上 下
63 / 122
何かと不穏です

第63話 救出までの経緯①(エリオット視点)

しおりを挟む
時はエリオットがシェルシェーレを救出した前日、エリオットがクラウゼ領の遠征から帰ってきたときまで遡る。

――――

日が暮れようとしている頃、俺たち調査団は帝都の駐屯所に到着した。

「それじゃあ、今回の調査の事後処理は明後日からやるから、今日明日は自由に休んでくれ!」
「「「はっっ!!」」」

調査団に解散の指示を出すと、俺は魔法研究所へと向かった。

彼らにはこれから武器の解析でお世話になるし、帰ってきたことを伝えておいてもいいだろうと思ったからだ。

…決して、今までならきっかり3日後に返ってきていたシェリーからの手紙が5日経っても返ってこなかったからじゃない。

魔法研究所の捜査課の仕事場に着くと、ジョセフが1人作業をしていた。

「よお、ジョセフ。」
「…?あ、エリオットさん!お久しぶりです、いつ頃帰って来たんですか?」
「ついさっきな。」
「調査の方はどうでしたか?」
「問題なく終わったよ。押収した魔道具は明後日ここに持ってくる予定だ。」
「分かりました、課長に伝えておきますね。」
「ああ、頼む。…ところで、エリーゼさんとシェリーはいないのか?」
「課長は今日は部屋に戻られました。…それでその、シェルシェーレさんは…」

ジョセフが急に声を詰まらせる。

「…何かあったのか?」
「いえ!そんなことは無い、と思うのですが…実は5日ほど研究所に戻って来ていなくて…」

シェリーが5日も留守に…?

「どういうことだ?」
「それが、ご友人の家にある魔道具の修理を頼まれたらしいのですが、随分大量にあるらしく、時間がかかっているようで…」
「いくら大量だからって、5日もかかるか?シェリーの仕事が遅いとは思えねえし、本当にそんな大量なら何人か雇ってやらせるだろ?」
「はい、私もそこは怪しいなと思ったのです。シェルシェーレさん本人の口から聞いた訳でも無いですし…」
「じゃあ誰から聞いたんだよ?」
「魔道具修理を依頼したご友人です。5日前と4日前に計2回いらっしゃったのですが、"シェリーちゃんは忙しいから私が代わりに来た" "まだかかりそうだけど私のためだから許して欲しい"の一点張りで、シェルシェーレさんの所在を聞いても教えて下さらなくて…」
「……」

その"ご友人"はシェリーのこと"シェリーちゃん"って呼んでるのか?

けどシェリーの友達って魔法研究所のやつ以外は大体貴族だろ?魔法研究所のやつならジョセフが知ってるか向こうがそう名乗るかするだろうし、貴族なら侯爵令嬢を"シェリーちゃん"なんて馴れ馴れしく呼ばないはずだ。…いや男爵でシェリーって呼んでる俺も大概だが。

…とすると考えられるのは…

"へぇ…よろしくね、シェリーちゃん!"
"じゃあ、今私忙しいからまたね、エリオット、シェリーちゃん!"

「…セレナ、か…?」
「え?」
「おい、そいつの特徴分かるか!?髪色とか、身長とか!」
「えーと確か…髪は巻かれたブロンドの髪で、目の色は青色、身長はシェルシェーレさんより少し低いくらいかと…」

セレナの特徴と一致する!

「…早くシェリー探しに行くぞ」
「え、何か分かったんですか?」
「その"ご友人"に心当たりがある…もし俺の考えが正しけりゃ、シェリーは今頃何か事件に巻き込まれてるかも知れねえ…」
「え!?…そうですね、すぐ探しましょう!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?

真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

処理中です...