80 / 122
過去にも色々ありました
第80話 [シェルシェーレ過去編]シュバルツの悪魔④
しおりを挟む
日も傾き、しばらくするとハンネスさんが帰ってきた。
「ハンネスさん!何か収穫あった?」
「それが…」
ハンネスさんはやや浮かない顔をしながら、ここまでの経緯を説明してくれた。
話をまとめると、警備隊は不審な男たちを1度は捕まえるところまではいったものの、なんと注意しただけで帰してしまったのだという。
しかも、ハンネスさんも男たちが人攫いかその類であることは勘づいていたから警備隊にそのことを言ったのに、全然相手にしてくれなかったらしい。
どうにもおかしい。
人攫いはもちろん、人身売買もこの国では20年前にできた法律で禁止されているはず。なのにその疑いがある人たちを野放しにするのは不自然だ。
それと、もう1つ不自然なのはリナの証言だ。
法律で禁じられた今でも、裏での人身売買は未だに行われている。その中には、家計が立ち行かなくなり親に売られた子どもも少なくない。
でも、そういうことをするのは大抵農村部のすごく貧しい家庭だ。
対してリナの家はシュバルツ侯爵家の屋敷と同じくらいだと言うし、両親のことは"お母様、お父様"と呼ぶし、犬まで飼っている。
それが全て本当だとすれば、リナの家は貴族である可能性が高い。
でも、貴族ならお金で困って子どもを売るなんて考えづらいし、かといって警備が厳重な貴族の屋敷から子どもをさらってくるっていうのも…
「うーん…」
「いかが致しましょうか。」
「…明日、私が警備隊に話聞きに行ってみる。さすがに貴族が行けば何かしら反応するだろうし…」
「承知しました。」
――――――
翌日。私は警備隊が待機している駐屯所まで移動していた。
「なあ、警備隊ってどの辺だっけ??」
そしたら、ルーカスお兄様がついてきた。
「というか、なんでお兄様もついてきてるの?」
「え?楽しそうだから。」
「そんな理由でついてこないでよ…」
「でも、人攫いを探してるみたいだけど、お前むしろさらわれる側の人間じゃん。」
「ハッ!」
そうだ、自分が10歳女児なのを忘れていた。とはいえハンネスさんはいるんだけど…
「な、俺がいた方がいいだろ?」
「うん…」
「で、警備隊どこだ?」
「もう着いたよ。」
「おお!」
私たちは駐屯所までたどり着いた。門番に身分を明かして話をすると、やや渋りながらも中に入れてくれた。
「これはこれは、シュバルツ侯のご令嬢にご子息様。こんなところにどういったご用件ですかな?」
中で迎えてくれたのは、…よく分からないけど警備隊の中では偉そうな人だ。
「昨日の件について、聞きたいことがあります。」
「はて…昨日のこと、ですかな?」
「昨日不審な男達を捕まえて、注意したあとすぐ帰してしまいましたよね?その理由が聞きたいんです。」
「ああ、あれですか。いえね、あれは単純に彼らの潔白が証明されただけのことですよ。」
偉そうな人は自信ありげに言う。
「充分調査する時間もなかったですよね?何故無実だと分かったんですか?」
「…警備隊にはノウハウというものがありますから、それだけの時間でも捜査するには充分な時間なのです。」
偉そうな人は相変わらず淡々と話しているけど、少しイラつき始めた気がする。
「具体的には?」
「え?」
「具体的にはどんなノウハウが?」
「いや、それは…」
「"警備隊や自警団は迷ったらとりあえず牢屋に入れる"って、どっかで聞いたことあるぞ!」
ルーカスお兄様が口を挟む。
「こ、今回は無実であると決定づける証拠が多くて…!」
「ですから、具体的にはどのような証拠なのですか?」
「…あなた方子どもには関係のないことです、お帰りください!」
そういうと偉そうな人は去ってしまった。明らかに動揺してたな…
「あーあ、行っちまった。この後どうする、シェリー?」
「…他の人にも聞いてみよう。幸い駐屯所から追い出された訳ではないし。」
「了解!」
「ハンネスさん!何か収穫あった?」
「それが…」
ハンネスさんはやや浮かない顔をしながら、ここまでの経緯を説明してくれた。
話をまとめると、警備隊は不審な男たちを1度は捕まえるところまではいったものの、なんと注意しただけで帰してしまったのだという。
しかも、ハンネスさんも男たちが人攫いかその類であることは勘づいていたから警備隊にそのことを言ったのに、全然相手にしてくれなかったらしい。
どうにもおかしい。
人攫いはもちろん、人身売買もこの国では20年前にできた法律で禁止されているはず。なのにその疑いがある人たちを野放しにするのは不自然だ。
それと、もう1つ不自然なのはリナの証言だ。
法律で禁じられた今でも、裏での人身売買は未だに行われている。その中には、家計が立ち行かなくなり親に売られた子どもも少なくない。
でも、そういうことをするのは大抵農村部のすごく貧しい家庭だ。
対してリナの家はシュバルツ侯爵家の屋敷と同じくらいだと言うし、両親のことは"お母様、お父様"と呼ぶし、犬まで飼っている。
それが全て本当だとすれば、リナの家は貴族である可能性が高い。
でも、貴族ならお金で困って子どもを売るなんて考えづらいし、かといって警備が厳重な貴族の屋敷から子どもをさらってくるっていうのも…
「うーん…」
「いかが致しましょうか。」
「…明日、私が警備隊に話聞きに行ってみる。さすがに貴族が行けば何かしら反応するだろうし…」
「承知しました。」
――――――
翌日。私は警備隊が待機している駐屯所まで移動していた。
「なあ、警備隊ってどの辺だっけ??」
そしたら、ルーカスお兄様がついてきた。
「というか、なんでお兄様もついてきてるの?」
「え?楽しそうだから。」
「そんな理由でついてこないでよ…」
「でも、人攫いを探してるみたいだけど、お前むしろさらわれる側の人間じゃん。」
「ハッ!」
そうだ、自分が10歳女児なのを忘れていた。とはいえハンネスさんはいるんだけど…
「な、俺がいた方がいいだろ?」
「うん…」
「で、警備隊どこだ?」
「もう着いたよ。」
「おお!」
私たちは駐屯所までたどり着いた。門番に身分を明かして話をすると、やや渋りながらも中に入れてくれた。
「これはこれは、シュバルツ侯のご令嬢にご子息様。こんなところにどういったご用件ですかな?」
中で迎えてくれたのは、…よく分からないけど警備隊の中では偉そうな人だ。
「昨日の件について、聞きたいことがあります。」
「はて…昨日のこと、ですかな?」
「昨日不審な男達を捕まえて、注意したあとすぐ帰してしまいましたよね?その理由が聞きたいんです。」
「ああ、あれですか。いえね、あれは単純に彼らの潔白が証明されただけのことですよ。」
偉そうな人は自信ありげに言う。
「充分調査する時間もなかったですよね?何故無実だと分かったんですか?」
「…警備隊にはノウハウというものがありますから、それだけの時間でも捜査するには充分な時間なのです。」
偉そうな人は相変わらず淡々と話しているけど、少しイラつき始めた気がする。
「具体的には?」
「え?」
「具体的にはどんなノウハウが?」
「いや、それは…」
「"警備隊や自警団は迷ったらとりあえず牢屋に入れる"って、どっかで聞いたことあるぞ!」
ルーカスお兄様が口を挟む。
「こ、今回は無実であると決定づける証拠が多くて…!」
「ですから、具体的にはどのような証拠なのですか?」
「…あなた方子どもには関係のないことです、お帰りください!」
そういうと偉そうな人は去ってしまった。明らかに動揺してたな…
「あーあ、行っちまった。この後どうする、シェリー?」
「…他の人にも聞いてみよう。幸い駐屯所から追い出された訳ではないし。」
「了解!」
0
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった
あとさん♪
恋愛
学園の卒業記念パーティでその断罪は行われた。
王孫殿下自ら婚約者を断罪し、婚約者である公爵令嬢は地下牢へ移されて——
だがその断罪は国王陛下にとって寝耳に水の出来事だった。彼は怒り、孫である王孫を改めて断罪する。関係者を集めた中で。
誰もが思った。『まさか、こんな事になるなんて』と。
この事件をきっかけに歴史は動いた。
無血革命が起こり、国名が変わった。
平和な時代になり、ひとりの女性が70年前の真実に近づく。
※R15は保険。
※設定はゆるんゆるん。
※異世界のなんちゃってだとお心にお留め置き下さいませm(_ _)m
※本編はオマケ込みで全24話
※番外編『フォーサイス公爵の走馬灯』(全5話)
※『ジョン、という人』(全1話)
※『乙女ゲーム“この恋をアナタと”の真実』(全2話)
※↑蛇足回2021,6,23加筆修正
※外伝『真か偽か』(全1話)
※小説家になろうにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる