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第3章
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カーテンの隙間の光が、真崎の素肌を照らしている。滑らかで艶やかなその表面に、真崎がゆっくり指を滑らせて、さっき震えた脇腹のあたりで指を止めた。はぁ、と小さく息を吐く。
「ここも、弱いの?」
「っ…う…ん」
美並の指が触れるのに、真崎が目を閉じ顎を上げる。
「もっと、強くして…」
「……違うでしょう?」
美並は微笑んだ。目の前のものが緩やかに形を変えるのに、力を抜いて触れるか触れないかで肌をなぞる。
「あ…っ」
掠れた声で真崎が喘いだ。
「強くされるのより、こうされる方が好きなんですね?」
「……う…ん……」
ねだるように近寄ってくる腰のその部分に、立ち上がりながらキスをした。
「ふっ」
「キスの方が好き?」
「……舐めてくれる方がいい」
「……わかりました」
ちゅ、と吸いつくと、ぎゅ、と真崎が肩を握ってきた。
「みなみ…」
「遅れますよ?」
「キスして」
もっと。
「また、今度」
切なげな声にちろ、と舐めてから離れる。ああ、と声を上げた真崎が恨めしそうに見下ろしてきた。
「みなみ」
「仕事ですよ、京介」
「……」
不服そうに唇を尖らせるのに、付け加える。
「その代わり、着替えるのを見ててあげる」
「…うん」
薄く頬を染めて真崎が離れた。ベッドサイドの眼鏡をかけて、美並にまっすぐ向き直る。
薄いアンダーシャツを半端に被る。シャツを取り上げ、羽織る。伸ばした腕にまといつくのは水色のカッターシャツ、ひらひらと舞う裾に隠されては見える臍に美並の視線が止まると、真崎が微かに喉を鳴らす。椅子に座って靴下を穿き始めながら、ちらりと美並を伺い、どこに視線を向けているのか何度も確かめる。スラックスに脚を通し、前立てのチャックを上げていきながら、潤んだ声で呟いた。
「みなみ…僕…おかしいのかな」
「どうして?」
「服、着ていってるはずなのに」
何だかどんどん脱がされてる、みたい。
「気持ちいい?」
「…うん……」
すごく、気持ちいい、美並に見られてるの、けど。
シャツのボタンを止めて、ネクタイを締めながら真崎が身を屈めてくる。美並の唇に口を合わせて囁く。
「今度はさっきのところを…愛して?」
「舌で?」
「うん…」
ぞくり、と真崎が肌を粟立たせた。我慢し切れないように舌を入れてくるのを受け止めて絡める。しばらく唇を重ねてから、ようやく真崎が名残り惜しそうに身体を起こした。
「美並も準備しなくちゃね……朝御飯、トーストでいい?」
「はい」
離れがたそうにちゅ、ともう一度キスを交わして、真崎が上着を手に居間への扉を開ける。
「…そうだ」
スーツだめにしちゃったから、とりあえず僕のシャツとジーパン、それにベルト。
戻ってきた真崎が次々衣服を取り出してベッドに置く。
「今日、帰りに新しいスーツ、見に行こう」
「え、でも、今日は」
美並のことばに真崎が動きを止めて、じっと眼鏡の向こうから見つめ返してきた。
「伊吹さん」
「はい」
これは仕事モードに戻った顔、そう気付いて居住まいを正す。
「大石と会うことになるけど、一緒に来てくれる?」
「大石、さんと?」
何を考えてるんですか、課長。
そう尋ねたが、真崎が答えを待っているのに頷いた。
「わかりました。お供します」
「……ありがとう」
これで僕は百人力。
くすりと笑った真崎が、一転生真面目な顔で唇を寄せてくるのに、美並も少し緊張してキスを返した。
「ここも、弱いの?」
「っ…う…ん」
美並の指が触れるのに、真崎が目を閉じ顎を上げる。
「もっと、強くして…」
「……違うでしょう?」
美並は微笑んだ。目の前のものが緩やかに形を変えるのに、力を抜いて触れるか触れないかで肌をなぞる。
「あ…っ」
掠れた声で真崎が喘いだ。
「強くされるのより、こうされる方が好きなんですね?」
「……う…ん……」
ねだるように近寄ってくる腰のその部分に、立ち上がりながらキスをした。
「ふっ」
「キスの方が好き?」
「……舐めてくれる方がいい」
「……わかりました」
ちゅ、と吸いつくと、ぎゅ、と真崎が肩を握ってきた。
「みなみ…」
「遅れますよ?」
「キスして」
もっと。
「また、今度」
切なげな声にちろ、と舐めてから離れる。ああ、と声を上げた真崎が恨めしそうに見下ろしてきた。
「みなみ」
「仕事ですよ、京介」
「……」
不服そうに唇を尖らせるのに、付け加える。
「その代わり、着替えるのを見ててあげる」
「…うん」
薄く頬を染めて真崎が離れた。ベッドサイドの眼鏡をかけて、美並にまっすぐ向き直る。
薄いアンダーシャツを半端に被る。シャツを取り上げ、羽織る。伸ばした腕にまといつくのは水色のカッターシャツ、ひらひらと舞う裾に隠されては見える臍に美並の視線が止まると、真崎が微かに喉を鳴らす。椅子に座って靴下を穿き始めながら、ちらりと美並を伺い、どこに視線を向けているのか何度も確かめる。スラックスに脚を通し、前立てのチャックを上げていきながら、潤んだ声で呟いた。
「みなみ…僕…おかしいのかな」
「どうして?」
「服、着ていってるはずなのに」
何だかどんどん脱がされてる、みたい。
「気持ちいい?」
「…うん……」
すごく、気持ちいい、美並に見られてるの、けど。
シャツのボタンを止めて、ネクタイを締めながら真崎が身を屈めてくる。美並の唇に口を合わせて囁く。
「今度はさっきのところを…愛して?」
「舌で?」
「うん…」
ぞくり、と真崎が肌を粟立たせた。我慢し切れないように舌を入れてくるのを受け止めて絡める。しばらく唇を重ねてから、ようやく真崎が名残り惜しそうに身体を起こした。
「美並も準備しなくちゃね……朝御飯、トーストでいい?」
「はい」
離れがたそうにちゅ、ともう一度キスを交わして、真崎が上着を手に居間への扉を開ける。
「…そうだ」
スーツだめにしちゃったから、とりあえず僕のシャツとジーパン、それにベルト。
戻ってきた真崎が次々衣服を取り出してベッドに置く。
「今日、帰りに新しいスーツ、見に行こう」
「え、でも、今日は」
美並のことばに真崎が動きを止めて、じっと眼鏡の向こうから見つめ返してきた。
「伊吹さん」
「はい」
これは仕事モードに戻った顔、そう気付いて居住まいを正す。
「大石と会うことになるけど、一緒に来てくれる?」
「大石、さんと?」
何を考えてるんですか、課長。
そう尋ねたが、真崎が答えを待っているのに頷いた。
「わかりました。お供します」
「……ありがとう」
これで僕は百人力。
くすりと笑った真崎が、一転生真面目な顔で唇を寄せてくるのに、美並も少し緊張してキスを返した。
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