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第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王
1.悪意ある招待状(2)
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ガストに釘を刺されて渋々レダンはもう一枚、招待状を取り上げる。
「アルシア王国…」
サリストアが何の用だ。
「書状はミラルシア女王からのものですが」
「絶対、裏でサリストアが糸を引いてるぞ」
レダンは溜め息をついた。
「だいたい、あそこの女は気が強くて逞しいよな」
「アグレンシア様のように」
ガストが珍しく懐かしむような微笑みを零した。
「ご出身でしたね」
「何でも一人でやるような人だったから、エリクを離宮に住まわせた時は驚いたぞ」
「穏やかな女性でしたから…お疲れになった時には慰めとなられたのでしょう」
「2年で亡くなってしまったのは残念だったな」
レダンも微笑みながら思い出す。
「洞窟での無理がたたったとのお話でしたね」
「今も素性はわかっていない……だが」
レダンは遠い過去を覗き見る。
「きっとどこかの貴婦人だったんだろう、物腰に品があったしな」
「礼儀作法も整っておいででした」
「…彼女が居たから、母上は頑張れた……そう言う意味ではカースウェルの恩人の一人か」
ありがたいことだ。
ぽつりと呟くレダンにガストは穏やかな目を向ける。それから切り替えたように、
「で、アリシア王国ですが」
「何で武闘会にシャルンを招待する?」
「まあ、サリストア様ですからねえ」
笑いをこらえながらガストが頷いた。
「いや待て、何となくわかるぞ、シャルンの前で俺を叩きのめして見せようと言う魂胆だな?」
「確実ですね」
「…負けてたまるかよ」
アリシア王国の招待状を机に落として、レダンは一転厳しい顔で一枚の招待状を取り上げる。
「…ダフラム王国」
「現国王、ダフラム1世からのものです。『隣国である』カースウェルの新しいお妃に是非拝謁したいが、足を挫き王国より動けない。この度、国の工業製品の博覧会を催すため、その会にご招待したい、と丁寧な内容ですが」
「胡散臭いな、あのジジイ」
レダンは鼻で嗤う。
「挫いたぐらいで動けなくなるもんかよ。這いずってでも玉座を守るぜ」
「けれどここまで丁重な誘いに拒否を示すのには、それ相応の理由が必要です」
「そうだろうな、怪我をしていても、迎え入れてもてなしたいと言っているのに、と絡まれるのがオチだ」
「では」
「……頑張るさ、シャルンのためなら」
「わかりました」
ガストは全ての招待状を机の上から掻き集め、
「出席の返答を致します。時期は調整いたしますが……一枚、ご覧になってませんね?」
「…わかってる」
「大事なものだと存じますが」
「……わかってる、けれど嫌だ」
「嫌って……ハイオルトからのものですよ? シャルン様も当然お望みになるはずですが」
「……い、や、だ」
ガストは少し待ったが続かないことばに溜め息をついた。
「後で怒られますよ?」
「…今失うよりマシだろ」
レダンは口を尖らせる。
「今ハイオルトに戻して、もう戻らないなんて言われたら」
「力づくで引き戻してくればいいじゃありませんか」
シャルン姫は経過はどうであれ、あなたの奥方なんですから。
「…まだ違う」
唸ったレダンをガストは少し目を見開いて眺め、やがて苦笑した。
「ケダモノ王の名が泣きますよ」
もう少し若い頃は浮名が消える暇さえないと噂も立ったのを揶揄される。
「いつまで大事に守ってるんですか」
「………仕事しろ」
「はいはい、仕事をして参ります」
それではハイオルトには因果を含め、他国訪問が多く、まだ時間が取れないと返答しておきますね。
頷きもしないレダンに背中を向け、招待状を抱えて部屋を出て行くガストを恨めしく睨みつけ、レダンは深く溜め息をついて項垂れた。
「あーもう……ケダモノになりてえ…」
「アルシア王国…」
サリストアが何の用だ。
「書状はミラルシア女王からのものですが」
「絶対、裏でサリストアが糸を引いてるぞ」
レダンは溜め息をついた。
「だいたい、あそこの女は気が強くて逞しいよな」
「アグレンシア様のように」
ガストが珍しく懐かしむような微笑みを零した。
「ご出身でしたね」
「何でも一人でやるような人だったから、エリクを離宮に住まわせた時は驚いたぞ」
「穏やかな女性でしたから…お疲れになった時には慰めとなられたのでしょう」
「2年で亡くなってしまったのは残念だったな」
レダンも微笑みながら思い出す。
「洞窟での無理がたたったとのお話でしたね」
「今も素性はわかっていない……だが」
レダンは遠い過去を覗き見る。
「きっとどこかの貴婦人だったんだろう、物腰に品があったしな」
「礼儀作法も整っておいででした」
「…彼女が居たから、母上は頑張れた……そう言う意味ではカースウェルの恩人の一人か」
ありがたいことだ。
ぽつりと呟くレダンにガストは穏やかな目を向ける。それから切り替えたように、
「で、アリシア王国ですが」
「何で武闘会にシャルンを招待する?」
「まあ、サリストア様ですからねえ」
笑いをこらえながらガストが頷いた。
「いや待て、何となくわかるぞ、シャルンの前で俺を叩きのめして見せようと言う魂胆だな?」
「確実ですね」
「…負けてたまるかよ」
アリシア王国の招待状を机に落として、レダンは一転厳しい顔で一枚の招待状を取り上げる。
「…ダフラム王国」
「現国王、ダフラム1世からのものです。『隣国である』カースウェルの新しいお妃に是非拝謁したいが、足を挫き王国より動けない。この度、国の工業製品の博覧会を催すため、その会にご招待したい、と丁寧な内容ですが」
「胡散臭いな、あのジジイ」
レダンは鼻で嗤う。
「挫いたぐらいで動けなくなるもんかよ。這いずってでも玉座を守るぜ」
「けれどここまで丁重な誘いに拒否を示すのには、それ相応の理由が必要です」
「そうだろうな、怪我をしていても、迎え入れてもてなしたいと言っているのに、と絡まれるのがオチだ」
「では」
「……頑張るさ、シャルンのためなら」
「わかりました」
ガストは全ての招待状を机の上から掻き集め、
「出席の返答を致します。時期は調整いたしますが……一枚、ご覧になってませんね?」
「…わかってる」
「大事なものだと存じますが」
「……わかってる、けれど嫌だ」
「嫌って……ハイオルトからのものですよ? シャルン様も当然お望みになるはずですが」
「……い、や、だ」
ガストは少し待ったが続かないことばに溜め息をついた。
「後で怒られますよ?」
「…今失うよりマシだろ」
レダンは口を尖らせる。
「今ハイオルトに戻して、もう戻らないなんて言われたら」
「力づくで引き戻してくればいいじゃありませんか」
シャルン姫は経過はどうであれ、あなたの奥方なんですから。
「…まだ違う」
唸ったレダンをガストは少し目を見開いて眺め、やがて苦笑した。
「ケダモノ王の名が泣きますよ」
もう少し若い頃は浮名が消える暇さえないと噂も立ったのを揶揄される。
「いつまで大事に守ってるんですか」
「………仕事しろ」
「はいはい、仕事をして参ります」
それではハイオルトには因果を含め、他国訪問が多く、まだ時間が取れないと返答しておきますね。
頷きもしないレダンに背中を向け、招待状を抱えて部屋を出て行くガストを恨めしく睨みつけ、レダンは深く溜め息をついて項垂れた。
「あーもう……ケダモノになりてえ…」
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