。
 考えてみれば、それを描くのが楽しいのではなかったか。
 一番初めに賞を頂いたのはまんが原作としてだった。
 女の子の体にもう一つ男の子の魂が同居する。
 そういうことは『あり』だろうか。
 一般論として『あり』かどうかと考えていくと、『あり』の可能性は物凄く低くなる。けれど、描いているキャラクターを追いかけていくと『あり』だとしか考えられない。
 いつの間にか自分の発想が、誰か他の人間の『あり』に定義されてしまっていたと気がついた。
 では思い切りドライブさせてやろう。
 どこまで行くのか、どこまで行けるのか試してやろう。
 新しく得たODAIというツールを使って『あり』かもしれないを試していくうちに、飽きて来た。
 これはこれで楽しいけれど、肉体の限局性に縛られる感が否めない。
 四六時中そのことを描かなくてはならないと考えるだけでうんざりした。
 想像力が足りないのか?
 年齢のせいか? 
 発想力がなくなったからか? 
 それでも、それを描くのに情熱が保てない。
 全国アップルパイ巡りをしたような感覚か。
 どれも工夫が凝らされ美味しく色艶素晴しく味わい深く、まだまだ新たなアップルパイはあるはずだけど、至高の逸品を極めるという気分にもなれず。
 人の数だけエロがあるのだから、いい加減それを追いかけ続けるのも疲れたということか。
 書き込んでいったら見えてくると思っていた本質は、その実無数の経験値の集合体で、一つの基準に集約できない。
 個人個人の経験こそ全てというべきか。
 全部『あり』なので、一生賭けて追いかけることは可能だけれど、やりたいかどうかは別。
 快感を感じる所在が私の場合はエロではない。
 ひょっとしたら恋愛でもない。
 ツボが違う。
 『あり』かもしれないが今の現実にはあり得ないことが、小説の中で『あり』になること。
 それが時間経過とともに現実の中で『あり』になること。
 まるで、小説がその現実を作り上げていくような。
 けれど全ての小説が現実に繋がっているわけではない。
 あるものは現実に繋がり、あるものは幻で終る。
 私には一人だけ駄目な作家さんがおられて、その方の作品を読むとトイレに駆け込む。体が受け付けない。
 たぶん『あり』えなくて気持ち悪いから。
 スプラッタとかエログロとか悲惨とかそういう意味合いではなく『あり』えないと体が感じるから受け入れられない。
 世界なんて個人のものだし、ましてや小説なのだし、全部『あり』から始めるのは正しいだろうに。
 昆虫の感覚ってあんな感じだろうか?
 脳の古い時代が語ることば。
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