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過去にも色々ありました
第78話 [シェルシェーレ過去編]シュバルツの悪魔②
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「ねえあなた、大丈夫?」
私は倒れたままのその少女に近づき、手を差し出す。
「ヒッ!?」
すると、少女は酷く怯えた表情して、両手で自分の頭を抑え震え始める。この少女の方が私よりは年下っぽいけど、それにしても10歳の子ども相手に怖がりすぎじゃない…?
「私シェルシェーレって言うんだけど、あなたの名前は?」
「……」
少女は、怯えは少し治まったけど、未だに返答はしてくれない。
「い、いけませんお嬢様!!」
すると、侍女が再び私の方へ駆け寄ってきた。
「ん?どうしたの?」
「どうしたのではありません!そのような汚らしい物に近づくなど!」
"汚らしい物"、ねえ…
「でも、だからってこんな小さい子を放っておくわけにいかないでしょ?」
「ですが…!」
「おい、早く探せ!!」
「大事な商品なんだ、逃がしたら承知しねえぞ!」
侍女と話していると、遠くから物騒な声が聞こえてきた。
「…ねえハンネスさん、警備隊呼んできてもらえる?」
「承知しました。」
私は従者に指示を出す。ハンネスというのはその従者の名前だ。ちなみに侍女の名前はエッダだ。
「エッダさんはえっと…その子を服屋に連れていくからついてきて!」
「お嬢様、なりません!」
エッダさんは私の手を引っ張り止めようとする。
全くもう…
「…主人の言うことが聞けないの?」
「い、いえそんなことは!」
エッダさんは慌てて否定する。
「そう。じゃ、行きましょ!」
私は地べたに座ってこちらを見ていた少女とエッダの手を引き、近くの服屋に入った。
「いらっしゃいま…ヒッ!」
服屋の店主は入ってきた私たちを見るなり驚いた。ここに来るまでも街を歩く人達にやけにジロジロ見られたし、どうもきな臭い。
「ど、どういったご用件でしょうか?」
「服を買いたいんです。それと大きい帽子も!」
「恐れながら、貴方様に相応しいような服はここには…」
店主は私の格好と、侍女を連れていることから貴族だと予測したのだろう。そしてここは平民向けの安い服が並ぶ店だ。
「あ、私のじゃなくてこの子の!」
「え…?」
店主が突然固まってしまった。
「いや、しかし彼女は…ねえ?」
「…何か問題が?」
「い、いえそんなことは!」
「じゃあ、この人置いていくから、私が帰ってくるまでに適当に見繕っておいてください。お金は多めに渡すので!」
私は本を買ったときの残りのお金を全てカウンターの上にのせる。
「は、はい!」
「じゃあエッダさん、よろしくね!」
「お、お嬢様お待ちください!」
私はエッダさんの制止も聞かずに服屋を出る。そして、元々いた場所へ戻ってきた。
「シェルシェーレお嬢様。」
すると、後ろから従者のハンネスさんに声をかけられた。
「あ、ハンネスさん!警備隊は?」
「呼びに行ったところ、人手が足りないため少し動き出しまでは時間がかかるとのことでした。それと、あちらの方で何かを探している様子の不審な男が3人ほどおりましたので、ここに呼ぶ代わりに警備隊にその旨を伝えておきました。」
ハンネスさんが私から見て後ろの方を指さしながら言う。そっちは服屋とは反対方向だ。恐らくハンネスさんが見た3人組は、私が聞いた声の主で間違いない。
それにしても、"警備隊を呼んで"と言っただけでちゃんと私の意図を汲み取ってくれるとは…さすが古株なだけある。
「この後はどうしましょうか?」
「とりあえずエッダとあの子がいる服屋まで行ってから馬車を呼んで、そのまま家まで帰る!」
「承知しました。」
私は倒れたままのその少女に近づき、手を差し出す。
「ヒッ!?」
すると、少女は酷く怯えた表情して、両手で自分の頭を抑え震え始める。この少女の方が私よりは年下っぽいけど、それにしても10歳の子ども相手に怖がりすぎじゃない…?
「私シェルシェーレって言うんだけど、あなたの名前は?」
「……」
少女は、怯えは少し治まったけど、未だに返答はしてくれない。
「い、いけませんお嬢様!!」
すると、侍女が再び私の方へ駆け寄ってきた。
「ん?どうしたの?」
「どうしたのではありません!そのような汚らしい物に近づくなど!」
"汚らしい物"、ねえ…
「でも、だからってこんな小さい子を放っておくわけにいかないでしょ?」
「ですが…!」
「おい、早く探せ!!」
「大事な商品なんだ、逃がしたら承知しねえぞ!」
侍女と話していると、遠くから物騒な声が聞こえてきた。
「…ねえハンネスさん、警備隊呼んできてもらえる?」
「承知しました。」
私は従者に指示を出す。ハンネスというのはその従者の名前だ。ちなみに侍女の名前はエッダだ。
「エッダさんはえっと…その子を服屋に連れていくからついてきて!」
「お嬢様、なりません!」
エッダさんは私の手を引っ張り止めようとする。
全くもう…
「…主人の言うことが聞けないの?」
「い、いえそんなことは!」
エッダさんは慌てて否定する。
「そう。じゃ、行きましょ!」
私は地べたに座ってこちらを見ていた少女とエッダの手を引き、近くの服屋に入った。
「いらっしゃいま…ヒッ!」
服屋の店主は入ってきた私たちを見るなり驚いた。ここに来るまでも街を歩く人達にやけにジロジロ見られたし、どうもきな臭い。
「ど、どういったご用件でしょうか?」
「服を買いたいんです。それと大きい帽子も!」
「恐れながら、貴方様に相応しいような服はここには…」
店主は私の格好と、侍女を連れていることから貴族だと予測したのだろう。そしてここは平民向けの安い服が並ぶ店だ。
「あ、私のじゃなくてこの子の!」
「え…?」
店主が突然固まってしまった。
「いや、しかし彼女は…ねえ?」
「…何か問題が?」
「い、いえそんなことは!」
「じゃあ、この人置いていくから、私が帰ってくるまでに適当に見繕っておいてください。お金は多めに渡すので!」
私は本を買ったときの残りのお金を全てカウンターの上にのせる。
「は、はい!」
「じゃあエッダさん、よろしくね!」
「お、お嬢様お待ちください!」
私はエッダさんの制止も聞かずに服屋を出る。そして、元々いた場所へ戻ってきた。
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すると、後ろから従者のハンネスさんに声をかけられた。
「あ、ハンネスさん!警備隊は?」
「呼びに行ったところ、人手が足りないため少し動き出しまでは時間がかかるとのことでした。それと、あちらの方で何かを探している様子の不審な男が3人ほどおりましたので、ここに呼ぶ代わりに警備隊にその旨を伝えておきました。」
ハンネスさんが私から見て後ろの方を指さしながら言う。そっちは服屋とは反対方向だ。恐らくハンネスさんが見た3人組は、私が聞いた声の主で間違いない。
それにしても、"警備隊を呼んで"と言っただけでちゃんと私の意図を汲み取ってくれるとは…さすが古株なだけある。
「この後はどうしましょうか?」
「とりあえずエッダとあの子がいる服屋まで行ってから馬車を呼んで、そのまま家まで帰る!」
「承知しました。」
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