7 / 216
第1話 出戻り姫と腹黒王
3.奥方への邪な愛情 (2)
しおりを挟む
「まあ、百歩譲って彼女が俺のことを気に入らなかった、としよう」
胸のあたりで小さくずきんと音が響いた気がしたが、あえて無視してレダンは続けた。
「けれど、とりあえずは嫁いできてしまったんだから、俺を不快にさせても自分が困るだけだ、そうだろ?」
「ええまあそうですね。一般論で言えば、獣の前でふざける馬鹿はいませんからね」
「俺は今までシャルン姫の破談は、相手に問題があるんじゃないかと思ってたんだ」
どう言うことですか、とガストが目線で促すのに頷く。
「王家の求婚は気持ちとは無関係だ。必要性があっての婚姻、破棄するならそれなりの理由がいる。だから、今までのことは不幸な巡り合わせだったと考えてた。破談になってのシャルン姫は寝込んで床に伏すぐらいだから、彼女自身は嫁ぐことを望んでいて、けれど破談になってしまうのだ、と」
気づいた顔でガストが応じる。
「……肖像画ですか」
「確かにこれまでの破談は、相手側の理由もあるだろうが、ひょっとすると、ハイオルト側にも何か考えあってのことかもしれないぞ?」
「…なるほど」
「彼女は多分見かけよりうんと『賢い』。少なくとも、俺が不快を示したことが何なのか、的確に読み取って、そこをもう一度突つくことができるほど」
「不愉快ですね」
ガストは表情を消した。
「ハイオルトは我がカースウェルを謀るつもりだと言うことですか」
つまり、初めから嫁いでくる気などなくて、何かの意図のために。
言いかけて気づいたようにレダンを見る。
「……見舞金?」
「あり得るだろう?」
にやりと笑ったレダンに溜め息を返してくる。
「腹黒いあなただからこそ思いつくんですかね」
続いて、芝居がかってぽんと手を打って見せた。
「ああだからですか、シャルン姫に常ならずお優しいのは。そう言うことなら、何が何でもシャルン姫を娶っておいて、ハイオルトの企みを灰燼に帰してやろうと」
「あ、いや、それは」
「わかりました、このガスト、全力でシャルン姫を引き止めておくように頑張らせて頂きます」
「ちょっと違うんだが……まあいいか」
いそいそと居室を出て行くガストを引き止めかけて、レダンは呟いた。
「けどなあ…いくら国策だからって、嫁いだ先で嫌われるように振る舞い続けるって辛くないのか……?」
脳裏に青ざめながらもにっこりと笑うシャルンの顔が蘇って、レダンは別の意味で切なくなった。
胸のあたりで小さくずきんと音が響いた気がしたが、あえて無視してレダンは続けた。
「けれど、とりあえずは嫁いできてしまったんだから、俺を不快にさせても自分が困るだけだ、そうだろ?」
「ええまあそうですね。一般論で言えば、獣の前でふざける馬鹿はいませんからね」
「俺は今までシャルン姫の破談は、相手に問題があるんじゃないかと思ってたんだ」
どう言うことですか、とガストが目線で促すのに頷く。
「王家の求婚は気持ちとは無関係だ。必要性があっての婚姻、破棄するならそれなりの理由がいる。だから、今までのことは不幸な巡り合わせだったと考えてた。破談になってのシャルン姫は寝込んで床に伏すぐらいだから、彼女自身は嫁ぐことを望んでいて、けれど破談になってしまうのだ、と」
気づいた顔でガストが応じる。
「……肖像画ですか」
「確かにこれまでの破談は、相手側の理由もあるだろうが、ひょっとすると、ハイオルト側にも何か考えあってのことかもしれないぞ?」
「…なるほど」
「彼女は多分見かけよりうんと『賢い』。少なくとも、俺が不快を示したことが何なのか、的確に読み取って、そこをもう一度突つくことができるほど」
「不愉快ですね」
ガストは表情を消した。
「ハイオルトは我がカースウェルを謀るつもりだと言うことですか」
つまり、初めから嫁いでくる気などなくて、何かの意図のために。
言いかけて気づいたようにレダンを見る。
「……見舞金?」
「あり得るだろう?」
にやりと笑ったレダンに溜め息を返してくる。
「腹黒いあなただからこそ思いつくんですかね」
続いて、芝居がかってぽんと手を打って見せた。
「ああだからですか、シャルン姫に常ならずお優しいのは。そう言うことなら、何が何でもシャルン姫を娶っておいて、ハイオルトの企みを灰燼に帰してやろうと」
「あ、いや、それは」
「わかりました、このガスト、全力でシャルン姫を引き止めておくように頑張らせて頂きます」
「ちょっと違うんだが……まあいいか」
いそいそと居室を出て行くガストを引き止めかけて、レダンは呟いた。
「けどなあ…いくら国策だからって、嫁いだ先で嫌われるように振る舞い続けるって辛くないのか……?」
脳裏に青ざめながらもにっこりと笑うシャルンの顔が蘇って、レダンは別の意味で切なくなった。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる