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第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王

9.ケダモノは唸る(2)

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「ガスト?」
 訝しげにシャルンは首を傾げる。
「えーと、シャルン、私はガストの同道も話したかな?」
 ここは確認が必要だろう。
 レダンは満面にっこりをシャルンに送りながら尋ねた。
 自分のことならまだしも、ガストの動きまで把握するほど気にしていたのはなんだか許せない。
「馬車のお荷物が…多め、だと侍従が話しておりましたので」
「ああ、なるほど」
 おそらくはもうちょっと砕けたことをぼやいていたのだろう、例えば、ウチの王様は時々ガストを連れてどっかへふらりと姿を消すよなあ、とか、結構な荷物を持って行くけど、持ち帰るものもあるんだよなあ、とか。
「一度シメとくか」
「陛下、大丈夫です」
「は?」
 シャルンが訳のわからない慰めを口にして瞬きをする。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
 目元をうっすらと染めたまま、シャルンは微笑む。
「私、陛下をお慕いするだけで十分です」
「お慕いするだけ?」
 何か妙な物言いだぞ。
 嫌な予感にレダンは眉を寄せる。
「何が大丈夫なんだ、シャルン?」
「…あの、私」
 シャルンは言い澱み、ガストを横目で眺め、やがて思い切ったように顔を上げる。
「私、陛下のご寵愛を独り占めできるとは思っておりません」
「独り占め…」
 いや、むしろ、して欲しいんだが。
「私、その辺りのことは理解しております」
「…その辺りのこと」
 嫌な予感はますます強くなる。
「もう少し詳細を話してくれないか、私は意味がわかっていないようだ」
 引き攣りながら、再び最大級のにっこりをシャルンに送る。
「あの、私以外のご寵愛も差し上げてください」
 微妙に俯きながらシャルンが顔を赤らめる。
「陛下は愛深い方ですから、それで私は寂しがるようなことはいたしません」
「……シャルン」
「はい」
「……あなたは誰のことを言ってるのかな?」
「あの」
 申し訳ありません、気づくのが遅れてしまい、配慮が足りませんでした。
 謝るシャルンはついに深く俯いてしまい、やがてごくごく小さな声で呟いた。
「…は?」
 聞こえない。
 部屋中が静まり返り、気がついたガストが人払いをし、部屋にはレダンとシャルンとガストだけとなった。
「シャルン、もう一度」
「………です」
 レダンは身を乗り出し、ガストも不審そうに体を屈め、やがてその耳に届いた名前は。
「ガストへのご寵愛も、どうぞお続けください…」
「ありえねーだろ、それ!」
 レダンと同時にガストも叫んだ。
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